ロマンティック・サイボーグ (mag2libro) 価格:¥ 530(税込) 発売日:2009-12-15 |
読了。
2chラノベ板の俺TUEE系ラノベを語ろうスレにて絶賛されていた作品です。
結論から先に言うと、「楽しめたけどコレくらいの出来のラノベなら他にもありそうだなあ」という感じ。上記スレに諸手を挙げての大絶賛しかなかったので、ちと期待値が上がりすぎていたのかも。ここにきてようやく沈静化したというか、僕と似たような感想を書いてる人も増えてきたようなので、よっぽど最初に読んだ(感想を書き込んだ)人の趣味にはストライクだったんだろうなあ、と。
内容はあらすじを見て頂くとして、つらつらと雑感なんぞを。
コレ、単純に主人公・由宇の性格が微妙ですよね。
つーか由宇はヘタレじゃないと思うんだよなあ。こういうのはヘタレじゃなくて、自覚がないって言うべきだと思う。僕はヘタレ主人公が終盤で俺TUEEする物語は好きだけど、こういう自覚がない主人公は見ててホントにイライラするからダメなんだ。
これに関してはワケも分からず異世界に放り込まれた(これに関しては妹のキャラクターに問題がある。後述)とか、そういった物語的な事情を考慮すると、「自覚しろ」って言うのは酷なんでしょうけど。
でも、自分以外の人間がいつ死んでもおかしくない状況に直面しているにも関わらず「ビビる」のではなく「あ、あの……僕はどうしたらいいでしょうか……」って訊ねるのは軽く頭がおかしいでしょ。で、コレが全体の3/4に渡るもんだから、どんなに終盤が爽快な展開になったとしてもマイナス分を取り返し切れないわけです。
しかも、実際は終盤がめちゃくちゃ爽快だったかというとそうでもなく、「フルパワーを出すと本人にもリスクがある」(これって俺TUEE系の話だとかなりさじ加減が難しい設定だと思うんだけど、使っちゃってるんだよなあ)とかって設定をちらつかせるせいで、強大な敵を倒すシーンにもイマイチ没入しきれない感じ。
また、由宇自身が微妙なのに加え、他の登場人物も魅力があるとは言い難いキャラクターばかりでした。
まず妹の亜衣。
説明したら尻込みするとか理由付けしてましたけど、さすがに「どれくらい切迫した状況なのか」ってのを伝えないで異世界に送り込むのはどうかと思うぜ。上で由宇に自覚がないって書きましたが、その一因というか原因は間違いなく亜衣なわけで、こういう話によく出てくる「物語の展開上、作り手にとって明かされると不都合な設定を不自然に隠すキャラクター」だったと思います。
どうでもいい話、こういう「出来すぎた妹」、「表面上は敵視してるようで実はすごく兄想いの妹」を配置する手法で奈須きのこ作品を思い出してしまって、うまく言語化できない類のマンネリ感がありました。『ロマンティック・サイボーグ』とは全く関係ないけど、奈須さんってホント毎回似たような立ち位置のキャラしか出さねーよな。
話を戻して、次はニルスとキッカの姉妹。
ニルスはキッカが食われたときに平手打ちをかましたシーンで「あー、底が浅いキャラなんすねえ」と感じてしまいNG。あそこは平然と由宇に対応しつつも信頼は木っ端微塵に打ち砕かれた、みたいな描写を期待したんですけど、何ともわっかりやすく決別させちゃいましたね。
キッカはもうなんつーか、わかりやすいツンデレ。わかりやすすぎて、現代にはそぐわないツンデレ。正直、敵視の仕方が"異常"すぎて、あとでデレようが何をしようが、こういうキャラの印象が良い方向に転ぶことは稀です。
……正直、こういうタイプの暴力テンプレツンデレは淘汰されはじめてもイイ頃だと思うんだけどなあ。良ツンデレに必要なのは良識と可愛げ。それがないツンデレは単なるキチガイ。これテストにも出るから、そろっと浸透させていこうぜ。ええ、ええ、『パルフェ』のカトレアを見るとよくわかる事実ですとも。
や、問答無用で最強の存在とか、細かい理由付けをすっ飛ばして異世界にいっちゃう強引さとか、そういった舞台装置に関する思いきりのよさはすっげー魅力的なんですよね。
でも、そのせっかくの舞台装置を生かし切れていないのが、ものすごく勿体ない。キャラクターの魅力のなさが足を引っ張っているせいで、足に重しをつけて全力疾走している人を見ているような切なさを感じました。
まあなんというか、俺TUEEを楽しみたければ『異世界の聖機師物語』を見てればいいんだなということがよく分かりましたということでひとつ。いやあ、梶島さんの俺TUEE話を書く才能はホント凄いですね。