特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

a[n+1]=a[n]/(1+a[n])² で示される数列の収束と極限の問題

2019-09-29 12:37:01 | 解析(極限・数列)

1. まえがき
 次の数列の収束などの性質が述べてあった。証明が少し複雑だったが簡単な方法を述べる。
    a[n+1]=a[n]/(1+a[n])² , a₁=1/2

2. 計算
 (1) a[n]→0

  a[n]>0 は帰納的にすぐわかる。すると
    a[n+1]-a[n]=-a[n]²(2+a[n])/(1+a[n])²<0
  となる。つまり、単調減少数列である。つまり
    a[n]≦1/2・・・・・①
  となる。

  b[n]=1/a[n] とおくと
    b[n+1]=b[n]+2+1/b[n] , b[1]=2
  となる。ここで、 b[1]>0 だから
    b[n+1]>b[n]+2>・・・>b[1]+2n=2(n+1)
  となる。また、①から 1/b[n]=a[n]≦1 だから
    b[n+1]≦b[n]+2+1=b[n]+3≦・・・≦b[1]+3n<3(n+1)
  結局、
    1/(3n)<1/b[n]=a[n]≦1/(2n)・・・・・②
  となり、a[n]→0 となる。

 (2) (a₁+a₂+・・・+a[n])/n→0
  これは、(1)の結果から、よく知られた結論である。

 (3) na[n]→1/2
    b[n+1]=b[n]+2+a[n]<b[1]+2n+(a₁+a₂+・・・+a[n])
      =2(n+1)+(a₁+a₂+・・・+a[n])
    b[n+1]/n<2(n+1)/n+(a₁+a₂+・・・+a[n])/n
  これも、(2)から
    b[n+1]/n≦2 → b[n]/n≦2 (n→∞)
  となる。また、②から
    b[n]/n≧2
  なので、b[n]/n→2 となり、これから、na[n]→1/2 をえる。

以上


絶対値が作るグラフ図形

2019-09-13 07:32:45 | 算数

1. まえがき
 絶対値を使うと角のある面白い図形が描ける。それを紹介する。

2. グラフ
 (1) 図1に示すものはよく知られている。1、3、4番目は放物線、円、双曲線に対応している。



 (2) 図2は、少し複雑な折れ線。



 (3) 図3は3角形から5角形まで。
  最初のグラフについて説明すると、y→ -y としても同じなので、x軸に対して対称となるか
  ら y≧0 のみ調べればよい。x,y≧0 の第1象限のとき、2y+x=1 のグラフとなる。x<0,y≧0
  の第2象限のとき、y+|x+y|=1 となる。さらに、x+y≧0 のとき、2y+x=1 となる。これ
  らを合わせると、1=2y+x≧-2x+x=-x、つまり、x≧-1 となる。以上を合わせて、
     -1≦x≦1 のとき、2y+x=1
  残りの、x+y<0 のとき、y-(x+y)=1 → x=-1 となる。これで、y≧0 のグラフがわかった。

  なお、2番目の4角形は図1の3番目の四角形を45゜座標回転したものになる(大きさは異な
  る)。



 (4) 図4は6角形と8角形。
   最初のグラフは、(x,y)→(-x,-y)としても同じなので、原点で点対称になるから、y≧0 の
   のグラフを調べればよい。第一象限の時、x+y+x+y=2 → x+y=1 となる。第二象限の
   とき、-x+y+|x+y|=2 となる。さらに、さらに、x+y≧0 のとき、y=1、x+y<0 のとき
   x=-1 となり、y≧0 のグラフがわかる。

3. あとがき
 3次元空間ではもっと複雑面白い図形があるが複雑すぎる。

以上


ボタン磁石を両端につけた乾電池が導体コイル中を運動する理由

2019-09-11 08:17:25 | 電気一般

1. まえがき

 「電気モグラ」、「世界一簡単な構造の電車」などという題名で、ボタン磁石を両端につけた
 乾電池が、導体コイル中を運動する動画がたくさんある。しかし、ほとんど動作原理の説明が
 無く、説明している動画も簡単すぎて疑問がある。

