
夜道に財布が落ちていた。2つ折りの紙入れである。夜目にもカードがたくさん入っているのが見えた。たまたま近くに交番があることが分かっていたので、すぐに拾って持って行った。ところがあいにく無人。警察署の電話番号を書いた札を置いてある。電話だけでも入れておいた方がいいのかな、などと思いつつ、チラリと財布を覗いて見ると現金もずいぶんたくさん入っている様子。
そうこうしているうちに警官が戻ってきた。財布を渡して調べてもらうと、現金が約10万円、AMEXゴールドカードを筆頭にクレジットカード数枚、Citibank銀行を筆頭にキャッシュカード数枚、しかも財布はルイビトン、いかにもお金持ちそうである。免許証や各種会員証なども入っていた。免許証とカード類の名義は同じだったので落とし主は特定されたも同然である。
警官は白い手袋でカードポケットの隅々まで念入りに調べていたが、最近流行の大麻や覚醒剤の類は入っていなかったようだ。
拾得物預かり証を書いている警官から「落とし主からお礼を受け取る権利をどうしますか」と尋ねられた。どういうことかと聞いてみると、次のような説明を受けた。
●権利を放棄した場合:落とし主が現れても謝礼は支払われない。
●権利を放棄しない(主張する)場合:警察は私の住所氏名連絡先などを落とし主に知らせて「この人にお礼をしてくれ」と告げる。謝礼の受け渡しについて警察は介入しないので本人同士で決めてくれ。
昔は落とし主が拾い主のところに行って、謝礼を払って書類を受け取らなければならないという仕組みだったと思うのだが、今はその辺の制度が変わったらしい。要するに落とし主は、警察に行けばすぐに落とし物を受け取ることができる。拾い主に対する謝礼を踏み倒したとしても警察は関与しないというシステムのようである。
警官は「権利を放棄しますか……」といかにも放棄した方がいいような言い方をする。もちろん強要されたわけではない。考えてみると、私にとって価値があるのは現金だけで、謝礼がもらえたとして私の常識的には1万円である。その一方で、もし謝礼の支払を免れようとする落とし主だった場合、現実には1円ももらえない。法律的には私に謝礼をもらえる権利がある、などといったところで、いやがる落とし主から謝礼をふんだくる経費はきっと謝礼より高いのである。
謝礼がもらえることを期待していれば精神的な打撃である。権利を放棄してしまえばそんなイヤな思いをする危険もない。1万円のためにイヤな思いはしたくない。
だいたい、落とし物を届けて謝礼をもらおうだなんてサモシイ根性を持っている私自身がイヤになってくる。権利放棄しておけば「無償で正しいことをした良い人、自分」に陶酔することは出来る。
もし1万円しか入っていなかったら、謝礼は1000円ほど、陶酔代が1000円なら映画を見るのより安いから権利は放棄していただろう。もし拾ったのが100万円だったら放棄しない。この「もらえて1万円」は微妙な金額だ。警官が書類を書いている間、ずーーーと考えていた。
今の世の中、財布の落とし主という「知らない人」に私の住所氏名、電話番号を教えるということ自体に抵抗はある。変な人だったりすると、謝礼がもらえない精神的な打撃にとどまらない被害がないとも限らない。放棄しておいたほうが無難かなとも思った。
しかし結局、放棄しなかった。放棄してしまえば、この後どうなるかが体験できない。せっかくの機会だから最後まで体験してやろうという気になった。「経緯をブログに書けるぞ」と自分に言い訳をしながら、もちろん本音はお金が欲しかったのである。
翌朝、落とし主から電話がかかってきた。大変丁寧にお礼を言われて「謝礼は2割でいいですか」と訊ねられた。「謝礼はいかほどに」と訊ねられたら「1万円」と答えるつもりだったのだが、いきなり2割である。金額ではなく「割」だった。私は2万円だと理解して、謝礼額に対して感謝の意を表した。受け渡し方法は銀行振り込みにしてもらった。
あとでまた電話があって「2万円でいいですか」と確認された。昼過ぎには振り込まれた。とっても良い「落とし主」の財布だったようだ。
そうこうしているうちに警官が戻ってきた。財布を渡して調べてもらうと、現金が約10万円、AMEXゴールドカードを筆頭にクレジットカード数枚、Citibank銀行を筆頭にキャッシュカード数枚、しかも財布はルイビトン、いかにもお金持ちそうである。免許証や各種会員証なども入っていた。免許証とカード類の名義は同じだったので落とし主は特定されたも同然である。
警官は白い手袋でカードポケットの隅々まで念入りに調べていたが、最近流行の大麻や覚醒剤の類は入っていなかったようだ。
拾得物預かり証を書いている警官から「落とし主からお礼を受け取る権利をどうしますか」と尋ねられた。どういうことかと聞いてみると、次のような説明を受けた。
●権利を放棄した場合:落とし主が現れても謝礼は支払われない。
●権利を放棄しない(主張する)場合:警察は私の住所氏名連絡先などを落とし主に知らせて「この人にお礼をしてくれ」と告げる。謝礼の受け渡しについて警察は介入しないので本人同士で決めてくれ。
