1. まえがき
a²+b²=c² を満たす自然数(ピタゴラス数)の性質について、次のような面白い問題があった。
検索にかかるのでよく知られた問題のようです。なお、この式はa,bに対して対称なので、a,bを
入替えても変わらない。
(1) a,b の内、一方が奇数で他方が偶数である。したがって、cは奇数となる。
(2) a,b の内、いずれか1つのみ3の倍数で、cは3の倍数ではない。
(3) a,b の内、いずれか1つのみ4の倍数で、cは4の倍数ではない。
(4) a,b,c の内、いずれかは5の倍数
2. 計算
データとして
(3,4,5), (5,12,13), (8,15,17), (7,24,25), (20,21,29), (9,40,41), (12,35,37)
(11,60,61), (28,45,53), (33,56,65), (16,63,65)
などがあり、上の命題は満たされている。
3. 証明
(1) 準備
(奇数)²⇔奇数、(偶数)²⇔偶数 という事実は簡単にわかる。このような問題の定石として、
a,b,cは既約とします。
まず、a,bともに偶数なら、上のことから、cも偶数なので、2で割れ、既約という条件に反
し、a,bのいずれかは奇数となります。しかし、a,b共に奇数という可能性が残っている。
a,bともに奇数なら、cは偶数になる。そこで、自然数x,y,zを使って、a=2x+1, b=2y+1,
c=2z となる。すると
4(x²+x+y²+y)+2=4z² → 2(x²+x+y²+y)+1=2z²
となり、左辺は奇数、右辺は偶数で矛盾。
ゆえに、可能性としては、a,bは偶数と奇数の組でcは奇数。
(2) 3の倍数を基準にすると任意の自然数nは
n=3k, 3k±1
と表される。すると、
n²=3(3k²), 3(3k²±2k)+1
となり、 n²を3で割ると余りは 0,1 で、nが3の倍数でなければ、n²の余りは「1」のみで
ある。
したがって、a,bが共に3の倍数でないと仮定すると、a²,b² の余りは、共に1で、その和
の余りは2となるが、c²の3の余りは、0,1のみだから矛盾。
さらに、a,bが共に3の倍数ならa²+b²もc²も9の倍数になり、cは3の倍数になるが、a,b,c
は既約という設定に矛盾する。
ゆえに、a,bの1つのみが3の倍数であれば、a²+b²のあまりは1で、cが3の倍数でなけれ
ばc²の余りも1となって、命題が成立。
(3) (1)から
a=2k, b=2m+1, c=2l+1
と表せる。すると
a²=c²-b² → 4k²=4m(m+1)-4l(l+1) → k²=m(m+1)-l(l+1)
となる。つまり、m(m+1)などは偶数だからk²は偶数、したがって、kも偶数。すると
a=2kは4の倍数となる。当然、b,cは奇数で4の倍数ではない。
(4) 5の倍数を基準にすると任意の自然数nは
n=5k, 5k±1, 5k±2
と表される。すると、
n²=5(5k²), 5(5k²±2k)+1, 5(5k²±4k)+4
となり、n² を5で割ると余りは 0,1,4 で、nが5の倍数でなければ、余りは「1,4」のみで
ある。
したがって、a,b,c がすべて5の倍数でないとすると、a²,b²の5の余りは共に「1,4」で、
a²+b²の余りは「0,2,3」となるが、c²の余りは、「1,4」のみだから矛盾。
ゆえに、a,b,cのいずれかは5の倍数。
4. あとがき
以上のことは、あちこちに載っているので周知の事実らしい。なお、ピタゴラス数はつぎの
一般解が知られている。
(m²-n²)²+(2mn)²=(m²+n²)²・・・・・・・・(4.1)
