やどりせし はなたちばなも かれなくに などほとときす こゑたえぬらむ
やどりせし 花橘も かれなくに などほととぎす 声絶えぬらむ
大江千里
宿にしていた花橘が枯れたわけでもないのに、どうしてほととぎすの声が絶えてしまったのだろう。
ほととぎすと花橘の組み合わせは 0141 にもありましたが、どちらも花橘にほととぎすはいません。両者(ほととぎすと花橘)はいわば「セット」であることがふさわしい組み合わせなのにそうなっていない情景を詠んでいます。一緒であることがふさわしいものがそのままそうなっているより、そうでない情景の方が歌人の歌心を誘うのかもしれませんね。