特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

log[x²+x+1] (2-x)<0 の不等式を解く

2022-04-12 00:03:04 | 不等式

xを実数とするとき、 不等式
   logx2+x+1 (2-x) < 0
を解く面白い問題があった。0=loga 1 だから
   logx2+x+1 (2-x) < loga 1・・・・・①
と書くこともできる。

a=x2+x+1 とおくと、まず、底の条件から
   a≠0, 1
   a=(x+1/2)2+3/4≧3/4・・・・・②
である。また真数は正だから
 2-x > 0 → x < 2・・・・・・③

1. a > 1 のとき

 ②から x < -1 or x >0 となる。また、loga  は単調増加だから①により
   2-x < 1 → x > 1
 となり、③と合わせて
   1 < x < 2
 が解となる。

2. (3/4)≦a < 1 のとき

 ②から
   -1 < x < 0・・・・・・④
 となるが③は満たされているので④が解となる。

以上


(a³+b³+c³-3abc)²≦(a²+b²+c²)³ を示す。

2021-09-17 08:25:07 | 不等式

1.a,b,c,d が実数の時、不等式
   (a³+b³+c³-3abc)²≦(a²+b²+c²)³
 を示す問題があった。

   a³+b³+c³-3abc=(a+b+c)(a²+b²+c²-ab-bc-ca)
 である。すると
   A=(a²+b²+c²)³-(a³+b³+c³-3abc)²
    =(a²+b²+c²)³-(a+b+c)²(a²+b²+c²-ab-bc-ca)²

 このとき
   (a+b+c)²=a²+b²+c²+2(ab+bc+ca)
 だから、
   A=(a²+b²+c²)³-{a²+b²+c²+2(ab+bc+ca)}(a²+b²+c²-ab-bc-ca)²

 ここで
   x=ab+bc+ca , y=a²+b²+c²
 とおくと
   A=y³-(y+2x)(y-x)²=y³-(y+2x)(y²+x²-2xy)=y³-(y³+x²y-2xy²+2xy²+2x³-4x²y)
    =-(-3x²y+2x³)=x²(3y-2x)

 ここで
   3y-2x=3(a²+b²+c²)-2(ab+bc+ca)
      =(a²+b²+c²)+(a-b)²+(b-c)²+(c-a)²
 だから
   A=(ab+bc+ca)²{(a²+b²+c²)+(a-b)²+(b-c)²+(c-a)²}≧0
 となる。

 等号成立は、ab+bc+ca=0 (a=b=c=0 を含む)のとき。


2.a,b,c,d > 0 , abcd=1 のとき、不等式
   (a²+1)(b²+1)(c²+1)(d²+1)≧(a+b+c+d)²
 が示されていた。

   A=(a²+1)(b²+1)(c²+1)(d²+1)-(a+b+c+d)²
    =(abcd)²+{ (abc)²+(bcd)²+(cda)²+(dab)² }

      +{ (ab)²+(bc)²+(cd)²+(da)²+(ac)²+(ad)²+(bd)² }+(a²+b²+c²+d²)+1
        -(a²+b²+c²+d²)-2(ab+bc+cd+da+ac+bd)
 abcd=1 から
   A=2+(1/d²+1/a²+1/b²+1/c²)+{ (ab)²+(bc)²+(cd)²+(da)²+(ac)²+(bd)² }
     -2(ab+bc+cd+da+ac+bd)
    =(1/a²+1/b²+1/c²+1/d²)+(ab-1)²+(bc-1)²+(cd-1)²+(da-1)²+(ac-1)²+(bd-1)²-4
     ≧4{ 1/(a²b²c²d²) }¹/⁴-4=0  (AM-GM不等式から)

 等号成立は、a=b=c=d のとき、つまり、a=b=c=d=1 のとき。

3.a,b,c,d > 0 , abcd=1 のとき、不等式
   1/(a+1)²+1/(b+1)²+1/(c+1)²+1/(d+1)²≧1
 が示されていた。

 まず、
   1/(a+1)²+1/(b+1)²-1/(ab+1)={ (ab-1)²+ab(a-b)² }/{ (a+1)²(b+1)²(ab+1) }≧0
 なので

   1/(a+1)²+1/(b+1)²≧1/(ab+1)
 同様に
   1/(c+1)²+1/(d+1)²≧1/(cd+1)
 すると
   1/(a+1)²+1/(b+1)²+1/(c+1)²+1/(d+1)²≧1/(ab+1)+1/(cd+1)
    =(ab+cd+2)/(abcd+ab+cd+1)=1  (abcd=1 から)