これを証明する。ここでの注意は、既約と1項の(1)から、m,nの内、一方は偶数、他方は奇
数である。
上の結果からa,cを奇数、bを偶数として議論しても良い。
b²=c²-a²=(c+a)(c-a)=4{(c+a)/2}{(c-a)/2}・・・・・・(4.2)
となる。ここで、(c+a), (c-a) は偶数となるから、このように変形した。このとき、
(c+a)/2, (c-a)/2 が共通因子dを持つと仮定すると、それらの和と差も共通因子dを持つが
(c+a)/2+(c-a)/=c , (c+a)/2-(c-a)/2=a
となり、a,cは既約で共通因子を持たないから、矛盾。結局、これらは共通因子をもたない。
したがって、(4.2)の右辺が平方数になるには (c+a)/2=m², (c-a)/2=n² となる必要が
ある。すると
b=√[4{(c+a)/2}{(c-a)/2}]=2mn, a=m²-n², c=m²+n²
となり、(4.1)を得る。
以上
[2023/11/10] (2),(3)の命題の拡張と(3)の誤りを他のサイトの方法に訂正。
1. まえがき
図のように、壁と楔の釣合の問題があった。
2. 問題
図のように壁に接した質量Mの物体に向かって、床に置かれた質量mの楔を押し込む場合を考える。
この場合の最小の力Fを求める。
図ように、M,mの重力 Mg,mg、押込む力F、各面の抗力N₁,N₂.N₃、各面の摩擦S₁,S₂,S₃だけの
水平と垂直成分のつり合いだけを考えればよい。ここで
S₁=μ₁N₁, S₂=μ₂N₂, S₃=μ₃N₃
である。
1.1 mのつり合い
水平 F=S₁+N₂sinθ+S₂cosθ=μ₁N₁+N₂sinθ+μ₂N₂cosθ=μ₁N₁+(sinθ+μ₂cosθ)N₂
垂直 mg=N₁-N₂cosθ+S₂sinθ=N₁-N₂cosθ+μ₂N₂sinθ=N₁-(cosθ-μ₂sinθ)N₂
これから、N₁を消して
F=μ₁{mg+(cosθ-μ₂sinθ)N₂}+(sinθ+μ₂cosθ)N₂
=μ₁mg+{μ₁(cosθ-μ₂sinθ)+(sinθ+μ₂cosθ)}N₂
=μ₁mg+{(μ₁+μ₂)cosθ+(1-μ₂)sinθ}N₂ ・・・・①
1.2 Mのつり合い
Mが上に動くためには
水平 N₃=N₂sinθ+S₂cosθ=N₂sinθ+μ₂N₂cosθ=(sinθ+μ₂cosθ)N₂
垂直 Mg<N₂cosθ-S₂sinθ-S₃=N₂cosθ-μ₂N₂sinθ-μ₃N₃=(cosθ-μ₂sinθ)N₂-μ₃N₃
これからN₃を消してN₂を求めると
N₂>Mg/{cosθ-μ₂sinθ-μ₃(sinθ+μ₂cosθ)}
=Mg/{(1-μ₂μ₃)cosθ-(μ₂+μ₃)sinθ}・・・・・②
①②から
F>μ₁mg+{(μ₁+μ₂)cosθ+(1-μ₂)sinθ}Mg/{(1-μ₂μ₃)cosθ-(μ₂+μ₃)sinθ}・・・・③
となる。ここで、③の分母は
(1-μ₂μ₃)cosθ-(μ₂+μ₃)sinθ>0 ・・・・④
の必要がある。つまり、
tanθ<(1-μ₂μ₃) /(μ₂+μ₃) ・・・・・⑤
となる。もしこれを満たさなければ、いかなるFでも、Mを上に押し上げる力は発生せずMは固
定されたままとなる(概略、S₂の垂直成分がN₂のものより大きくなる)。
1.3 摩擦が無いとき(μ₁=μ₂=μ₃=0)
F>tanθMg
となる。このとき、⑤は無意味だが、元の➃が常に成り立っている。
1.4 θ=0゜のとき
③からF>μ₁mg+{(μ₁+μ₂)/(1-μ₂μ₃)}Mg となるが、これは間違いである。つまり、M,mの接
