特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

始まりの記

2019-03-31 18:20:29 | 思い付記

1.はじめに

 とあるブログサイトが閉店するので引っ越した。どこにするか迷ったがとりあえず使っ
 てみた。数式の記述や図の掲載が目的だが、始めは要領がわからず難儀した。便利な所、
 不便な所もあるが元のサイトに比べ遜色が無いと思った。

 これを機会に不要なものを削除し、内容を見直しをした。一ヶ月かかってようやくめど
 がつき、新しい記事も書けた。

2.ブログのきっかけ

 電気科出身だが、学生時代からいくつかの疑問があった。残念なながら議論できるよう
 な場は無く、突飛な発言をもするので授業の邪魔ものという認識だった。その中で唯一
 数学の教師が相手してくれた。

 仕事についてからも折につけ調べたり考察し続けてきた。定年になったのでこれらの疑問
 について、腰を落ち着けて考えた。中央図書館に一日中詰めたり、夜中じゅう何日も思考
 した。そして、文書にまとめ推敲していると視界が開けてきた。

 これらのことをブログにアップしたのがきっかけであるが、新たな疑問が見つかったり、
 間違いの発見やさらなる考察が進んだりしている。

3.40年間、主に考え続けたこと

 (1) S2=S'からローレンツ変換を導く
  メラーの本に載っているが、S2=S'2=0 からどうして、0が取れるかわからなかった。
  定年後の思索の過程において図書館にあったシュッツの本に例題として載っていた。そ
  れから10年後、EMAN氏のサイトで S2=S'2=0 からローレンツ変換を導びいていた。
  私の40年間は!!

 (2) 同時性の定義の意味
  アインシュタインの論文は最初に「同時性の定義」を述べている。この当たり前のこと
  が、何故必要なのか? そして、論文や理論の何処にこれが使われているか? 疑問だ
  った。

  そして、この「同時性の定義」にはアインシュタインの論文のもの(本当はポアンカレ
  の提示)とメラーの本のものとがあり、その違いが理解できなかった。

 (3) 運動する導体が広がりを持つときの電磁誘導
  これについては電気学会の本に載っていた問題(当時は解答が無く、古い本なので最近
  監修した著者が解答を付けたが、一部誤っている)であり徹夜して考えた。教授の問い
  かけで発表したが、誰からの反応も無く教授もダンマリを決めた。自信はあったが40
  年間考え続けた。

  その後、電磁誘導の要因をすべて理解していないことがわかり、慣性系を変えた時の解
  釈が誤っていた。そして、電磁誘導については、未だに誤解が広まっていることもわか
  った。例え
ばファインマンも「電磁誘導の法則は成立しない場合が在る」と誤った結論
  をして、こ
れを鵜呑みにした日本の教授がこの誤りを拡散している。

4.おわりに

 いろいろな疑問を考えていると物理の杜撰さを感ずるようになった。定義、法則、定理の
 区別がはっきりしなかったり省かれていて、何を議論しているのか、その結論が何から導
 かれているのかが曖昧になっている。ひどい場合は結論とされるものは仮定だったりする。

 気になったのは昨今は大学や門外の出版社が乗り出して、猫も杓子も出版することである。
 自由なのはよいが、質とともに新たに世の中に問うべき内容があるのだろうか。

 一つは、流行りの説明過多本である。昔は自分で考えろというスタンスで難儀したので、
 志として良いことではあるが、真偽などをよく考えもせず、色んな所から集めてきて「説
 明できればよいや」というものがある。

 もう一つは、物理なのに、微分やベクトル解析の説明を載せているものがある。これは別
 の本で済ませたものとして、物理の記述にページを割いてもらいたい。

5.このサイトの特徴

 5.1 長所
  (1) HTMLの簡単なエディタがある。コードが詰まってみずらいが何とか上付き、下付き
   文字が書け、表の挿入やそのほかの機能が使えそう。
  (2) 図の大きさが設定出来たり、図やリンクに説明文が入れられる。