 したがって、与式が証明された。

 等号は abcd=1 から、ab≠0 なので ab=1 かつ a=b のとき、つまり、a=b=1 。
 さらに cd≠0 なので、cd=1 かつ c=d のとき、つまり a=b=1 となる。まとめて

   a=b=c=d=1
 のときとなる。 

以上


不等式 (1+rⁿ⁻¹)/2≧(1+r+r²+…+rⁿ⁻¹}/n (r>0) などの証明

2021-04-01 12:48:48 | 不等式

福井大学の入試問題があった。面白いので紹介する。

問題

⑴ nは2以上の自然数、r>0とき、
 (1+rⁿ⁻¹)/2≧(1+r+r²+…+rⁿ⁻¹}/n
 を示せ。

⑵ 等差数列 (a[n]) (n≧1) と、公比が正の等比数列 (b[n]) (n≧1) において、a₁=b₁、
 a[n]=b[n]、a₁ > 0とすると
   a₁+a₂+…+a[n]≧b₁+b₂+…+b[n]
 を示せ。

証明

(1)
 n(1+rⁿ⁻¹)≧2(1+r・・・+rⁿ⁻¹) を示せば良い。
 n=2 のときは自明。

 nのとき、成立を仮定し、n+1の時を考える。
  (n+1)(1+rⁿ)=n(1+rⁿ)+1+rⁿ=n(1+rⁿ⁻¹)+n(rⁿ-rⁿ⁻¹)+1+rⁿ
 nのときの仮定から
  (n+1)(1+rⁿ)≧2(1+r・・・+rⁿ⁻¹)+n(rⁿ-rⁿ⁻¹)+1+rⁿ
       =2(1+r・・・+rⁿ)+n(rⁿ-rⁿ⁻¹)+1-rⁿ
 したがって、n(rⁿ-rⁿ⁻¹)+1-rⁿ≧0 を示せばよい。

 n(rⁿ-rⁿ⁻¹)+1-rⁿ=nrⁿ⁻¹(r-1)+1-rⁿ
  =(1-r){-nrⁿ⁻¹+(1+r+・・・+rⁿ⁻²+rⁿ⁻¹)}
  =(1-r){(1-rⁿ⁻¹)+r(1-rⁿ⁻²)+・・・+rⁿ⁻²(1-r)+0}
  =(1-r)²{(1+r+・・・+rⁿ⁻²)+r(1+・・・+rⁿ⁻³)+・・・+rⁿ⁻²}
  =(1-r)²{1+2r+3r³+・・・+(n-1)rⁿ⁻²}
 r>0だから、右辺は0以上で、命題は帰納法により証明された。

(2)
 na₁+{n(n-1)/2}a≧a₁(1+r+・・・+rⁿ⁻¹)
 を示せばよい。

 a[n]=b[n] から
  a₁+(n-1)a=a₁rⁿ⁻¹
 を使って
  na₁+{n(n-1)/2}a=na₁+(n/2)(a₁rⁿ⁻¹-a₁)=(a₁n/2)(2+rⁿ⁻¹-1)
   =(a₁n/2)(1+rⁿ⁻¹)


 したがって、a₁>0 なので与式は
  (a₁n/2)(1+rⁿ⁻¹)≧a₁(1+r+・・・+rⁿ⁻¹)
   → (1+rⁿ⁻¹)/2≧(1+r+・・・+rⁿ⁻¹)/n
 となる。これは(1)で証明したので命題は成立。

 等号成立はいづれも r=1 の場合となることは自明。

以上


π^x-e^x-x+1>0 の証明

2020-05-29 11:28:01 | 不等式

1. まえがき

 πx-ex-x+1>0 を示す問題があった。極値などの計算が困難なので、面倒だった。



2. 計算


 極値の計算ではなく、間接的な評価法をとり、x≦0 , 0<x≦2 , 2≦x の3つの場合に分
 けて検討した。
    f(x)=πx-ex-x+1
 とおく。

 2.1 x≦0 のとき

  πx>0 , -x≧0 , ex≦1 だから
    f(x)>-ex+1≧0

 2.2 x>0 のとき

  f>0 を示せば良い。このとき、上の範囲と違って、f''>0 となるので、以下のよう
  に凸関数の性質で評価できる。 

  logπ≒1.14 (>1)だから、x>0 で、f''=(logπ)²πx-exx-ex>0 なので、テーラー展開
  から
    f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+f''(c)(x-a)²>f(a)+f'(a)(x-a)・・・・・①
  を得る。

  (1) 0<x≦2 のとき

   f'=(logπ)πx-ex-1 だから、①で a=1 とすると、x-1≦1 なので
     f(1)=π-e , f'(1)=(logπ)π-e-1 ( <0 )
     f>π-e+{ (logπ)π-e-1 }(x-1)≧π-e+{ (logπ)π-e-1 }・1
      =π-2e-1+(logπ)π>3.10-2・2.72-1+1.10・3.10>0.07>0