触面は水平なので、上下方向の移動は無い。つまり、S₃=0となり、②は
Mg=N₂cosθ-S₂sinθ+0=N₂
となる。①にいれると
F>μ₁mg+(μ₁+μ₂)Mg
となる。
なお、各面での静止摩擦条件は一部が破壊されてもすべての面で破壊されなければ静止しているの
で静止摩擦係数を使ってよい。
以上
1. まえがき
不定形の極限を求める際はロピタルの定理が使われる。ところがオーダーが高くなったり複雑
な式になると、微分式が複雑になって、面倒なうえに計算間違いの可能性が大になる。
そこで、この計算を多少簡便にする手順を述べるとともに、ランダウの o記号による方法も併
記する。
2. 計算例
その方法は、微小項部分を収束するような塊に分離し、次数を下げ、なるべく簡単な塊に分離
する。その手順を以下の例によって紹介する。
以下の記述は簡便のため lim を略し、ロピタルの定理を使った時は「 ⇒ 」で表し、極限は
「→」で表す。なお、o記号の定義から、m≧n のとき
o(x^m)/xⁿ → 0 (x→0)、たとえば o(x³)/x³→0 , o(x³)/x²→0
を使った。
2.1 lim[x→0] sin x/x=1
よく知られたもっとも簡単な例でロピタルを使うと
lim[x→0] sin x/x = lim[x→0] cos x/1=1
2.2 lim[x→0] {4(1-cos x)²-x⁴}/(x-sin x)²=-6
(1) ロピタルの定理
A={4(1-cos x)²-x⁴}/(x-sin x)²
の極限を求める。半角の公式 (1-cos x)=2sin²(x/2) を使って
A={16sin⁴(x/2)-x⁴}/(x-sinx)²={4sin²(x/2)-x²}{4sin²(x/2)+x²}/(x-sinx)²
=x²{4sin²(x/2)-x²}{sin²(x/2)/(x/2)²+1}/(x-sinx)²
ここで、{sin²(x/2)/(x/2)²+1}→2 だから
A → 2x²{4sin²(x/2)-x²}/(x-sinx)²=2x²{2sin(x/2)-x}{2sin(x/2)+x}/(x-sinx)²
=2x³{2sin(x/2)-x}{sin(x/2)/(x/2)+1}/(x-sinx)²
ここで、{sin(x/2)/(x/2)+1}→2 だから
A → 4x³{2sin(x/2)-x}/(x-sinx)²
={4x³/(x-sinx)} {(2sin(x/2)-x)/(x-sinx)}・・・①
つぎに
B={4x³/(x-sinx)} ⇒ 12x²/(1-cosx) ⇒ 24x/sinx→24
C={(2sin(x/2)-x)/(x-sinx)} ⇒ (cos(x/2)-1)/(1-cosx) ⇒ -(1/2)sin(x/2)/sinx
⇒ -(1/4)cos(x/2)/cosx → -1/4
となるので、①に入れて
A → BC → 24・(-1/4)=-6
(2) o記号
cos x=1-x²/2+x⁴/24+o(x⁵) , sin x=x-x³/6+o(x⁴)
B={4(1-cos x)²-x⁴}=4(x²/2-x⁴/24+o(x⁵))²-x⁴=4x⁴/4-x⁶/6+o(x⁷)-x⁴
=-x⁶/6+o(x⁷)
C=(x-sin x)²=(x³/6+o(x⁴))²=x⁶/36+o(x⁷)
となるので
A=B/C={-x⁶/6+o(x⁷)}/{x⁶/36+o(x⁷)}
={-1/6+o(x⁷)/x⁶}/{1/36+o(x⁷)/x⁶} → -36/6=-6
2.3 lim[x→0] {tan²x-(log(1+x))²}/(tan⁻¹x-sin x)