  (1) コイルの磁界を磁極で説明しているが、磁性体の内部とは異なり、空芯コイルの内部の
   磁界の方向は磁性体とは逆。つまり、コイルの外に「電車」を置いた時、逆方向に運動す
   る説明が苦しい。というのは、どのような磁極と等価が難しい。
  (2) ボタン電池は一つの磁極だけではなく、NSの2つの磁極が接近して存在し、この説明が
   抜けている。

2. 設定

 ・ 怠惰なため実験での確認はできないが、動画から以下の推定をした。
 ・ コイルは裸導線で電池の接触によって電流が流れるが、ピッチ間でショートしないように
   設定される。
 ・ ボタン電池はネオジウム磁石で導体でもある。電池の各極に同じ極を付ける(電池の極は
   は磁性体である)。これらの吸着した部分は1つのNS極を持つ磁石となる。電池の内部の
   黒鉛棒は磁性体でなく、両端は同一極なので無視してよい。つまり、両端にNS極が接近し
   て存在する。
 ・ 電池の電流により、電池の負方向に向かう磁界ができるようにコイルがまかれている。
 ・ なお、磁界Hと磁荷mがあると F=mH という力が働く。



3. 考察

 (1) 磁界を作るリング電流は電池の長さの範囲にあり、当然、電池の中心で大きく、両端に行
  くにしたがって小さくなる。その変化は電池の両端で大きい。
 (2) すると、図1のように両端のS極の力より、N極の力が大きい。その差によって、右方向の
  力が働き、右方向に移動する。もし、これが正しければ、電池でない棒に磁石をつけ、長い
  コイルの両端に電流を流すと、ほとんど動かないはずである。多分、入り口で引き込まれて
  中に入った後、すぐ停止する。


 (3) このことから、一方の端のNSを入替えると、力が反対方向になり、キャンセルされ、ほぼ
  力が働かないことがわかる。さらに、両側ともにNSを逆にすると、逆方向の力が働き、左方
  向に移動することがわかる。
 (4) 以上のことから、磁石を重ねても、両端の磁荷はあまり変わらない。しかし、NS極の間隔
  が離れるので、力の差は大きくなるはずで働く力は大きくなる

 (5) 最後に、図2のように、コイルの外側に乗せたときどうなるか。当然、磁界の向きは逆で小
  さくなっている。だから、速度は小さく、移動方向は反対となる。

以上

[2019/9/13] 動画の追加、説明の修正。


台の上にバネとゴム紐に接続された小球と台の水平運動(2)

2019-09-07 05:18:36 | 力学

1. まえがき
 前回より複雑な事例を述べる。

2. 問題
 図のように、水平な床上に質量Mの台Qがある。台Qの水平な上面にはばね定数kのばねを、左
 側に、ばね定数2kのゴムひもを右側につけた質量mの物体Pがある。ばねとゴムひもの他端は
 台Qに固定されてる。このとき、ばねとゴム紐は自然長である。

 ばねが自然長の時の物体Pの位置を原点x=0として、台Qに固定した右向きのx軸をとる。はじ
 め物体Pはx=2dの位置でつりあっていた。装置各部の摩擦や空気抵抗、物体Pの大きさ、ばね
 とゴムひもの質量は無視でき、たるんだゴムひもがPや台Qの運動を妨げることはないとする。

 (1) 台Qを床に固定したまま物体Pをx=3dの位置までずらして静かに放すと、Pはつりあいの位
  置を中心とする振幅dの単振動を行なった。この単振動の周期をもとめよ。

 (2) 台Qを床に固定したまま物体Pをx=0の位置までずらして静かに放すと、Pは往復運動を行な
  った。
  (a) 物体Pの速さの最大値を求めよ。
  (b) 物体Pのx座標の最大値を求めよ。
  (c) 物体Pが再びx=0の位置に戻ってくるまでの時間を求めよ。

