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シネマ座椅子

座椅子に座り、酒を飲みながら日々映画鑑賞。
映画の結末を待たずに酒の力で本日の結末を迎えることもしばしば。

ゆきゆきて、神軍

2014-03-02 | ふつう
前々から観てみたかった本作を遂に鑑賞。

「日本ドキュメンタリー映画史上最高の傑作。」
「あのマイケル・ムーアにして「世界最高のドキュメンタリー」と言わしめた映画。」
だの何だの、煽り文句はよく分かった。

で、座椅子はそんな映画を観て何を思うのか、
楽しみにして観てみました。



この映画は
戦地のパプアニューギニア帰りのアナーキスト、
奥崎謙三氏の「戦後」を追いかけた映画です。

現在、皇族の新年一般参賀、
皇族と国民の間には防弾ガラスが
張られるようになりましたが、
あれはこの奥崎氏の
 「昭和天皇パチンコ狙撃事件」が
きっかけになったものです。


日の丸をはためかせて車であちこち赴く割には、
「天皇の戦争責任」をこれでもかと吹聴する姿に、
きっと自身に大きな矛盾を抱えながら
自らの主張を大きな声で訴えているのだろう、
大きな声を揚げ続けてないと自己が圧潰して
しまうのだろうと何となく感じてみる。



自身が所属していた部隊で行われていた
部下殺しの真実に迫っていく奥崎氏。
とにかく口が重く真実を語ろうとしない
元兵隊さん達の心境たるやいかなるものか。
「これ以上は語らぬ方が良い」と重ねて
語る元兵士たちの言葉には
きっと嘘は無いのだろうなと推測。
知らぬが仏、言わぬが花。ということか。



当時4km四方内に包囲された日本兵達には、
食料が無かったはず。
彼らは何を食べていたのか。
その中で彼らが食べた、と証言する
「黒ブタ」「白ブタ」とは何か。



このあたりが徐々に明らかになっていく
あたりは、ものすごい緊張感。
分かっているけど分かっていた通りの
答えが明示されてしまう残酷さ。



結局部下殺しの真実に辿りつくと
そのまま殺人未遂を犯す奥崎氏。


劇中最後の奥崎氏の言葉の要旨。
「暴力はいけないものだが、もしそれが
 自分と国家を正しい道へ導くために
 必要なものだとしたら、それは必要だ。
 その目的のためなら、私はそれを使う。」



劇中にあるシーン、意見を違う人と
話してる途中で激昂して相手押し倒して
マウントパンチするのが正しいことなのか。
病気で身体弱ってる人を引きずり倒して
蹴飛ばすことが正しいことなのか。
そんなことで本当に日本は変わるのか。



今のようにネットもなく、
自分の意見を伝えるためには
自らの行動で示すしかなかった時代に
自分の体より遥かに大きな声を
上げなくてはいけないと
使命に駆られた男の悲しき記録の映画です。
そんな感じなので、
おもろいおもろくない
の尺度で計る感じではなかったです。


思想や行動には全然共感できませんが、
当時が発展と豊かさを実感するその裏側で、
言うに言えない禁忌や悲しみを抱えた時代で
あったであろうことは想像できました。


あと、奥崎氏の奥様の「なりきり演技」は
日本アカデミー女優賞レベルだと思います。


作品紹介はこちら