(1) ロピタルの定理
A={tan²x-(log(1+x))²}/(tan⁻¹x-sin x)
={tan x-log(1+x)}・{tan x+log(1+x)}/(tan⁻¹x-sin x)
ここで、各関数のテーラー展開を考えると、{tan x-log(1+x)}の項は、x²のオーダで
あり、{tan x+log(1+x)}の項は、xのオーダ、分母はx³のオーダであるから、微分が
一番簡単な x³ を使って、次のように変形する。
A=[{tan x-log(1+x)}/x²]・[{tan x+log(1+x)}/x]/[(tan⁻¹x-sin x)/x³]
B=[{tan x-log(1+x)}/x²] ⇒ {1/cos²x-1/(1+x)}/(2x)
⇒ {-2(-sin x)/cos³x+1/(1+x)²}/(2) → {0+1}/2= 1/2
C=[{tan x+log(1+x)}/x] ⇒ {1/cos²x+1/(1+x)}/1 → 1+1=2
D=[(tan⁻¹x-sin x)/x³] ⇒ {1/(1+x²)-cos x}/(3x²)
⇒ {-2x/(1+x²)³+sin x}/(6x)={-2/(1+x²)³+(sin x)/x}/(6)
(ここはxで割っただけ)
sin x/x→1はよく知られているので
D=(-2+1)/6=-1/6
以上の結果から
A → BC/D → (1/2)(2)/(-1/6)=-6
(2) o記号
tan x=x+x³/6+o(x⁴)
log(1+x)=x-x²/2+x³/3+o(x³)
tan⁻¹x=x-x³/3+o(x⁴)
sin x=x-x³/6+o(x⁴)
だから
b=tan²x-(log(1+x))²=(x+x³/6+o(x⁴))²-(x-x²/2+x³/3+o(x³))²
={x²+o(x⁴)}-{(x²-x³+o(x⁴)}=x³+o(x⁴)
c=tan⁻¹x-sin x={x-x³/3+o(x⁴)}-{x-x³/6+o(x⁴)}=-x³/6+o(x⁴)
A=b/c={x³+o(x⁴)}/{-x³/6+o(x⁴)}={1+o(x⁴)/x³}/{-1/6+o(x⁴)/x³} → -6
となる。
2.4 lim[x→0] (1/sin x-1/x)(1/sin x+1/x)
(1) ロピタルの定理
A=(1/sin x-1/x)(1/sin x+1/x)=(1/x²)(x/sin x-1)(x/sin x+1)
ここで、(x/sin x+1) → 2 なので
A → 2(1/x²)(x/sin x-1)=2(x-sin x)/(x²sin x) ⇒ 2(1-cos x)/(2xsin x+x²cos x)
=4{sin²(x/2)/x²}/{2(sin x)/x +cos x}
={sin(x/2)/(x/2)}²/{2(sin x)/x +cos x} → 1/3
(2) o記号
1/sin x-1/x=1/{x-x³/6+o(x⁴)}-1/x=(1/x)[1/{1-x²/6+o(x³)}-1]
=(1/x)[{1+x²/6-o(x³)}-1]=(1/x){x²/6-o(x³)}=x/6-o(x²)
1/sin x+1/x=(1/x){2+x²/6-o(x³)}=(1/x){2+o(x)}
(1/sin x-1/x)(1/sin x+1/x)={1/6-o(x)}{2+o(x)}=1/3+o(x) → 1/3
2.5 その他の例
lim[x→π/4] (sec²x-2tanx)/(1+cos4x)=lim[x→π/4] {(tan x-1)/(2cos 2x)}²