昔は落とし主が拾い主のところに行って、謝礼を払って書類を受け取らなければならないという仕組みだったと思うのだが、今はその辺の制度が変わったらしい。要するに落とし主は、警察に行けばすぐに落とし物を受け取ることができる。拾い主に対する謝礼を踏み倒したとしても警察は関与しないというシステムのようである。
警官は「権利を放棄しますか……」といかにも放棄した方がいいような言い方をする。もちろん強要されたわけではない。考えてみると、私にとって価値があるのは現金だけで、謝礼がもらえたとして私の常識的には1万円である。その一方で、もし謝礼の支払を免れようとする落とし主だった場合、現実には1円ももらえない。法律的には私に謝礼をもらえる権利がある、などといったところで、いやがる落とし主から謝礼をふんだくる経費はきっと謝礼より高いのである。
謝礼がもらえることを期待していれば精神的な打撃である。権利を放棄してしまえばそんなイヤな思いをする危険もない。1万円のためにイヤな思いはしたくない。
だいたい、落とし物を届けて謝礼をもらおうだなんてサモシイ根性を持っている私自身がイヤになってくる。権利放棄しておけば「無償で正しいことをした良い人、自分」に陶酔することは出来る。
もし1万円しか入っていなかったら、謝礼は1000円ほど、陶酔代が1000円なら映画を見るのより安いから権利は放棄していただろう。もし拾ったのが100万円だったら放棄しない。この「もらえて1万円」は微妙な金額だ。警官が書類を書いている間、ずーーーと考えていた。
今の世の中、財布の落とし主という「知らない人」に私の住所氏名、電話番号を教えるということ自体に抵抗はある。変な人だったりすると、謝礼がもらえない精神的な打撃にとどまらない被害がないとも限らない。放棄しておいたほうが無難かなとも思った。
しかし結局、放棄しなかった。放棄してしまえば、この後どうなるかが体験できない。せっかくの機会だから最後まで体験してやろうという気になった。「経緯をブログに書けるぞ」と自分に言い訳をしながら、もちろん本音はお金が欲しかったのである。
翌朝、落とし主から電話がかかってきた。大変丁寧にお礼を言われて「謝礼は2割でいいですか」と訊ねられた。「謝礼はいかほどに」と訊ねられたら「1万円」と答えるつもりだったのだが、いきなり2割である。金額ではなく「割」だった。私は2万円だと理解して、謝礼額に対して感謝の意を表した。受け渡し方法は銀行振り込みにしてもらった。
あとでまた電話があって「2万円でいいですか」と確認された。昼過ぎには振り込まれた。とっても良い「落とし主」の財布だったようだ。
カード系は停止とか再発行とか面倒ですから
それを考えると妥当かもしれないですね
私は落としたことがあり、交番に行ったときは
既に子供が届けていたという経験ありです。
学生のころのド貧乏でしたが
サイフに入ってた8000円のうち5000円あげちゃった。
痛かった・・
でもその夜、友人がご飯ご馳走してくれたから
まあまあの思い出^^;
勉強になりますm(__)m
よく権利を行使して下さいました!
2万円だとサイゼリヤで豪遊できますね(^O^)/
2万円も入っており、空腹で可哀想だったけど交番に行かせました。
翌日、おばさんが菓子折持って家まで書類を取りに来ました。こちらの地元は古いやり方みたいです。
3千円が彼の小遣いになりました。そんなことあるんですね。いい社会勉強でした。
そうですか、拾い主から書類を受け取らなければならない、という方式も生き残っているんですね。「悪い拾い主」だった場合、その方式だとトラブルのもとになるから廃止されたのかと思ったんですけど、ホントに「悪い拾い主」ならネコババしますよね(笑)
心の豊かな 人なら権利の放棄でしょう。
交番に届けてあげて、権利も主張する人って珍しいんじゃないかなぁ。
実は私も拾って同じ状況になったことがあります。。
格好つけて放棄したけど、、、そんな選択して迷うべきなら、届けなきゃよかったと思いました。
やっぱお礼って言うか気持ちでさぁ、
「届けてくれてありがとう」って感謝されたいっていうのはありますよね。お金とかじゃなくて気持ちの問題。
「いえいえ、たまたま拾っただけですから」
「これ気持ちばかりのお礼です・・些少ですが受け取ってください・・・」
「いえいえ、そんな気持ちじゃないですから」
「いやいや、それじゃこちらの気持ちが収まりませんから・・・」
「いえいえ・・・・」
「いやいや・・・」
「いえいえ・・・」
こういうのって日本人っぽい流れですが、とても素晴らしい光景だと私は思いますが・・・
自分が財布をなくしたとき、思うのは
「金なんかいらねぇから、免許やカード類だけでもなんとかなんないかな。」って思うもん。
私なら超感謝して、金銭は全額あげちゃうな。。
今回は現金が9万9000円も入っていたので、さすがに全部あげる、と言われても辞退すると思います。2万円でも多くてびっくりしたぐらいですから。