Queen - Liar
クイーンが世界的にブレイクしたのは例の「ボヘミアン・ラプソディー」が1975年末頃にイギリスで大ヒットしたことがきっかけである。
しかし、日本では、その1年ほど前ににブレイクした。シングル「キラー・クイーン」の大ヒットと雑誌「ミュージックライフ」によるアイドルバンド的な扱いが相乗作用を起こし、ロックを普段聴かない一般ピープルまでその存在は有名になっていた。
でも、本当はさらにその1年前に、日本のコアなロックファンによってクイーンは熱狂的に迎えられていた。ロック評論家である大貫憲章氏はベタ誉めで、まさに理想のロックバンドが誕生したと絶賛した。
その時、騒がれた作品が「クイーン」「クイーンII」という初期2作である。
モザイクのように細かい音とコーラスで作り込まれたこの2作品は、静と動がめまぐるしく入れ替わり、かつポップで荘厳なサウンドであった。歌詞も中世のおとぎ話を思わせるロマンチックなもの。その内容についてはなぜかイギリスの評論家から、Led Zeppelin、Yes のパクリだみたいな酷評を受け、イギリス本国ではほとんど売れなかったが、日本ではそんな評価はほとんどされず、まさに新しい夢のようなサウンドとしてロックファンのハートを打ち抜いた。
問題点はあった。あまりにもアレンジと録音に凝り過ぎたため、ライブで表現できないという現象である。そのため、3作目以降彼らはシンプルなアレンジに取り組むようになる。相変わらず大げさでコーラスを多用した作品を作り続けてはいたが、初期2作品ほどの複雑なアレンジは影をひそめるようになった。
また、初期2作は、いかに複雑なアレンジであっても、ハードロックとしての激しさを持っていたが、これも3作目以降は減少していく。フレディ・マーキュリーのボーカルとコーラスを生かした新しいタイプのポップロックとしての面が強くなり、それはそれで大成功したのだが、ハードロックファンとしては、初期2作品の魅力が失われたようで残念だった。
前置きが長くなったが、つまり初期2作品を評価した当時の日本のロックファンはすごいし、やはり初期2作品はすごい名作であるということを言いたい。
未だに、ポップなのに、こんな複雑なアレンジを持つハードロックサウンドにはお目にかかれない。ラッシュやドリームシアターのようなバンドはあるが、クイーンのような不思議な中世のおとぎ話のような世界を体感できる感覚とは違う。やはり唯一無比の音世界なのである。
紹介したい名曲の中から今回はこの3曲を選んだ。やはり魅力的である。
特にマーチオブブラッククイーンのあまりにも劇的なアレンジにはため息が出る。ロックの理想形の一つがここにあると思う。
初期2作品を聴きながら、亡きフレディの天才的なボーカルに酔いしれたい。
次回はこのQueenの音世界に憧れたアーティストを紹介したいと思う。