lim[x→0] (sin² x-x²cos² x)/(x²sin² x)
=lim[x→0] {(sin x+xcos x)/(sin x)}{(sin x-xcos x)/(x²sin x)}
3.ロピタルの定理の注意
いままで、意識してこなかったが、ロピタルの定理には重要な注意点がある。Wikiによれ
ば
lim[x→a]f(x)=lim[x→a]g(x)=0 のとき
lim[x→a] f(x)/g(x)=lim[x→a] f'(x)/g'(x)
が成り立つのは、右辺、lim[x→a] f'(x)/g'(x)が存在するときのみである(正確には
lim[x→a] f'(x), g'(x) が共に存在するとき)。例えば
lim[x→∞] (x+sin x)/x =lim[x→∞] (1+(sin x)/x)=1
となって、極限が存在するが、ロピタルの定理を使うと
lim[x→∞] (x+sin x)/x =lim[x→∞] (1+cos x) → 発散
となってしまう。これは lim[x→a] f'(x)/g'(x) が存在しないためである。
以上
1. まえがき
下記のような問題で、基準座標系を変えたときの解法を求めていた。この点が変わっていたので紹
介する。
2. 問題
図のように、水平面の床に置かれた質量Mの台がある。台の上面は半径Rの半円でえぐられてスロー
プを形成している。点A、B、Cを左の上端、最低点、右の上端とする。質量mの質点を、A点から、
台のスロープに接して、下向きに初速v₀で打ち出す。
床と台、台と質点の間には摩擦は無く、重力の加速度をgとする。始め、台の左端はストッパーに
接している。このとき、
(1) B点における質点mの速度vBを求めよ。
(2) 質点mがC点を超えない時、B点から質点の最高到達点の高さhを求めよ。
(3) 質点mがCを飛び越える初速v₀を求めよ。
この場合、mがAからB点まで移動する間、抗力の反作用で台はストッパーに押し付けられて固定
されている。B点以後は台はストッパーから離れ、+x方向に移動する。
3. 普通の解答
まず、普通に床に静止した慣性系で考える。A、B点のエネルギー保存から
mv₀²/2+mgR=mvB²/2 → vB=√(v₀²+2gR)
となる。つぎに、質点mが上昇して最高点 hに到達したとき、このときの台のx方向の速さをuと
する(y方向の速さは0)。mは台に対して静止しているからmの速さもuとなる。すると、B,h点
のエネルギー保存から、
mvB²/2=(m+M)u²/2+mgh
となる。さらに運動量保存により、
mvB=(m+M)u
となる。これ等を解けば、
h={M/2g(m+M)}vB²={M/2g(m+M)}(v₀²+2gR)・・・・・①
となる。mがC点を飛び越える条件は h>Rから、
v₀>√(2gmR/M)
となる。
4. 台を基準にした座標系の解答
この座標は慣性系ではないが、B地点以降はストッパーの抗力が働かず、外力は無い。したがっ
て、mとMの間の2体問題になり、mとMの相対距離rと換算質量 μ=mM/(m+M) を使うと、一
体問題となり、運動方程式は
μr''=F → μr''・r'=F・r' → μ(r'²)'=F・r' → μ(v²)'=F・v
となる。ここで、Fの内、拘束力は相対速度 r'=vと垂直なので内積(仕事率)は0となる。した
がって仕事に関係するのは垂直方向の重力 -mgだけとなる(水平成分は0)。したがって、高さ
方向をyとすれば
F・v=-mg dy/dt
となり、仕事は質量はμでなく、mに関係する。
これらのことから、つぎのエネルギー保存が成り立つ。
μv²/2+mgy=const.