 (3) 台Qを自由に動けるようにした。台Qが静止してる時、x=2dの位置にある物体Pに右向きの
  初速を与えた所、PはQに対して周期運動をおこない、Pのx座標の最大値はx=4dとなった。
  (a) 物体Pに与えた初速を求めよ。
  (b) 物体Pのx座標の最小値を求めよ。
  (c) 物体Pに与えた初速をv₀、運動の周期をT₀とする。一周期間での台Qの右向きの変位を
   v₀、T₀を用いて表せ。



3. 解

 (1) ゴムひもが自然長の時、その左端の位置(x=0からの)をLとすると、釣合の式から
  k2d=2k(L-2d)、したがって、
     L=3d                ・・・・・①
  Pの運動方程式は
     mx''=-kx+2k(L-x)=-3kx+6kd (x<L=3d)・・・・②
     mx''=-kx (x>L=3d)          ・・・・③
  設定から、振動は x<L=3d なので➁を満たす。この解はよく知られており角周波数は
     w=√(3k/m)             ・・・・・④
  となる。したがって、周期は
     T=2π/w=2π√(m/3k)
  となる。

 (2)(a)
  ②は mx''=-3k(x-2d) と変形できて、これを解くと、x=2d+Acoswt+Bsinwt となる。 
  x(0)=x'(0)=0 として
     x=2d(1-coswt) , v=x'=2dw sinwt  ・・・・・⑤
  を得る。

  Pの最大速度v₁は、wt=π/2の時で、⑤から x=2d (<L=3d)
     v₁=2dw={2√(3k/m)}d
  を得る。

 (b)
  最大の座標 x₂は ⑤から、x=4d となる。つまり、ゴムひもは垂るみ、②の条件を満たさ
  ず、③を解かねばならない。そこで、境界、x=3dの速度v₂は⑤から
     3d=2d(1-coswt) → coswt=-1/2 → wt=π/3・・・・⑥
     v₂=2dwsin(π/3)=dw√3={3√(k/m)}d
  となる。

  時刻をt=0にして、③を解くと
     x=Acosw't+Bsinw't , w'=√(k/m)
  となるが、⑥の結果の初期条件    
     x(0)=3d , x'(0)=v₂={3√(k/m)}d
  から、A=B=3d となり
     x=3d(cosw't+sinw't)=(3√2)d cos(w't-π/4) ・・・・⑦
  を得る。したがって、最大座標は x₂=(3√2)d , w' t=π/4 となる。

 (c)
  ゴム紐がたるんだ時、x≧L=3dでの往復時間は、⑦で、x≧3d となる時間だから、
  w' t=π/4 を挟んだ w' t=0~π/2 の間である。つまり、その時間T'は
     T'=π/(2w')=(π/2)√(m/k)
  となる。

  つぎに、ゴム紐がたるんでいないときの⑤の 0≦x≦L=3d の運動時間は⑥から
  t=(π/3)/w=(π/3)√(m/3k)となる。原点に戻る時間を加えるとこの2倍になるから、
  上のT'を足して、求める時間T₃は
     T₃=(π/2)√(m/k)+2(π/3)√(m/3k)=(π/2)√(m/k){1+4/(3√3)}
  となる。

 (3)(a)
  初速をv₀とする。始めのバネとゴムのエネルギーは k(2d)²/2=2kd², 2k(L-2d)²/2=kd²
  また、mが 4dで停止したとき(ゴムはたるんでいる)、Mとmの速度は同じだから、運動
  量保存により
    (M+m)v=mv₀ → v=mv₀/(M+m)・・・・・・⑧
  となる。エネルギー保存から
    2kd²+kd²+mv₀²/2=k(4d)²/2+(M+m)v²/2=8kd²+{m²/(M+m)}v₀²/2・・・⑨
    v₀=[√{10k(M+m)/mM}]d={√(10k/μ)}d・・・・⑩
  ここで、μは換算質量
    μ=mM/(m+M)
  である。