 5.2 短所
  (1) 文字色を指定しても、書き直すとあちこちでデホルトに戻るようだ。
  (2) 図やリンクの挿入が慣れるまでわからなかった。

以上


回転座標系のベクトル時間微分 dA/dt=δA'/δt+ω×A の意味

2019-03-30 10:39:57 | 力学

1.まえがき

 慣性系S(x,y,z)と回転座標系S'(x',y',z')について、ベクトルAおよび角速度ベクトルωを使って
    dA/dt=δA'/δt+ω×A   ・・・・・・・・・・・・・・①
 という時間微分の関係式がある。しかし、この式が一般に図を使って導かれることからAω
 一体どの慣性系の量であるか明確でない。さらに、δ/δt(d'/dt, (d/dt)' とか)という記号の意
 味も明確でない。

 これらについて考察するが、簡単のため、S、S'系の原点が一致する場合とする。なお、δ(d')は
 変分・解析力学や熱力学でも不明確なまま使用されている。



2.ベクトルの時間微分

 慣性系SのベクトルAは基本単位ベクトル(ex,ey,ez)を使って、
    A=Axex+Ayey+Azez      ・・・・・・・・・・・・・・②
 と書ける。このベクトルAは回転系の基本単位ベクトル(ex',ey',ez')を使って、
    A=A'=Ax'ex'+Ay'ey'+Az'ez'  ・・・・・・・・・・・・・・③
 となる。ここで、「'」は基底ベクトルを明示する記号となる。

 このベクトルの時間微分は
    dA/dt=dA'/dt={(dAx'/dt)ex'+(dAy'/dt)ey'+(dAz'/dt)ez'}
            +Ax'dex'/dt+Ay'dey'/dt+Az'dez'/dt・・・・・④
 となる。このとき、S'系の基本ベクトルの微分もS'系のベクトルとして
    dei'/dt=ωix'ex'+ωiy'ey'+ωiz'ez' (i=x,y,z) ・・・・・・・・・⑤
 と表される。このとき、直交関係 ei'・ej'=δij (i,j=x,y,z)を微分すると
 (dei'/dt)・ej'+ei'・(dej'/dt)=0 が得られので
    ωii'=0 , ωij'=-ωji'
 の関係がある。つまり、ωij' のうち、有効なパラメータは3つであり、ω'を
    ω'=ωyz'ex'+ωzx'ey'+ωxy'ez'     ・・・・・・・・・・・⑥
 と定義すると、⑤は
    dei'/dt=ωei' ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・⑦
 となる。これを④に入れると
    dA/dt=dA'/dt=δA'/δt+ωA'          ・・・・・⑧
 を得る。ここで
    δA'/δt=(dAx'/dt)ex'+(dAy'/dt)ey'+(dAz'/dt)ez'  ・・・・・⑨
 であり、δ/δtは(時間微分に関係した)演算子であり、決して時間微分ではない。その意味
 をみると、S'系に固定してみた(基本単位ベクトルが時間変化しないと考えた)時の時間微
 分
になっているこのため、時間微分のような演算子記号を使う意味がある

 ベクトルω'はS'系の基本単位ベクトルを使っているが、S系のものを使ってもかまわない。
 それをωとすると ω=ω'であるから、上のA=A'も使って、⑧を書き換えると
    dA/dt=dA'/dt=δA'/δt+ω×A          ・・・・・⑧'
 となる。ここで、定義⑨から δA'/δt→δA/δt とできないことを注意しておく。

 つぎに、ベクトルAは任意だから⑧において Aωとすると
    dω/dt=dω'/dt=δω'/δt+ωω'=δω'/δt ・・・・・・・・・⑩
 となり、よく知られた結果を得る。このときωが定ベクトルならω'もそうなる。以上で表題
 の関係式が導出過程とともに求められた。

