xを実数とするとき、 不等式
logx2+x+1 (2-x) < 0
を解く面白い問題があった。0=loga 1 だから
logx2+x+1 (2-x) < loga 1・・・・・①
と書くこともできる。
a=x2+x+1 とおくと、まず、底の条件から
a≠0, 1
a=(x+1/2)2+3/4≧3/4・・・・・②
である。また真数は正だから
2-x > 0 → x < 2・・・・・・③
1. a > 1 のとき
②から x < -1 or x >0 となる。また、loga は単調増加だから①により
2-x < 1 → x > 1
となり、③と合わせて
1 < x < 2
が解となる。
2. (3/4)≦a < 1 のとき
②から
-1 < x < 0・・・・・・④
となるが③は満たされているので④が解となる。
以上
1.a,b,c,d が実数の時、不等式
(a³+b³+c³-3abc)²≦(a²+b²+c²)³
を示す問題があった。
a³+b³+c³-3abc=(a+b+c)(a²+b²+c²-ab-bc-ca)
である。すると
A=(a²+b²+c²)³-(a³+b³+c³-3abc)²
=(a²+b²+c²)³-(a+b+c)²(a²+b²+c²-ab-bc-ca)²
このとき
(a+b+c)²=a²+b²+c²+2(ab+bc+ca)
だから、
A=(a²+b²+c²)³-{a²+b²+c²+2(ab+bc+ca)}(a²+b²+c²-ab-bc-ca)²
ここで
x=ab+bc+ca , y=a²+b²+c²
とおくと
A=y³-(y+2x)(y-x)²=y³-(y+2x)(y²+x²-2xy)=y³-(y³+x²y-2xy²+2xy²+2x³-4x²y)
=-(-3x²y+2x³)=x²(3y-2x)
ここで
3y-2x=3(a²+b²+c²)-2(ab+bc+ca)
=(a²+b²+c²)+(a-b)²+(b-c)²+(c-a)²
だから
A=(ab+bc+ca)²{(a²+b²+c²)+(a-b)²+(b-c)²+(c-a)²}≧0
となる。
等号成立は、ab+bc+ca=0 (a=b=c=0 を含む)のとき。
2.a,b,c,d > 0 , abcd=1 のとき、不等式
(a²+1)(b²+1)(c²+1)(d²+1)≧(a+b+c+d)²
が示されていた。
A=(a²+1)(b²+1)(c²+1)(d²+1)-(a+b+c+d)²
=(abcd)²+{ (abc)²+(bcd)²+(cda)²+(dab)² }
+{ (ab)²+(bc)²+(cd)²+(da)²+(ac)²+(ad)²+(bd)² }+(a²+b²+c²+d²)+1
-(a²+b²+c²+d²)-2(ab+bc+cd+da+ac+bd)
abcd=1 から
A=2+(1/d²+1/a²+1/b²+1/c²)+{ (ab)²+(bc)²+(cd)²+(da)²+(ac)²+(bd)² }
-2(ab+bc+cd+da+ac+bd)
=(1/a²+1/b²+1/c²+1/d²)+(ab-1)²+(bc-1)²+(cd-1)²+(da-1)²+(ac-1)²+(bd-1)²-4
≧4{ 1/(a²b²c²d²) }¹/⁴-4=0 (AM-GM不等式から)
等号成立は、a=b=c=d のとき、つまり、a=b=c=d=1 のとき。
3.a,b,c,d > 0 , abcd=1 のとき、不等式
1/(a+1)²+1/(b+1)²+1/(c+1)²+1/(d+1)²≧1
が示されていた。
まず、
1/(a+1)²+1/(b+1)²-1/(ab+1)={ (ab-1)²+ab(a-b)² }/{ (a+1)²(b+1)²(ab+1) }≧0
なので
1/(a+1)²+1/(b+1)²≧1/(ab+1)
同様に
1/(c+1)²+1/(d+1)²≧1/(cd+1)
すると
1/(a+1)²+1/(b+1)²+1/(c+1)²+1/(d+1)²≧1/(ab+1)+1/(cd+1)
=(ab+cd+2)/(abcd+ab+cd+1)=1 (abcd=1 から)
したがって、与式が証明された。
等号は abcd=1 から、ab≠0 なので ab=1 かつ a=b のとき、つまり、a=b=1 。
さらに cd≠0 なので、cd=1 かつ c=d のとき、つまり a=b=1 となる。まとめて
a=b=c=d=1
のときとなる。
以上
1. まえがき
πx-ex-x+1>0 を示す問題があった。極値などの計算が困難なので、面倒だった。
2. 計算
極値の計算ではなく、間接的な評価法をとり、x≦0 , 0<x≦2 , 2≦x の3つの場合に分
けて検討した。
f(x)=πx-ex-x+1
とおく。
2.1 x≦0 のとき
πx>0 , -x≧0 , ex≦1 だから
f(x)>-ex+1≧0
2.2 x>0 のとき
f>0 を示せば良い。このとき、上の範囲と違って、f''>0 となるので、以下のよう
に凸関数の性質で評価できる。
logπ≒1.14 (>1)だから、x>0 で、f''=(logπ)²πx-ex>πx-ex>0 なので、テーラー展開
から
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+f''(c)(x-a)²>f(a)+f'(a)(x-a)・・・・・①
を得る。
(1) 0<x≦2 のとき
f'=(logπ)πx-ex-1 だから、①で a=1 とすると、x-1≦1 なので
f(1)=π-e , f'(1)=(logπ)π-e-1 ( <0 )
f>π-e+{ (logπ)π-e-1 }(x-1)≧π-e+{ (logπ)π-e-1 }・1
=π-2e-1+(logπ)π>3.10-2・2.72-1+1.10・3.10>0.07>0
(2) 2≦x のとき
同様に、①で a=2 とすると、x≧2 なので
f(2)=π²-e²-1 , f'(2)=(logπ)π²-e²-1 ( >0 )
f>π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}x≧π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}・2
=π²-3e²-3+2(logπ)π²>3.1²-3・2.8²-3+2・1.1・3.1²>3.27>0
3. 結果
以上のことから、すべての区間で f(x)=πx-ex-x+1>0 となる。
以上
[2020/5/30] 2.1項の論理を簡潔にした。
[2021/5/14] 追記
・問題
x>0 のとき、x≧exp{(x-1)/x} の成立を証明せよ。
f(x)=x-exp(1-1/x)≧0 (x>0) を示せば良い。
すべての y につき、e^y≧1+y である(微分するとすぐわかる)。すると
exp((1/x)-1)≧1+((1/x)-1)=1/x
x>0 だから
x≧1/exp((1/x)-1)=exp(1-(1/x)) → -exp(1-(1/x)) ≧ -x
すると
f(x)=x-exp(1-(1/x))≧x-x=0
となり、与式が証明された。
この関係を微分で評価しようとすると困難となる。
以上