ブログよりも遠い場所

サブカルとサッカーの話題っぽい

【ラノベ】ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII

2013-03-17 | ライトノベル
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫) ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2012-11-09

 読了。

 うわあ! モノクロ絵が劇的に改善してる!(第一声)

 絵柄そのものは変わっていないので、これは単純に仕事の丁寧さが増したのだと思われます。思えば『涼宮ハルヒ』シリーズのモノクロ挿絵も長いこと酷いクオリティでしたし、ラノベが美味しい市場になったことで絵師さんの意識も変わっているんでしょうか。善哉。

 つーわけで、絵に不満はあれど内容には文句のつけようがなかった作品の第2巻。
 1巻の表紙を見たときは、異国情緒あふれる異世界から主人公のところに女剣士がやってくる、というようなストーリーを想像していたのに、蓋を開けてみたらガチの戦記モノだったという予想の斜め上にいかれた作品でもあります。
 今回はイクタたちが、実戦経験を積むため、比較的安全と思われる北域へと赴くところから物語がはじまりました。そして、出張先で「お前ら一番退屈なタイミングできたな」とか「まさか実践を経験するハメにはならんだろう」とか、思いっきりフラグを立てまくられた結果、先住民族を相手取ったガチの内戦に巻き込まれることになっていく、というのが大まかなストーリーラインです。
 以下雑感。

・なんつーか良くも悪くも〝重い〟作品ですよねコレ。ラノベにおける戦記モノって、どれだけ過酷な戦争下という設定であっても、なんだかんだでヒロイン候補っぽい若い女キャラは生き残ったりとか、惨い拷問を受けたりとかしないものですけど、まさか出番とカラー挿絵を与えられた女キャラが主人公のあずかり知らぬところで無残に死んでいくとは。ポニテだったり読書好きだったり少しお馬鹿だったり未亡人だったりと美味しいキャラだったのに、カンナは戦争の過酷さの中に散ったのでした(最後の一点は死ぬキャラだからこそ背負わせた設定という気がしないでもないですが)。

・そんなわけで、作品としては掛け値なしに面白いんですけど、読んでいて辛くなるシーンもわりと目についたりして、万人にお薦めはできないなーと。今のところイクタたちメインキャラは手酷い被害を被ったりはしていませんが、とにかく無能な上官に振り回されて死んでいく兵士たちが不憫でなりません。そういうふうに感じられる内容になっているというのは、それだけ書き方が上手いということでもありますし、褒めるべき点なんだと思うんですけどね。ただ、こういう重い作品ばかりだと疲れてしまうというのもやはり事実なので、他のヌルいラノベがあるからこそ価値のある作品なんだろうな、と思ったりもします。

・なお、個人的に2巻のMVPはサザルーフ元中尉のもよう。上記したように、無能な上官に振り回される描写でストレス溜まりっぱなしだったせいか、彼の存在は暗闇に瞬く星のように感じました。今後も登場するんだろうか? 死にそうだよなあ。

・あと、これは声を大にして言いたいんですが、キャラクター描写がすげー巧みな作家さんですね。イクタをはじめ、メインキャラに外れがないってのは、最近じゃ珍しい気がします。

・だからこそ、今後イクタと皇女が、彼らと敵対する可能性を匂わせているのが、非常に胃に悪い感じです。ハイ。もしそうなったら、ヤトリは自分の信念を曲げないだろうし、トルウェイも敵対するとなったら躊躇わなそう(そのときには成長してるだろうし)だけど、マシューはなんだかんだでイクタを相手に引き金を引いたりはできない気がしますね。ハロはそういう状況になる前に、なんらかの理由で軍隊から去りそうかな。マシューみたいな、最初は一番に仲間を裏切りそうなのに、成長を遂げて仲間想いになったりするキャラ好きなんです。『ダイの大冒険』のポップみたいな。

・2巻で唯一引っかかったところがあるとするなら、結局、最初から最後までシナーク族がいいように利用されるアホの集団だったってところでしょうか。まあ、元を辿ればコネで重要な役職を埋める帝国が終わってるんですけど、今回の内戦を眺めての率直な感想は、「イクタたちはさっさと帝国に見切りをつけて亡命したほうがいいと思うよ」でした。この身も蓋もない感想は、3巻以降も引きずりそうだなあ。

 とまあ、そんな感じで非常に面白い作品であることは間違いないですねということで一つ。
 のっぴきならない状況に追い込まれているので、続きがすごく気になります。
 そして、次が3巻目なので、打ち切りにならないかどうかすごく気になります。
 乗り越えておくれよ……!