3.ωの物理的な意味

 以上の議論は数学的な形式論のため、元々形式的なω'における基底ベクトルを変えたωが何
 を意味しているか今一つはっきりしない。そこで、簡単のため、ωが一定、AをS'系に固定さ
 れた(S'系で一定の)ベクトルとしたとき、AのS系での挙動を調べる。すると δA'/δt=0
 だから、⑧'は

    dA/dt=ω×A   ・・・・・・・⑩
 つぎに、図2のようにAωに平行な成分A₁と垂直な成分A₂に分ける。つまり、A=A₁+A₂、
 ω×A₁=0 だ
から、⑩は dA₁/dt+dA₂/dt=ω×A₂ となる。A₁の方向は変わらないので、
 dA₁/dt の方
向もωとなる。そして、ω×A₂の方向はωに垂直な成分だけだから、dA₁/dt=0
 である。


 結局、⑩は dA₂/dt=ω×A₂ となる。 すると、これを使って
    d(A₂・A₂)/dt=2A₂・dA₂/dt=2A₂・(ω×A₂)=2ω・(A₂×A₂)=0
 となり、A₂の大きさが変化しない。したがって、ベクトルA、すなわち、それが固定された
 S'系はS系に対して、角速度ωで回転していることがわかる。つまり、回転系S' におけるベ
 クトル
ω'の慣性系S系への射影ωはS系に対するS'系の角速度ベクトルとなり、逆もそうなる。

4.加速度の変換式

 回転座標の運動方程式を求めるため、加速度の変換をするとき⑧を使って A=r として2回
 微分すると
    dr/dt=δr'/δt+ωr'
    d2r/dt2=(d/dt)(δr'/δt+ωr')=(δ/δt)(δr'/δt+ωr')+ω'×(δr'/δt+ωr')
         =δ2r'/δt2ω'/δt×r'+ω'×δr'/δt+ω'×δr'/δt+ω'×(ωr')
         =δ2r'/δt2ω'/δt×r'+2ω'×δr'/δt+ω'×(ωr') ・・・・・⑪
 となる。ここで、δ/δt は、ベクトル(ex',ey',ez')を定数とみた微分なので、通常のベクトル
 微分公式を使った。最後に、⑨と前に述べたように右辺の基本ベクトルを変換すれば
    d2r/dt22r'/δt2+dω/dt×r+2ω×δr'/δt+ω×(ω×r) ・・・・・・⑪'
 となるが、異なる基底ベクトルが混在しているので⑧' 以上に注意が必要となる。

 簡単なのは、ωが一定の場合で、方向をz軸に取り、rがx-y平面にある場合である。このとき、
 dω/dt=0、 ω×(ω×r)=(ωr)ω2r=-ω2r となり、
    d2r/dt22r'/δt2+2ω×δr'/δt-ω2r ・・・・・・・・・・・・・⑫
 を得る。勿論、右辺の最後のrは基本ベクトルを変更してr' でもよい。

 以上をまとめるとベクトル式において A, dA/dt は基底べクトルを変更して A ⇔ A', dA/dt
 ⇔ dA'/dt としてもかまわないが、δA'/δt は基底ベクトルが固定されたものだから δA/δtに
 変更することはできない。 ただし、ωについては⑩が成立つ

以上


パノフスキーに始まる起電力の誤り

2019-03-22 20:50:45 | 書籍批判

1.はじめに

 パノフスキーの電磁気学に起電力に関する記述がある。これを鵜呑みにした説明が日本では広
 く拡散
している(外国は?)。しかし、元の説明も分かりにくく、誤っているため、同様に意
 味不明である


2.起電力について

 元々、起電力の定義は、ほとんど無いか明確さに欠ける説明しかない(なにしろ、電磁気学で
 は原初の電荷の定義すら、説明でしかない)。その中で、電気学会のものは「定義」として1
 ページ
に渡る正しい「説明」(電磁誘導以外のとき)をしている。ただし、パノフスキーの記
 号
を使っているため、起電力と電界の区別がハッキリせず、明確さに欠ける。

