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シネマ座椅子

座椅子に座り、酒を飲みながら日々映画鑑賞。
映画の結末を待たずに酒の力で本日の結末を迎えることもしばしば。

鍵泥棒のメソッド

2014-03-21 | おもろい
マサ様が例の倍返しをやって国民的視聴率男になる半年だか1年くらいだか前に公開されていた映画。

半沢に対して「さすが『鍵泥棒』の堺だな!」みたいな評価が多い中、座椅子は大河「新撰組!」でマサ様を知り、それ以降このブログでも「マサ様は邦画界のエース」だと言い続けていましたし、鍵泥棒がどうこう言われても、いまいちピンと来ない感じがありました。鍵を盗もうが盗むまいが、マサ様の映画にハズレは無い。



んで、今回地上波でやってたこともあり、その「鍵泥棒」とはどんなもんだと鑑賞です。




観てみると一応マサ様主演扱いですが、広末さんと中車さんの存在感がすごいので、それほどマサ様一人が主演っていう感じもせず、3人が主演なのかな、という感じが強い。




1.記憶喪失になった殺し屋が、世の中どうでも良くなってるニートみたいな奴と人生入れ替わって、特に予期せず殺し屋になっちゃったニートの方がとんでもない騒動を巻き起こす、という三谷作品のようなノリで進む話

2.記憶喪失を経て純朴純粋な男になった殺し屋と、とある思いから激しく誰かと結婚したいと思っている割には全然女性的感情を表に出してくれない難しい女が繰り広げる見てて照れちゃうくらいの純愛話

この1.2.が話の軸。要するに1.2.両方に関わる中車さんが凄いという話。
あの人昔は気弱なオッサンの役ばっかだった気がするのに最近すっかり貫禄や凄みのある役ばっかになってきてるよな。「カイジ」の利根川役が強烈な印象を残していたことが思い出される。




「笑い」「緊張」「共感」「驚き」「興奮」「感動」と座椅子が勝手に定義している「映画に求める要素」を一通り満たしています。これって結構珍しいタイプの映画だと思います。「超おもろい」カテゴリで見てみても、これを全て満たしているのは「陽のあたる教室」と「9か月」くらい。



つーことで、面白かったです。できたらマサ様はもう1回倍返しするのはもうそれはそれで良いので、それ以降はテレビドラマより映画に主軸置いて欲しいなと思います。


作品紹介はこちら

ひまわり

2014-03-15 | ふつう
2000年の映画です。
麻生久美子が若い。

小学生時代の同級生が海難事故で亡くなり、
その葬式で久々に集まった同級生や、
亡くなった同級生の元彼とかの縁者が集まって、
故人の話を色々していくうちに何となく
事故の悲しみや各々が持っている悩みなど、
様々な思いを突き破ってそれぞれの一歩を
踏み出していくという話。

白夜行」の時に注目宣言しました粟田麗さんが出てます。
今回は4~5番目の結構いい役。
2000年の映画だけにまだ若い。結構かわいい。

麻生久美子は確かに雰囲気ある。
こういう役やると彼女の魅力引き立つね。

そして今や邦画界のエース、ミスター視聴率の
マサ様が、この映画では完全なる端役で出ています。
大河の「新撰組!」以前の作品なので、
要するに無名時代。今になると貴重です。

などと中肉中背な感想を抱いた後に、
とあるネタバレを見て驚愕しました。
この映画、驚愕だ。





以下超ネタバレなので、
この映画を今後観たいと思っている方は、
映画を観た後にお読みください。




















<隠された事実>

・終盤に埋もれた船を掘り返した輝明以外の11人

・序盤の海難事故を知らせるニュースにて死亡が報道された朋美以外の11人

上記2点における11人は、全て同じ人々。


つまり


船を掘り返した輝明以外の11人は、




既  に  全  員  死  亡  し  て  い  る  。




いやー、驚きましたね。慌てて観直しました。
でもこれどうなんですかね。
どう考えても話として成り立ってない。
手っ取り早く言うとミステリーにおけるペテン。


これがペテンでないと説明するならば、
やはり主流の考えである夢落ちしかない。
事故の報道までが現実で、ニュース画面が
ノイズになるところからが夢、みたいな感じか。
この映画で葬式がらみのイベントから
唯一切り離された存在である主役の彼女の電話で
物語が終わるあたり、そこでその世界(=夢)から
切り離される、というエンディングなのかなと。