  (2) 2≦x のとき

   同様に、①で a=2 とすると、x≧2 なので
     f(2)=π²-e²-1 , f'(2)=(logπ)π²-e²-1 ( >0 )
     f>π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}x≧π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}・2
       =π²-3e²-3+2(logπ)π²>3.1²-3・2.8²-3+2・1.1・3.1²>3.27>0

3. 結果

 以上のことから、すべての区間で f(x)=πx-ex-x+1>0 となる。

以上

[2020/5/30] 2.1項の論理を簡潔にした。

[2021/5/14] 追記
・問題
 x>0 のとき、x≧exp{(x-1)/x} の成立を証明せよ。



 f(x)=x-exp(1-1/x)≧0 (x>0) を示せば良い。

 すべての y につき、e^y≧1+y である(微分するとすぐわかる)。すると
  exp((1/x)-1)≧1+((1/x)-1)=1/x

 x>0 だから
  x≧1/exp((1/x)-1)=exp(1-(1/x)) → -exp(1-(1/x)) ≧ -x
 すると
  f(x)=x-exp(1-(1/x))≧x-x=0
 となり、与式が証明された。

 この関係を微分で評価しようとすると困難となる。

以上


複素数a,bに関する不等式 |(|a|-|b|)/(1-|ab|)|≦|(a-b)/(1-a*b)

2019-03-03 17:24:51 | 不等式

1.はじめに

 複素数a,bについて、|a|≦1,|b|≦1 としたとき、
  |(|a|-|b|)/(1-|ab|)|≦|(a-b)/(1-a*b)|・・・・①
 を証明せよという問題があった。ここで、「*」は複素共役であり、当然、
  |ab|≠1 かつ a*b≠1・・・・②
 とする。

2.計算

 z,w を複素数とすると |z|≦|w|⇔|z|²≦|w|² ・・・③
 である( |w|²-|z|²=(|w|+|z|)(|w|-|z|) だから)。

 a=(a₁,a₂) , b=(b₁,b₂) とすると
  (|a|-|b|)²=|a|²+|b|²-2|ab|,  (1-|ab|)²=1+|ab|²-2|ab|

 |z|²=zz* を使って
  |a-b|²=(a-b)(a-b)*=(a-b)(a*-b*)=|a|²+|b|²-(ab*+a*b) = |a|²+|b|²-2(a₁b₁+a₂b₂)
  |1-a*b|²=(1-a*b)(1-a*b)*=(1-a*b)(1-ab*) = 1+|ab|²-(ab*+a*b)=1+|ab|²-2(a₁b₁+a₂b₂)
 ③より、①を2乗して、上の結果を使うと
 (|a|²+|b|²-2|ab|)/(1+|ab|²-2|ab|) ≦ {|a|²+|b|²-2(a₁b₁+a₂b₂)}/{1+|ab|²-2(a₁b₁+a₂b₂)}
     ・・・・④
 を証明すればよい。

 ここで、x,y,u,v を実数として
  x=|a|²+|b|², y=1+|ab|², u=2|ab|, v=2(a₁b₁+a₂b₂)
 とおくと④は
  (x-u)/(y-u)≦(x-v)/(y-v)・・・・⑤
 となる。元の計算から。⑤の各項は元々、実数の2乗だから、0以上の数であり、(x-u),(x-v)≧0
 となり、また、②から、(y-u),(y-v)>0 となる。だから、⑤の分母を払って、移項計算すると
  (y-x)(u-v)≧0・・・⑥
 となり、これを証明すればよい。まず、

  y-x=1+|ab|²-(|a|²+|b|²)=(1-|a|²)(1-|b|²)≧0
 である。ここで、|a|,|b|≦1 を使った。つぎに

  u=2|ab|=2√{(a₁²+a₂²)(b₁²+b₂²)} , v=2(a₁b₁+a₂b₂)

 だから、シュワルツの不等式によって
  u≧v つまり、u-v≧0・・・・⑦

 となって、⑥が証明された。後は逆順に辿ると⑤、④、そして③を使って、①が証明された。

3. 補足

 なお、与式の等号成立は⑦から u=v となり、この式を展開するとシュワルツの不等式の条件から、
 a=tb (tは0以上の任意の実数)の時、あるいは⑥の y=x のとき、つまり、 |a|=1 または |b|=1
 の時(つまり、a₁²+a₂²=1 または b₁²+b₂²=1 )である。

 さらに、①において、右辺分母の (1-a*b) は (1-ab*) でもよい。
 さらに、当然、②は
  (a₁²+a₂²)(b₁²+b₂²)≠1 かつ (a₁b₁+a₂b₂≠1 または a₁b₂≠a₂b₁)
 となる。

以上