特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

特殊相対性理論の前提に必須な議論(時間とは何か,1秒は同じか)

2019-03-21 11:23:42 | 特殊相対性理論
1.まえがき
 
 特殊相対性理論の議論では、時間と空間が混じり合ったり、別の慣性系から見ると短縮や時間遅
 れた
りする。このため、時間や長さとは何かについて、もう少し明確にする必要がある。例えば
 昔、「鏡に
映る像は何が逆になるか?」という議論があり、「あの時、もう少し真剣に考えてい
 たら・・・」と嘆い
た数学者の言葉を見た。

 この理論では、安易に結論を出す過程ばかりが目立つので、本質に迫れず誤った結論が主張され
 たりする(なにしろ、常識が通じず、まず確認もできない)。まれに、本質を突いたパラドック
 スによって理解が深まる(逆に、普通は確かめられないのでそれしか無い)。

 そして、物理の危機に対して悩みぬいた先哲たちの努力が忘れ去られてしまった。以下ではこれ
 らのことについて述べる。

2.時間とは何か


 時間について述べた書籍(一冊をかけて)は色々あるがほぼ夢想的な空論の羅列で物理とは何の
 関係
も無く、役にも立たないが、次のカルナップの一言で済む。
   「時間とは(基本物理)周期現象の周期の回数のことである

 つまり、時間とは物理現象のことであり、各座標、各慣性系の物理現象のことである。しかし、
 時間間隔は分かるが、出だしであ
る時刻は決まらない。そして、慣性系内の各座標で同一の時間
 を使うために、「同時性の定義」によ
って、これを定めている。

 このように、時間とは物理周期現象という認識によって、慣性系が異なった場合の時刻が座標に
 よっ
て変わるため、「各座標に置いた時計」(各座標における物理周期現象)という表現の意味
 が明確に
なる。
 
3.1秒は同じか?
 
 1秒は、どの座標でも、どの慣性系でも、いつまでたっても同じか?という疑問を持ったことが
 ある
が、確かめられない(基本を定めるのだから、比較する基本は無い)。つまり、特殊相対性
 原理によって、これらの時間(間隔)を使うと慣性系間で物理法則は同じになる事しか言えない。

 つまり、「1秒が同じか」という問いは無意味となる。そして
、これによって建設された物理に不
 具合が無いならば、良しとするだ
けである。
 
 そして、2つ並べた同じ時計に差の無い安定性のよい現象を基準に選ぶことだけである。
 
 以上の議論は、長さについても「1mは同じか?」など同様に議論できる。

4.光速度不変の原理について

 昨今は、光速度不変が無くても、座標変換から速度の限界が導かれるとか、この原理は電磁気
 学から
の定理であるなどの言明があり、信じている人も多い。数学的な形式論ではそうなるが
 物理としては
どうだろうか。

 前にも述べたように、理論順序としては、この理論は慣性系間の時空の性質を決定する理論で
 あり、
その上に力学や電磁気学が建設されている。対象として光も含んだ電磁気学から光速不
 変が導びかれ
ても当然の帰結である。
 
 下で述べるように、光速度不変は本質的であって、これにより時空が決定されて議論が始まる
 ことが
わかる。決して、後出しされるものではない。振り返れば、アインシュタインとポアン
 カレ、ローレ
ンツ達との決定的な差はこれを原理としたことにある(なお、アインシュタイン
 は疑惑の人である。しかし、他の剽窃者達とは違い、これだけでは終わらなかった)。すさま
 じきは、並
みいる巨人た
黙らせてしまった「光速度不変の原理」の破壊力にある

 そして、この非常識な原理以外は常識的で納得できるものであり、この理論の展開する上での
 支えになっ
ている?

5.一方向の光速度は「光速度不変」を仮定しないと測定できない

 あまり見かけないこの言明はライヘンバッハの書籍に書かれていた。光速度は行き帰りの速度
 が同
じとして、同じ時計で往復の速度が測られる(知らないので多分)。一方向の光速度を測
 ろうとすると、下記のように「光速度不変」を仮定した、同時の定義によって、時刻合わせを
 しなければならない。

6.2つの同時性の定義

 これについては、ポアンカレの定義(アインシュタインの論文で使われている)
   tB-tA=tA'-tB  ・・・・①
 と、メラーなどに載っている定義
   tB=tA+L/c   ・・・・②
 の2つがあり、この違いの意味が分からなかった。光速度は不変だからBからAに光が戻る時刻
 tA' は 
tA'=tB+L/c となり、これと②からL/cを消すと、①が得られる。つまり、同じもので
 あり、いずれの定義も
光速度不変が深くかかわっている。

 そして、ほとんどの書籍は①を提示しているにもかかわらず、説明も無く、実際に使われてい
 るのは②であることが、「同時性の定義」の意義を不明確にして、軽視される原
因となってい
 る
(同時性の定義を記述する書籍は理解しているのだろうか)。
 
7.同時性の定義に関する余話
 
 メラーは「2つの合わせた時計の一方を移動して、同時性の定義はできない」と述べている。
 特殊相対性理論の結果から運動する時計は遅れるからだと思われる。このことに違和感があり
 何十年も考えた結果、かまわないと思った。

 例えば、上の定義にしても任意の座標に鏡や時計などの機器を持っていけるわけがない。これ
 らはアインシュタインの十八番、思考実験である。とすれば、思考実験として、時計を任意の
 座標に移動したと考えればよい話で、移動速度による時間遅れなど無関係の話となる。

 ただし、このときの移動元と移動先の時刻の関係が曖昧である。つまり、時計を移動したとき
 時間が変わらないことを具体的に決めようとすると、上の①②になってしまう。
 
 
参考書
 
 物理学の哲学的基礎、ルドルフ・カルナップ、岩波
 相対性理論、メラー、みすず書房
 相対性理論の誕生、ハンス・ライヘンバッハ、講談社
 
以上

[2020/10/10] 「1秒は同じか?」の内容を整理した。


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