 マクグロウヒルの事典には、起電力は力で無いと書いてあり、これを鵜呑みにしたと思われる
 日本の教授もそう断言する。しかし、起電力の元は電荷を分離させる力である。悩んでいたと
 ころ、あるサイトでドストライクの定義を見つけた。

 これによると、起電力によって電荷qにかかる力をFとしたとき、その単位電荷当たりの仕事
    e=(1/q)∫F・ds ・・・・・①
 を起電力(の大きさ)という。しかし、電池の場合は、一般にFを求めることは難しいが電磁
 気学ではその詳細は不要である。つまり、起電力によって、電荷が両端に分離して、その電荷

 による電界が起電力の力と逆方向に発生して、釣り合っている(この場合、起電力は電界でな
 いから電池の内部(外部も)には電界が現れるていることが、明示されておらず理解を難しく
 している
)。

 そして、その発生した電界の電圧によって起電力を表せる。釣合いにより F=q(-E) 、①は
    e=(1/q)∫F・ds=(1/q)∫q(-E)・ds=-∫E・ds ・・・・②
 となる。これはどのような電池でも適用できる。ただ、抵抗内の電荷にも力は働くが、これを

 起電力とは言わず、多少の斟酌は必要となる。

 つぎに、電磁誘導の場合の起電力は勿論、ローレンツ力 F=q(E+v×B) しか無く①から
    e=∲(E+v×B)・ds ・・・・③
 となる。ただし、電磁誘導の場合、一般に静止導体内部では電界が0となるように電荷が分離
 して、起電力の電界は打ち消されて、別の場所に移動する場合があるため、周回積分とした。

 つまり、電磁誘導以外の起電力は電磁現象ではないから、直接、電磁界では表せないことに注
 意する必要がある。パノフスキーのように E' やEexなどの記号を使うと訳が分からなくなる。

 なお、起電力の記号は普通、e、ε、Vemf などを使うが、V、v(V=-dΦ/dt , v=-Ldi/dt)と
 書いたものを見かけることがある。これらの著者は起電力意味や電圧・電位差との違いを理解
 してい
ないと疑ってよい。

3.パノフスキーの誤り

 定常電流(電磁誘導が無視でき、静電界に準ずる)の場合として「7.2」項で
 [言明1]エネルギー消費 jEは回転(rot E?)が0であるような場では供給できないから、
     純粋に回転が0であるような電場では定常電流が存在しない

 電荷が分布した静電界のことを指すのかよくわからないが、下の抵抗と電池をつないだ簡単な
 回路では、上に述べたように、電池の内部に電界が在り、線積分の方向に対して、抵抗と電池
 では反対だから ∲E・ds=0 となり、電磁気学の数式上、何の問題も無く、抵抗でジュール熱が

 消費することは周知である。つまり、電流の原因が何であれ、E' を電磁気学の方程式に入れず
 とも普通の電磁界で現象を説明できる。



 [言明2]このような起電力の場が存在するものと仮定して、これをE' で表す。またEをポテン
     シャルから導き出せる電場とすると、伝導方程式(?)は
         j=σ(E+E')         (7.4)

     となる

 これもよくわからないが、電界をポテンシャルの成分Eと非静電場の成分E'に分けているようだ
 が(E=-∇φ-∂A/∂t と関係ある・・・?)、その後の議論は静電場でもE'を使用しており意味

 が不明である。電気学会の本はうまく説明しているが、分かりづらい(記号Eeは電界ではない。
 だから安易に E+Eeなどと書いてはいけない)。そして、砂川氏は完全に間違っている(この
 認識がほとんどだと思う)。

 大体、オームの法則は iE であって、抵抗導体が運動しても i=σ(E+v×B) である。勿論、
 磁界の純粋な時間変化による電磁誘導の要因は電界 Eに含まれている。