なんか、考える余地がたくさん与えられてる
映画でした。

お願いだから、このネタが実は制作側の悪戯で、
下らない深読みしてないでこの生涯青春的な
青春ストーリーを素直に楽しめよ!みたいな
過剰な深読み志向に対するアンチテーゼだった、
みたいのはやめてほしい。
映画くらいしか楽しみがない残念な大人を
からかうのはやめてほしい。


作品紹介はこちら

ゆきゆきて、神軍

2014-03-02 | ふつう
前々から観てみたかった本作を遂に鑑賞。

「日本ドキュメンタリー映画史上最高の傑作。」
「あのマイケル・ムーアにして「世界最高のドキュメンタリー」と言わしめた映画。」
だの何だの、煽り文句はよく分かった。

で、座椅子はそんな映画を観て何を思うのか、
楽しみにして観てみました。



この映画は
戦地のパプアニューギニア帰りのアナーキスト、
奥崎謙三氏の「戦後」を追いかけた映画です。

現在、皇族の新年一般参賀、
皇族と国民の間には防弾ガラスが
張られるようになりましたが、
あれはこの奥崎氏の
 「昭和天皇パチンコ狙撃事件」が
きっかけになったものです。


日の丸をはためかせて車であちこち赴く割には、
「天皇の戦争責任」をこれでもかと吹聴する姿に、
きっと自身に大きな矛盾を抱えながら
自らの主張を大きな声で訴えているのだろう、
大きな声を揚げ続けてないと自己が圧潰して
しまうのだろうと何となく感じてみる。



自身が所属していた部隊で行われていた
部下殺しの真実に迫っていく奥崎氏。
とにかく口が重く真実を語ろうとしない
元兵隊さん達の心境たるやいかなるものか。
「これ以上は語らぬ方が良い」と重ねて
語る元兵士たちの言葉には
きっと嘘は無いのだろうなと推測。
知らぬが仏、言わぬが花。ということか。



当時4km四方内に包囲された日本兵達には、
食料が無かったはず。
彼らは何を食べていたのか。
その中で彼らが食べた、と証言する
「黒ブタ」「白ブタ」とは何か。



このあたりが徐々に明らかになっていく
あたりは、ものすごい緊張感。
分かっているけど分かっていた通りの
答えが明示されてしまう残酷さ。



結局部下殺しの真実に辿りつくと
そのまま殺人未遂を犯す奥崎氏。


劇中最後の奥崎氏の言葉の要旨。
「暴力はいけないものだが、もしそれが
 自分と国家を正しい道へ導くために
 必要なものだとしたら、それは必要だ。
 その目的のためなら、私はそれを使う。」



劇中にあるシーン、意見を違う人と
話してる途中で激昂して相手押し倒して
マウントパンチするのが正しいことなのか。
病気で身体弱ってる人を引きずり倒して
蹴飛ばすことが正しいことなのか。
そんなことで本当に日本は変わるのか。



今のようにネットもなく、
自分の意見を伝えるためには
自らの行動で示すしかなかった時代に
自分の体より遥かに大きな声を
上げなくてはいけないと
使命に駆られた男の悲しき記録の映画です。
そんな感じなので、
おもろいおもろくない
の尺度で計る感じではなかったです。


思想や行動には全然共感できませんが、
当時が発展と豊かさを実感するその裏側で、
言うに言えない禁忌や悲しみを抱えた時代で
あったであろうことは想像できました。


あと、奥崎氏の奥様の「なりきり演技」は
日本アカデミー女優賞レベルだと思います。


作品紹介はこちら