満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『手紙』

2006-10-11 02:19:24 | 映画

皆様ごきげんよう。
今日、帰りの電車で隣の電車に立っていた若いサラリーマンが明らかにジョジョ一部と思われる漫画を読んでいたので、横から声かけようかと思ってしまった黒猫でございます。イヤ、かけてませんよ?(笑)そんな逆ナン微妙すぎるでしょ(笑)。

ところで今日は『手紙』という映画の試写会に行って参りました。東野圭吾原作です。

両親が他界し、ふたりだけで生きてきた剛志(玉山鉄二)と直貴(山田孝之)の兄弟。剛志は直貴を大学にやる費用を稼ぐために運送の仕事をして金を稼ぐが、無理がたたって腰を痛め、クビになってしまう。自分が学歴がなくて苦労したため、どうしても直貴を大学にやりたい剛志は、出来心から留守宅に押し入り金を盗むが、そこに帰ってきた家主の老婆と揉み合いになり、殺してしまう。

その罪で服役することになった剛志と、「ひとごろしの弟」としてひとり生きていかねばならなくなった直貴は、定期的に手紙のやりとりをしていた。直貴は結局進学を諦めて就職したが、受刑者の兄がいるとわかった途端、職場も住むところも失ってしまうのだった。
三度目に就職した工場で、直貴は賄い食堂に勤める由美子(沢尻エリカ)に好意を持たれるが、兄のことを正直に告白して工場を辞める。以前からの夢だったお笑い芸人になることに本格的に取り組むため、コンビを組む祐輔(尾上寛之)とともに上京したのだ。
深夜番組から、徐々に人気を得て、知名度を上げていくふたりだったが、ある時インターネットで直貴の兄が受刑者であるとの情報が出回る。祐輔を巻き添えにしないため、ひとりお笑いを辞める決意をする直貴。何をしようにも、兄が受刑者だという事実がつきまとうことに疲れた直貴は、いつしか手紙を書くことをやめてしまう。そんな直貴に、美容師目指して上京してきた由美子は常に寄り添うが・・・?

というようなお話。


いやあ、泣きました。予告編から。(※予告は何の関係もない映画「サッド・ムービー」「めぐみ」など)

わたしはかなり涙もろいほうで、特に家族の絆を描かれるともうお約束のように泣いてしまうんですが(笑)、これはもっと普通の人も泣いてしまう話だと思います。殺人者の弟という消せない絆を抱えて生きるしかない主人公の、どこにも行き場のないやるせなさ。しかも兄が罪を犯した原因は、自分の学費をどうにかするためだったのですから、責めるに責められないのです。
お兄さんのほうは刑務所の中で殆ど娯楽もないですから、ひたすら弟の身を案じる手紙を寄越すんですが、それを次第に重いと感じる主人公の気持ちもわかるし、とにかくやるせないのです。自分に好意を持って近づいてくる女性がいても、好きになった女性がいても、思うままに気持ちを伝えられない。辛いです。

主要人物の若手三人も上手かったですが、脇キャラがいちいち上手い。特に被害者の遺族役の吹越満と直貴の就職先の重役の役の杉浦直樹。泣かせるんだよッ!うわあん。
そしてラスト。あのタイミングで小田和正の音楽はもうずるいとしか言いようがないと思いました。

昨今、凶悪犯罪を犯してもろくに反省しないような犯人も多いようですが、取り返しのつかない罪を犯したと悟ることは、本人にとってそれ自体が何よりも厳しい罰になるよなと思いました。
しかしそれ以上に、犯人の家族は本当に辛いな、と。主人公直貴は、「別に君が憎いわけじゃない。君が人を殺したわけじゃないというのは重々わかっている」というようなことを何度か言われるのですが、その言葉が本当に突き刺さるようで、だらだら涙がこぼれてしまいました。

しかしラストは哀しい中にもほわりと温かい気持ちになるような終わり方で、とても良かったです。
原作は読んでいないので、是非読んでみたいですね。

個人的にはとてもお勧め。観に行く方は、ハンカチとティッシュをお忘れなく。