 パノフスキーは電界を2つの成分に分けているが、具体的な対象や分ける方法がはっきりせず、
 何の議論をしているかわからない。

 例えば、電池の起電力は電磁界以外の力によるものだから、電磁界の方程式に含めてはいけな
 い。電磁気はあくまでも電磁界によって、電荷に加わる力の関係式である


 もう一つ不明なのは、その後の9章の電磁誘導の式

        JR-ε=-dΦ/dt       (9.2)
 であり、「(9.2)は、既に使われてきたどのような関係からも導きだし得ない独立な実験法則で
 あることに注意しておこう」という。

 まじですか? 電磁気学には、まだ法則があったのか? 聞いたことがありませんよ!!
 具体的な説明も無いので、もはやコメントのしようもない。


4.最後に

 定年になってから、パノフスキーの電磁気学を知った。みると学生時代の座右の書の元ネタの
 1つだった(回路が運動するときの電磁誘導の解析に感動した)。

 電気回路においては、起電力、電圧、電位差の区別や電磁誘導については未だ不明確な記述が
 多い。だからキルヒホッフの電圧則がマクスウェルの式から明確に導かれていない原因なのだ
 が、
いずれ述べてみたい。

文献

 電磁気学上、パノフスキー、丸善
 電気磁気学、山田・桂井、電気学会
 理論電磁気学、砂川、紀伊国屋書店
 物理学大辞典 第2版、丸善㈱、P291 起電力、McGraw-Hill

以上


特殊相対性理論の前提に必須な議論(時間とは何か,1秒は同じか)

2019-03-21 11:23:42 | 特殊相対性理論
1.まえがき
 
 特殊相対性理論の議論では、時間と空間が混じり合ったり、別の慣性系から見ると短縮や時間遅
 れた
りする。このため、時間や長さとは何かについて、もう少し明確にする必要がある。例えば
 昔、「鏡に
映る像は何が逆になるか?」という議論があり、「あの時、もう少し真剣に考えてい
 たら・・・」と嘆い
た数学者の言葉を見た。

 この理論では、安易に結論を出す過程ばかりが目立つので、本質に迫れず誤った結論が主張され
 たりする(なにしろ、常識が通じず、まず確認もできない)。まれに、本質を突いたパラドック
 スによって理解が深まる(逆に、普通は確かめられないのでそれしか無い)。

 そして、物理の危機に対して悩みぬいた先哲たちの努力が忘れ去られてしまった。以下ではこれ
 らのことについて述べる。

2.時間とは何か


 時間について述べた書籍(一冊をかけて)は色々あるがほぼ夢想的な空論の羅列で物理とは何の
 関係
も無く、役にも立たないが、次のカルナップの一言で済む。
   「時間とは(基本物理)周期現象の周期の回数のことである

 つまり、時間とは物理現象のことであり、各座標、各慣性系の物理現象のことである。しかし、
 時間間隔は分かるが、出だしであ
る時刻は決まらない。そして、慣性系内の各座標で同一の時間
 を使うために、「同時性の定義」によ
って、これを定めている。

 このように、時間とは物理周期現象という認識によって、慣性系が異なった場合の時刻が座標に
 よっ
て変わるため、「各座標に置いた時計」(各座標における物理周期現象)という表現の意味
 が明確に
なる。
 
3.1秒は同じか?
 
 1秒は、どの座標でも、どの慣性系でも、いつまでたっても同じか?という疑問を持ったことが
 ある
が、確かめられない(基本を定めるのだから、比較する基本は無い)。つまり、特殊相対性
 原理によって、これらの時間(間隔)を使うと慣性系間で物理法則は同じになる事しか言えない。

