歌え!だらリーマン

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カツラ美容室別室

2008年07月29日 | 雑談
カツラ美容室別室を読んだ。実にあっさり読める。64ページに
オレは他人によってなんとか自分の形を保てている。他人と会わないでいたら、オレはゲル状になるだろう。
文脈を考えると「ゲルではなくてゾルだろう」とツッコんだことがあった。でもゲルでも話は通じる。

他人によって自分の形を保てている状態、すなわちゾルである。登場する「オレ」は普段ゾルであり、他人の存在が消えれば形は保てない。ところが他人と会わないでいたらゲルになるということは、すなわち自分で自分の形を保てるということである。もちろん、ゾルなら他人と会わないでいた途端に形を保てないのではないかというツッコミはあって然るべきだが、形が崩れそうになればゲル化するということで、なんとか話が通じる。

他人と会っているときの「オレ」がゾルかゲルかは検証可能だ。「会っている他人」が形を変えてみればいい。オレの形が他人に合わせて自在に変わればゾルであり、変わらなければゲルである。

とはいえ、著者の意図を忖度するに元の文章を「オレはゾル状になるだろう」と変えた方が科学的には正しいような気はする。いや、ゲルになったりゾルになったりする必要はない。
オレは他人によってなんとか自分の形を保てているゾル状人間である。他人と会わないでいたら自分の形を保てない。
とすべきだろう。著者の書きたかった「オレ」の性格を科学的な誤謬なしに表すにはこれがいいと思う。しかし文学として面白いかどうかは別の話。