特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

無限平面導体上に半球の突起部があるときの電界

2020-04-19 09:42:17 | 電磁気学(電界)

1. まえがき

 無限平面導体上に半球の突起部があるときの電界を問う問題があった。調べると下記の
 書籍に解報が載っており、巧妙で面白いので紹介する。


2. 問題

 図のように無限平面導体面の上に半径aの半球の突起部がある。導体は接地されている。
 半球の中心Oを原点とする。Oから平面に対して垂直な距離dの位置に電荷qがあるとき
 の電界を求める。このときは単純に鏡像法が使えない。



3. 計算


 P点の球の鏡像点をP₁、電荷をq' とする。すると、
    OP₁=a²/d , q'=-aq/d
 となる。そして、P,P₁の鏡像をP', P₁' とすると
    OP₁'=-a²/d , OP'=-d (電荷はそれぞれ、-q₁=+aq/d , -q)
 となる。

 このとき、P, P', P₁, P₁' の電荷にによ導体平面の電位が0になることはすぐわかる。問
 題は半球面の電位がどうなるかである。ここで、PとP₁ の電荷による電位を考えると、
 半球面で0になる。つぎに、P'とP₁' の電荷による半球面の電位も0になるから、これ等
 を重ね合わせた電位も0になり、境界条件を満たし、これらの鏡像による電界が解とな
 ることがわかる。

 Qの座標(r,θ)の電界は、図のようにP, P', P₁, P₁' からの距離と角度をそれぞれ、s, s', s₁,s₁',
 φ, φ', φ₁, φ₁' とすると
    Ex=(q/4πε₀)[cosφ/s²-cosφ'/s'²-(a/d){cosφ₁/s₁²-cosφ₁'/s₁'²}]
    Ey=(q/4πε₀)[sinφ/s²-sinφ'/s'²-(a/d){sinφ₁/s₁²-sinφ₁'/s₁'²}]
 と書ける。このとき
    s²=r²+d²-2drcosθ , rsinθ=s sinφ , s₁²=r²+(a²/d)²-2(a²/d)rcosθ , rsinθ=s₁sinφ₁
    s'²=r²+d²+2drcosθ , rsinθ=s'sinφ' , s₁'²=r²+(a²/d)²+2(a²/d)rcosθ , rsinθ=s₁'sinφ₁'
 となるが、これ以上は面倒なのでやめる。

4. 平面上の電界

 例題にあるように、平面上の電界 Exを求めてみる。θ=±π/2(a≦r)なので
    s=√(r²+d²) , cosφ=-d/s , s'=s , cosφ'=d/s
    s₁=√(r²+(a²/d)²)=√(r²+(a⁴/d²)) , cosφ₁=-(a²/d)/s₁ , s₁'=s₁ , cosφ₁'=(a²/d)/s₁
 なので
    Ex=(q/4πε₀)[-d/s³-d/s³-(a/d)(a²/d){-1/s₁³-1/s₁³}]=-(q/2πε₀)[d/s³-(a³/d²)/s₁³]
     =-(q/2πε₀)[d/(r²+d²)3/2-(a³/d²)/{r²+(a⁴/d²)}3/2] (a≦r)
 となる。

5. 球面上の電界

 面倒なので、球面の先端、r=a, θ=0 の場合のみ。すると
    s=d-a , cosφ=-1 , s'=d+a , cosφ'=1
    s₁=a-(a²/d)=(a/d)(d-a) , cosφ₁=1 , s₁'=a+a²/d=(a/d)(d+a) , cosφ₁'=1
 なので
    Ex=(q/4πε₀)[-1/s²-1/s'²-(a/d){1/s₁²-1/s₁'²}]
     =(q/4πε₀)[-1/(d-a)²-1/(d+a)²-(a/d)(d/a)²{1/(d-a)²-1/(d+a)²}]
     =-(q/4πε₀)[ { 2(d²+a²)+(d/a)4ad }/(d²-a²)² ]
     =-(q/4πε₀)[ { 2(d²+a²)+4d² }/(d²-a²)² ]
     =-(q/2πε₀)[ (3d²+a²)/(d²-a²)² ]
 となる。
 なお、上式で、a=0 と置くと、設定が特異的になり、平面の結果と合わない。

[参考書籍]
  詳解 電磁気学演習 後藤憲一他 共立出版㈱ P117

以上


一様な電磁界中の点電荷の運動②

2020-04-14 20:28:06 | 電磁気学

1. まえがき

 以前、一様な電磁界中の点電荷の運動について述べた。その後、初速度がxy方向成分
 持つとき、初速度の如何によらず、x軸のある点を同時刻に通過するという記述があっ
 たのでまとめておく。まず、設定として、B=<0,0,B> , E=<0,E,0>の一様な電磁界中に
 おける、質量m、電荷qの点電荷の運動を考える。初期条件は
   t=0 の座標<0,0,0>で、初速度 <vx0,vy0,0>をもつとする。・・・・・①

2. 計算

 運動方程式は「'」を時間微分として
   mx''=qvyB , my''=q(E-vxB) , mz''=0
   x''=wy' , y''=a-wx' , z''=0、a=qE/m , w=qB/m・・・・②
 となる。②を積分して
   x'=wy+A , y'=at-wx+C , z'=D
 となる。初期条件①から(z(0)=z'(0)=0 なので)
   x'=wy+vx0 , y'=at-wx+vy0 , z=0 ・・・・・・・・・・・③
 となる。