 つまり、「1秒が同じか」という問いは無意味となる。そして
、これによって建設された物理に不
 具合が無いならば、良しとするだ
けである。
 
 そして、2つ並べた同じ時計に差の無い安定性のよい現象を基準に選ぶことだけである。
 
 以上の議論は、長さについても「1mは同じか?」など同様に議論できる。

4.光速度不変の原理について

 昨今は、光速度不変が無くても、座標変換から速度の限界が導かれるとか、この原理は電磁気
 学から
の定理であるなどの言明があり、信じている人も多い。数学的な形式論ではそうなるが
 物理としては
どうだろうか。

 前にも述べたように、理論順序としては、この理論は慣性系間の時空の性質を決定する理論で
 あり、
その上に力学や電磁気学が建設されている。対象として光も含んだ電磁気学から光速不
 変が導びかれ
ても当然の帰結である。
 
 下で述べるように、光速度不変は本質的であって、これにより時空が決定されて議論が始まる
 ことが
わかる。決して、後出しされるものではない。振り返れば、アインシュタインとポアン
 カレ、ローレ
ンツ達との決定的な差はこれを原理としたことにある(なお、アインシュタイン
 は疑惑の人である。しかし、他の剽窃者達とは違い、これだけでは終わらなかった)。すさま
 じきは、並
みいる巨人た
黙らせてしまった「光速度不変の原理」の破壊力にある

 そして、この非常識な原理以外は常識的で納得できるものであり、この理論の展開する上での
 支えになっ
ている?

5.一方向の光速度は「光速度不変」を仮定しないと測定できない

 あまり見かけないこの言明はライヘンバッハの書籍に書かれていた。光速度は行き帰りの速度
 が同
じとして、同じ時計で往復の速度が測られる(知らないので多分)。一方向の光速度を測
 ろうとすると、下記のように「光速度不変」を仮定した、同時の定義によって、時刻合わせを
 しなければならない。

6.2つの同時性の定義

 これについては、ポアンカレの定義(アインシュタインの論文で使われている)
   tB-tA=tA'-tB  ・・・・①
 と、メラーなどに載っている定義
   tB=tA+L/c   ・・・・②
 の2つがあり、この違いの意味が分からなかった。光速度は不変だからBからAに光が戻る時刻
 tA' は 
tA'=tB+L/c となり、これと②からL/cを消すと、①が得られる。つまり、同じもので
 あり、いずれの定義も
光速度不変が深くかかわっている。

 そして、ほとんどの書籍は①を提示しているにもかかわらず、説明も無く、実際に使われてい
 るのは②であることが、「同時性の定義」の意義を不明確にして、軽視される原
因となってい
 る
(同時性の定義を記述する書籍は理解しているのだろうか)。
 
7.同時性の定義に関する余話
 
 メラーは「2つの合わせた時計の一方を移動して、同時性の定義はできない」と述べている。
 特殊相対性理論の結果から運動する時計は遅れるからだと思われる。このことに違和感があり
 何十年も考えた結果、かまわないと思った。

 例えば、上の定義にしても任意の座標に鏡や時計などの機器を持っていけるわけがない。これ
 らはアインシュタインの十八番、思考実験である。とすれば、思考実験として、時計を任意の
 座標に移動したと考えればよい話で、移動速度による時間遅れなど無関係の話となる。

 ただし、このときの移動元と移動先の時刻の関係が曖昧である。つまり、時計を移動したとき
 時間が変わらないことを具体的に決めようとすると、上の①②になってしまう。
 
 
参考書
 
 物理学の哲学的基礎、ルドルフ・カルナップ、岩波
 相対性理論、メラー、みすず書房
 相対性理論の誕生、ハンス・ライヘンバッハ、講談社
 
以上

[2020/10/10] 「1秒は同じか?」の内容を整理した。

力または速度のローレンツ変換と √(1-u²/c²) の関係

2019-03-20 12:10:43 | 特殊相対性理論
1.はじめに
 
 力学のローレンツ変換は複雑である。ここで γ=1/√(1-v2/c2) 。まず力の変換式
   F’ =[(1/γ)F+(v/v2){(1-1/γ)(Fv)-(Fu)(v2/c2)}]/{1-(vu)/c2}      (1)
 