 (b)
  Pの最小座標xは反対方向で、M,mの速度が等しくなったところだから、エネルギー保存は
  ⑨の右辺を変更して
    2kd²+kd²+mv₀²/2=kx²/2+2k(3d-x)²/2+(M+m)v²/2
  ⑧⑩を使って整理すると
    (3/2)x²-6dx+d²=0 → x={2-√(10/3)}d (小さい方を取る)
  となる。

 (c)
  地べたの慣性系を基準にすると、mと台の座標をそれぞれx,yとする。すると運動量保存に
  より、
    mx'+My'=mv₀、積分して、mx+My=mv₀t → (mx+My)/(m+M)=mv₀t/(m+M)
  この左辺はm,Mの重心の座標と等距離にある座標である。つまり、重心の座標は等速運動
  をする。mの運動の1周期T₀をとれば、その分の変位は合計0となる。したがって、T₀の間
  に台が移動する距離は
    mv₀T₀/(m+M)
  となる。

以上


台の上にバネに接続された小球と台の水平運動(1)

2019-09-06 17:31:15 | 力学

1. まえがき
 以下のような問題があった。まず、簡単単純なものから説明する。

2. 問題
 床に質量Mの台が置かれている。大きさを無視できる質量mの小球をばね定数kのばねに連結し、
 ばねが自然長(原点)となるように置いた。バネの質量や各接触面の摩擦は無いとする。
 t=0において小球のみに右向きの速さv₀を与えた。

 (1) バネが最も縮んだときの縮み量d₁を求めよ。
 (2) 台の運動方程式を書き、台Mと小球mの運動を解け。


3. 解
 (1) 運動方程式を解けばよいが、エネルギー保存と運動量保存で解ける。バネが最も縮んだ時、
  mとMの速度は等しく vとなる。というのは、速度差があれば、バネは伸び縮みするから。と
  いうことで、

     mv₀²/2=(m+M)v²/2+kd₁²/2 , mv₀=(m+M)v
  この式から、vを消して
     kd₁²=m{(1-m/(m+M)}v₀² → d₁=√(μ/k) , μ=mM/(m+M) (換算質量)
  となる。

 (2) バネが自然長の時、座標の原点に取り、m,Mの座標をそれぞれ、x,yとする。
     mx''=-k(x-y)・・・・・①
     My''=k(x-y)・・・・・・②
  となる。さらに、運動量保存により
     mv₀=mx'+My'
  が成り立っている。この式を積分して、初期条件、x(0)=y(0)=0 を使えば
     mx+My=mv₀t・・・・・③
  となる。これらの式から、台を基準としたmの変位zの式
     z=x-y・・・・・・④
  を使うと、
     x={M/(m+M)}z+{m/(m+M)}v₀t・・・・・⑤
  なので
     {mM/(m+M)}z''=-kz → μz''=-kz
  となる。この解はよく知られており
     z=Acos wt+Bsin wt , w=√(μ/k)
  となる。初期条件、z(0)=0,z'(0)=v₀ (x(0)=y(0)=0, x'(0)=v₀, y'(0=0 と➃)から
     z=(v₀/w)sin wt
  となる。⑤から、mの運動は
     x={M/(m+M)}z+{m/(m+M)}v₀t
       ={M/(m+M)}(v₀/w)sin wt+{m/(m+M)}v₀t
  となる。同様に、Mの運動は
     y=x-z=-{m/(m+M)}(v₀/w)sin wt+{m/(m+M)}v₀t
  となる。

4. mとMの重心の運動
 最後の式から、次の左辺の量を計算すると
     (mx+My)/(m+M)={m/(m+M)}v₀t
 となり、等速度運動を表す。これは③を意味しているが、この意味を調べる。t=0のとき
 Mの重心の座標をYg、原点からこの重心までの座標の変化を Yとすると
     Y=y-Yg
 となる。これを前の式に入れると
     (mx+MY)/(m+M)={m/(m+M)}v₀t+MYg/(m+M)
 となる。この左辺、つまり mとMの重心(mは質点なのでxは重心)の運動は等速直線運
 動となる。


以上