野に還る

ペンタックスをザックに
野山に花や鳥、虫たちを追う。
身を土に返すまでのほんの一時
さあ野遊びの時間の始まりだ。

小仏城山のアサギマダラ

2015-10-13 22:46:41 | ハイキング

 

アサギマダラは長い距離を旅する渡り蝶だ。その生態を調べるために

日本全国でマーキング(油性ペンで翅に直接マークをつける)が行われていて、

その数は全国で年に数万頭に及ぶという。

 

 (アサギマダラ♀。後翅に黒い斑状の性標がない。)

 それを再捕獲することによって渡りの実態を調べるのだが、再捕獲されるのは

1%程度らしい。その記録によるとアサギマダラは夏から秋にかけて東北、関東、

東海地方から紀伊半島、四国地方と経て九州を抜け、沖縄方面へと南下していく。

(この個体は♂。後ろ翅に性標が見られる。)

渡りの最も遠い記録では、和歌山県から放蝶されたアサギマダラが80日後香港で確認されたという。

何と2500kmもの距離を飛んだことになる。

 

 

 

 西南諸島で羽化したアサギマダラの成蝶は、春から夏にかけて九州、四国、紀伊半島、東海、関東、そして

東北へと北上して来る。夏の間は標高1000mを超える高原地帯で多く見られるが、9月から11月になると

今日登ってきた城山や高尾山のような低山、平野部、海岸地帯にも降りてくる。。

 

渡りの過酷さを示すかのように片はねが折れ曲がっているアサギマダラ。ここで世代を繋ぐことができれば、南の地へは

子や孫の世代が渡っていくのだろう。

 

 夏の間、高原で見られるアサギマダラの多く(特に♂)はヨツバヒヨドリやヒヨドリバナ、フジバカマなどの花

に群がっている。最近の研究によるとメスを誘うフェロモンが、この花の蜜に多く含まれているか

らという。

 

この日は渡りを控えたアサギマダラたちが一生懸命花に取りつき蜜を蓄えていた。一帯ではフジバカマの花が

枯れ始めていたので、アザミやハグマ類、シラヤマギク、ツリガネニンジンなどにも蜜を求めていた。

 (二頭並んだうちの上の方が♂、下が♀)

 

急ぐことなくヒラリヒラリと優雅に飛んでいるのだが、目まぐるしく飛ぶ方向を変えるので私の腕では

舞い姿をとることはなかなか難しい。

 

 

 

 

 

アサギマダラの分布は広く、日本全土、朝鮮半島、中国、台湾を含めた東南アジアからヒマラヤ地方まで

かなり広い範囲に生息している。標高は0mの海岸地帯から2000級の山地まで見られる。

 

 長いものでは2000kmを3か月もかけて海を渡る。そんなアサギマダラだが寿命は意外と短い。

秋に産み付けられた卵は幼虫の姿で冬を越し、蛹になりさらには成虫になると長い渡りを始め、北上する。

でもその寿命は4,5か月と短いのだという。つまり成虫の一生の半分以上が渡りに費やされていることになる。

 

何とも不思議な謎の多い、だからこそ魅惑的な蝶である。 この辺で。