すると、B地点で、Mの速度は0だから、m,Mの相対速度は vBとなる。h地点では、当然、
相対速度は 0. したがって、B,h地点のエネルギー保存は
μvB²/2+mg・0=μ・0+mgh → μvB²/2=mgh
となって、①と一致する。
5. mとMの重心を基準とした座標系の解答
mがB地点を通過するとき、mの速度は vBで、台の速度は0だから、重心の速度は
vB0=(mvB+M・0)/(m+M)=mvB/(m+M)
となる(以後、外力が働かないので、一定。つまり、慣性系)。すると、この座標で見たB地
点でのm,Mの速度は、それぞれ
vm =vB-vB0 ={M/(m+M)}vB , vM =-vB0 =-mvB/(m+M)
つぎに、h地点の速度だが、mがMに対して静止することは、m,Mはいずれも、地上から見て
同じ、 vB0 になるから、重心から見た速度は0となる(勿論、y方向の速度も共に0)。
したがって、エネルギー式は
mvm²/2+MvM²/2=mgh+0
となって、これを整理すると①と一致する。
6. あとがき
以上のように、普通の慣性系で考える方が、簡単かつわかりやすい。
今まで、考えたこともなかったが、拘束力がある場合、エネルギー保存に拘束力の仕事を考慮し
なくてよいのかという疑問がわいた。調べると、あまりエネルギー保存と拘束力の関係を述べて
いるものは無い。しかし、いくつかのサイトで、「拘束力は仕事をしない」と述べられていた。
つまり、拘束力は、拘束面に垂直であり、運動は拘束面の接線方向なので、これらは垂直になり
仕事をしない。したがって、エネルギー保存に拘束力は無関係、ということを始めて認識した。
(>_<)
[追記]
拘束力が運動方向に対して垂直というのは、台が固定されている場合、明確だが今回は台も運動
する。質点mを1、台Mを2として、これを考察する。mが受ける一般の力をF、抗力をNとする
と運動方程式は
mv₁'=F+N , Mv₂'=-N
となる。それぞれに v₁,v₂の内積をとって、辺々を加えると
(mv₁²/2+Mv₂²/2)'=F・v₁+N・(v₁-v₂)
このとき、N・(v₁-v₂)=0 である。台が運動した場合、Nに垂直のは、この相対速度ベクトルだ
からであり、結局、
(mv₁²/2+Mv₂²/2)'=F・v₁
となり、エネルギー式において、台の抗力は考えなくてよいことになる。今回、F=-mgだから
mのポテンシャルだけとなる。
以上
次の行列式を計算する。
A=| a b c d |
| d a b c |
| c d a b |
| b c d a |
まず、2~4行をそれぞれ1行に足す。つぎに、-2列、+3列、-4列を1列に足す。
↓ ↓
A=(a+b+c+d)| 1 1 1 1|=(a+b+c+d)| 0 1 1 1|
| d a b c| |d-a+b-c a b c|
| c d a b| |c-d+a-b d a b|
| b c d a| |b-c+d-a c d a|
つぎに、1列の係数を出し、 3行を2行と4行にそれぞれ足すと
↓ ↓
A=(a+b+c+d)(a-b+c-d)| 0 1 1 1|=(a+b+c+d)(a-b+c-d)| 0 1 1 1 |
|-1 a b c| | 0 a+d b+a c+b|
| 1 d a b| | 1 d a b |
|-1 c d a| | 0 c+d d+a a+b |
(3,1)で展開して、 -1列を2,3列に足す。
↓ ↓
A=(a+b+c+d)(a-b+c-d)| 1 1 1 |=(a+b+c+d)(a-b+c-d)| 1 0 0 |
|a+d b+a c+b| |a+d b-d (c+b)-(a+d)|
|c+d d+a a+b| |c+d a-c (a+b)-(c+d)|
(1,1)で展開して
A=(a+b+c+d)(a-b+c-d) [ (b-d){(a+b)-(c+d)}-(a-c){(c+b)-(a+d)} ]
=(a+b+c+d)(a-b+c-d) [ (b-d){(b-d)+(a-c)}-(a-c){(c-a)+(b-d)} ]
=(a+b+c+d)(a-b+c-d) [ (b-d)²+(b-d)(a-c)+(a-c)²-(a-c)(b-d) ]
=(a+b+c+d)(a-b+c-d){(b-d)²+(a-c)²}
となる。あるいは
A={(a+c)²-(b+d)²}{(b-d)²+(a-c)²}
ちなみに、因数(a+b+c+d)は分かり安いが、(a-b+c-d)は難しいので、maximaで行列を
計算した結果を参考に、計算手順を予想した。
以上