 であり、速度の変換式も
   u’x=(ux-v)/(1-vux/c2),  u’y=uy/{γ(1-vux/c2)}
   u’z=uz/{γ(1-vux/c2)}                                                      (2)
 となる。ベクトル表示すると
   u’ =(1/γ)[u+v{(γ-1)(vu)/v2 –γ}]/{1-(vu)/c2}                    (3)
 
 これらを何とか理解しようと、色んな所の記述をまとめてみた。
 
2.速度の変換式の考察

 まず、相対論的運動方程式は
   dp/dt=F ,  p=m0u/√(1-u2/c2)                                        (4)
 と表され、速度については u/√(1-u2/c2) という量が現れるので、(3)をこの量の変換式
 に書き直してみる。

 (3)を使っても良いはずだが、ローレンツ変換をベクトル表示すると
   x’ =x+v[(γ-1)(xv)/v2 -γt]  ,  t’ =γ{t-(xv)/c2}               (5)
 であり、よく知られた不変量の関係
        dt’√(1-u’2/c2)=dt√(1-u2/c2)                                          (6)

 を使うと簡単になる。すると
    u’/√(1-u’2/c2)=[u+v{(γ-1)(vu)/v2 –γ}]/√(1-u2/c2)            (7)
 となる。これをさらに、vに平行と垂直成分(up’, uv’) および (upuv)に分解すると
 
   up’/√(1-u’2/c2)=(up-v)γ/√(1-u2/c2)                                  (8)
   uv’/√(1-u’2/c2)=uv√(1-u2/c2)
 となって(3)式よりは見通しがよくなる。

 ここで、よく考えてみるとu/√(1-u2/c2) は運動量を静止質量で割ったp/m0に相当し、ローレ
 ンツ変換と同じ変換式になるから簡単の為、vをx方向に取ると(8)にm0を掛けてまとめると
   px’ =γ(px-m0 v/√(1-u2/c2)) , py’ =py , pz’ =pz
 を得る。ここで E=mc2=m0c2/√(1-u2/c2) を使うと、上の式は
   px’ =γ(px-vE/c2) , py’ =py , pz’ =pz
 となって、運動量の変換式と一致する。
 
3.力の変換式の考察
 
 力の変換式(1)はさらに混沌としているが(3)式と同様、{1-(vu)/c2}の項がある。このため、
 同様に考えて計算する。まず、(6)式のt’をtで微分して(4)式を代入すると
         {1-(vu)/c2}√(1-u’2/c2)= (1/γ)√(1-u2/c2)                       (9)
 を得る。これと(1)式から
     F’/√(1-u’2/c2)=[F+(v/v2){(γ-1)(Fv)-γ(Fu)(v2/c2)}]/√(1-u2/c2)    (10)
 
 これを同様にvに平行と垂直な成分に分解すると
       Fp’/√(1-u’2/c2)=[Fp+(Fu)(v/c2)]γ/√(1-u2/c2)                    (11)
       Fv’/√(1-u’2/c2)=F/√(1-u2/c2)                                       (12)
 
 となり、少しすっきりした式になるが、速度の変換と異なるのは (Fu) の項が成分に分離できず
 残ってしまう。
 
4.座標系に静止した物体に働く力の考察
 
 メラーに従って、力の変換式をもう少し簡略化する。S系で静止した物体をS’ 系から観た運動を
 考える。すると、u=0、u’ =-vでであり、これを(11)(12)式に代入すると、
 
       Fp’/√(1-v2/c2)=Fpγ , すなわち  Fp’ =Fp                              (13)
       Fv’/√(1-v2/c2)=F   , すなわち  Fv’ =(1/γ)Fv                     (14)
 
 となり、静止系の力を運動系から観ると運動方向に垂直成分は(1/γ)倍となる。ただし、次の瞬間
 には運動が始まってしまうので、これらの条件は崩れてしまう。
 
以上