 つぎに、③を②に代入して
   x''=-w²x+awt+wvy0 , y''=a-w²y-wvx0
 となる。ここで
   X=x-(a/w)t-vy0/w, Y=y-a/w²+vx0/w ・・・・④
 とおくと、
   X''=-w²X , Y''=-w²Y
 となり、この解は
   X=Acoswt+Bsinwt , Y=Ccoswt+Dsinwt
 となる。初期条件①から、X(0)=-vy0/w , X'(0)=vx0-a/w , Y(0)=-a/w²+vx0/w ,Y'(0)=vy0
 なので A=-vy0/w , B=vx0/w-a/w², C=vx0/w-a/w², D=vy0/w となlり

   X=-(vy0/w)coswt+{vx0/w-(a/w²)}sinwt
   Y={vx0/w-(a/w²)}coswt+(vy0/w)sinwt ・・・⑤

 を得る。これは
   X²+Y²=(vy0/w)²+{vx0/w-(a/w²)}²
 なので、④のx軸方向に速度 (a/w) で等速運動する座標系で観ると電荷は、半径
 √{(vy0/w)²+(vx0/w-(a/w²))²} の円運動する。⑤を微分して
   X'²+Y'²=vy0²+{vx0-(a/w)}²
 となるので、等速の円運動と分かる。

 座標系を戻すと④⑤から
   x=(a/w)t+vy0/w-(vy0/w)coswt+{vx0/w-(a/w²)}sinwt
     =(a/w)t+(vy0/w)(1-coswt)+{vx0/w-(a/w²)}sinwt
   y=-vx0/w+a/w²+{vx0/w-(a/w²)}coswt+(vy0/w)sinwt
     =-{vx0/w-(a/w²)}(1-coswt)+(vy0/w)sinwt
   z=0  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・⑥
 を得る。

3. x軸との交点

 y=0、つまり、x軸との交点を求めると⑥から、wt=2nπ (n=0, 1, 2,・・・)がある(そ
 の他にもある)。このとき
   x=(a/w)2nπ/w=2nπa/w²
 となり、初速度によらず、同一地点となる。つまり、初速度がバラバラの電荷を同時
 に打ち出すと、決まった時間に同一地点に収束し、これを等間隔で繰り返す。

以上


円筒側面を転がる円板が側面を離れる位置

2020-04-07 19:35:10 | 力学

1. まえがき

 図のような円筒側面を転がり落ちる円板が側面を離れる位置を求める問題があった。
 これを求めてみる。

2. 条件

 半径aの円筒の中心軸が水平に置かれている。この上を半径b、質量mの円板が円筒の
 頂点から滑りが無く転がり落ちるとき、円筒の側面から離れる位置を求める。

 鉛直からの円板重心までの角度をθ、鉛直から円板の回転角度をφとし、円板にかかる
 摩擦力をF、円筒からの抗力をRとする。円板の重心周りの慣性モーメントは mb²/2
 である。重力の加速度をgとする。



3. 計算


 3.1 円筒が回転しない時

  円板重心のθ方向の運動方程式は      m(a+b)θ''=mgsinθ-F・・・・・①
  円板重心の半径方向の運動方程式は     m(a+b)θ'²=mgcosθ-R・・・・②
  円板の重心を中心とする回転の運動方程式は (mb²/2)φ''=bF・・・・・・・③
  となる。

  また、円板の回転弧長CBD=弧CB+弧BD=bφ は、滑りが無いので 弧BD=弧AB=aθ
  であり、弧CBの角度はθだから、弧CB=bθ となり
    bφ=aθ+bθ=(a+b)θ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・④
  となる。④➂から F={m(a+b)/2}θ'' となり、これを①に入れると
    (3/2)m(a+b)θ''=mgsinθ
  この両辺にθ' を掛けて、積分し、θ(0)=θ'(0)=0 を使うと
    (3/4)m(a+b)θ'²=mg(1-cosθ)
  これを②に入れると
    R=mgcosθ-(4/3)mg(1-cosθ)=(mg/3)(7cosθ-4)
  を得る。円筒から離れるときは抗力が無くなる時なので、R=0 つまり
    cosθ=4/7
  となるときである。

 3.2 円筒が回転する時

  円筒が摩擦の無い中心軸によって回転するときは、円筒の慣性モーメントと回転角
  を ma²、αとすると、円板の回転弧長は 円筒の回転分 aαだけ少なくなるから
    bφ=aθ+bθ-aα=(a+b)θ-aα・・・・・・・・・・⑤
  となる。また、円筒の回転の運動方程式は
    ma²α''=aF・・・・・・・・・・・・・・・・・⑥
  となる。その他の運動方程式①~➂はそのまま成り立つ。

  ➂⑥から aα''=F/m=(b/2)φ'' となる。これを⑤を2回微分したものにこれを入れて、
  αを消すと
    bφ''=(a+b)θ''-(b/2)φ'' → bφ''=(2/3)(a+b)θ''
  となり、➂に入れると
    F=(m/3)(a+b)θ''
  となる。これを①に入れると
    m(a+b)θ''=mgsinθ-(m/3)(a+b)θ'' → (4/3)m(a+b)θ''=mgsinθ

  この両辺にθ' を掛けて、積分し、θ(0)=θ'(0)=0 を使うと
    (2/3)m(a+b)θ'²=mg(1-cosθ)
  これを②に入れると
    R=mgcosθ-(3/2)mg(1-cosθ)=(mg/2)(5cosθ-3)
  を得る。円筒から離れるときは抗力が無くなる時なので、R=0 つまり
    cosθ=3/5
  となるときである。

以上