私の春一番

この花を見つけたら、もう春です。
道端に咲いてる小さいブルーの可愛い花。
昔は アスファルトの道はなく、どの道も地道でした。地道の両端や 電信棒の下の雑草に混じって、まだ寒いのに春一番に咲いていました。
今では道端で見つけるのは 難しいです。
小さい時から この花が大好きで、幼稚園の帰り道や、小学校の帰り道で見つけたら 「お母ちゃんにあげる」 そう思って何時も 摘んで帰りました。
でも この花は、すぐにポロリと落ちてしまいます。
だから たくさん摘んで そーろり そーろり、大事に 大事に、持って帰りますが 家に帰ってきたら もう花は、ひとつも残っていません。

小学校の行き帰りには よく荷馬車が通りました。
その荷馬車のうしろにこっそり 跳び乗るのが、とっても楽しくて、あの花を摘んだことも忘れて 跳び乗ります。

こっそり おじさんに見つからないように、くるりと上手に 後むきに跳び乗ります。
跳び乗るときに ランドセルの中で セルロイドの筆箱に入ったえんぴつが カタカタなるので、おじさんに見つかってしまいます。
二人ぐらいで乗った時は、たまには おじさんも何も言わずに 乗せてくれます。
でも 三人も跳び乗ったら、おじさんは大きな声で「コラッ～！」と 怒鳴ります。

私達は「キャ～～」とさけんで 跳びおりて、大笑いで逃げて行きます。

それが、おもしろくて、おもしろくて、 しかられても、しかられても、何度も跳び乗ります。
馬も重くなったり 軽くなったり えらい迷惑だったでしょうねぇ。
もう あの花もくちゃくちゃで ほっぽり投げて 逃げ出します。


もうすぐ あの花が咲きます。
三月になれば。
春は もうすぐ そこまで来ています。
もうすぐ、もうすぐ！

でも、窓の外は 雪がちらちら しています。