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特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

気体の定積・定圧比熱の関係

2021-12-06 10:53:33 | 統計熱力学

1.まえがき

 気体の定積・定圧比熱の関係
    Cp=Cv +{ (∂U/∂V)T +p }(∂V/∂T)p ・・・・・・・・・・・①
 について述べる。

2.計算

 気体に関し、第一法則において δW=-pdV を使うと
    dU=δQ+δW=δQ-pdV ・・・・・・・・・・・・・・②
 が成り立つ。定積過程では dV=0 なので dU=δQ となるから
    CV=(δQ/∂T)V=(∂U/∂T)V ・・・・・・・・・・・・・・・③
 が成り立つ。

 つぎに、定圧過程の場合
    Cp=(δQ/∂T)p ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・④
 となるが、②から
    (δQ/dT)p =(∂U/∂T)p +p(∂V/∂T)p ・・・・・・・・・・・⑤
 となる。

 一般に U=U(T,V) つまり、内部エネルギーは過程によらず変数 TとVで決定される。また
 一般の気体の状態方程式 V=V(p,T) から U=U(T,V(p,T)) となり、微分の連鎖律から
    ∂U/∂T=(∂U/∂T)V +(∂U/∂V)T { (∂V/∂p)T +(∂V/∂T)p }
       =CV +(∂U/∂V)T { (∂V/∂p)T +(∂V/∂T)p }
 となる。ここで、p=一定の仮定を考えると ∂V/∂p=0 だから
    (∂U/∂T)p=CV +(∂U/∂V)T (∂V/∂T)p 
 となる。これを④⑤に入れると
    Cp=CV+(∂U/∂V)T (∂V/∂T)p +p(∂V/∂T)p   
     =CV+{ (∂U/∂V)T +p }(∂V/∂T)p  
 を得る。なお、エンタルピー
    H=U+pV
 を使うと定圧過程では dH=dU+pdV なので②から dH=δQ だから
    (∂H/∂T)p =(δQ/∂T)p =Cp 
 を得る。

3.理想気体

 理想気体の時は U=(3/2)nkT, pV=nRT だから
    (∂U/∂V)T =0 , (∂V/∂T)p =nR/p
 となり、①式は
     Cp=CV+nR
 という、マイヤーの関係式を得る。

[参考文献]
  熱力学・統計力学 W.グライナー 丸善
  マイヤーの関係式 wiki


以上


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液体または固体の比熱の関係式

2020-05-23 12:24:17 | 統計熱力学

1. まえがき

 液体または固体の比熱の関係式を求める問題があった。苦手とする領域だが、この理
 解なくして物理は無いと痛感するこの頃なので調べてみた。

2. 問題

 一様な圧力(静水圧)を受けている液体または等方性の固体ある。その熱膨張率βと等
 温圧縮率κ
     β=(1/V)(∂V/∂T)p  , κ=(1/V)(∂V/∂p)T ・・・・・・・・・・・(2.1)
 が定数と見なせる領域では
     V=V₀(1+β(T-T₀)-κ(p-p₀)} ・・・・・・・・・・・・・・・(2.2)
 で与えられることを示せ。また、Cpが一定なら、エントロピーは
     S=Cp log(T/T₀)-β(p-p₀)+S₀ ・・・・・・・・・・・・・・(2.3)
 で与えられ、
     Cp-Cv=(β²/κ)V₀T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.4)
 となることを示せ。

3. 準備計算

 はじめに、次のマクスウェルの関係式が成り立つ。
     (∂S/∂p)T=-(∂V/∂T)p ・・・・・・・・・・・・・・・・(3.1)

 まず、V,T が変数のとき

     δQ=(δQ)V +(δQ)T 
 となるが、V=一定の時、定義から
     Cv=(δQ/dT)V  → (δQ)V=CvdT
 となる。また、Tが一定の時、∂S/∂T=0 から、dS=(∂S/∂V)T dV+(∂S/∂T)V dT=(∂S/∂V)T dV
 となる。したがって、δQ=TdS だから    
     (δQ)T =(TdS)T =T(∂S/∂V)T dV
 これらをまとめると
     δQ=TdS=CvdT+T(∂S/∂V)T dV ・・・・・・・・・・・・(3.2)
 が得られる。

 つぎに、p,T が変数のとき
     δQ=(δQ)p +(δQ)T 
 となるが、p=一定の時、定義から
     Cp=(δQ/dT)p  → (δQ)p=CpdT
 となる。同様に、Tが一定の時、dS=(∂S/∂p)T dp+(∂S/∂T)p dT=(∂S/∂p)T dp
 となる。したがって、δQ=TdS だから    
     (δQ)T =(TdS)T =T(∂S/∂p)T dp
 これらをまとめると
     δQ=TdS=CpdT+T(∂S/∂p)T dp ・・・・・・・・・・・・(3.3)
 を得る。

4. 計算

 V=V(T,p)をティラー展開すると、0<θ<1 として
     V=V(T₀, p₀)+{ (T-T₀)(∂/∂T)+(p-p₀)(∂/∂p) }V(T₀+θ(T-T₀), p₀+θ(p-p₀))
 となる。導関数が定数と仮定するので、V₀=V(T₀, p₀) として、(2.1)から
     V=V₀+(T-T₀)βV₀+(p-p₀)κV₀
 となり、(2.2)が得られる。

 (3.3)に(3.1)を入れると
     δQ=TdS=CpdT-T(∂V/∂T)p dp ・・・・・・・・・・・・(4.1)
 となり、(2.2)を使って微分を計算すると
     dS=Cp(dT/T)-V₀βdp=d(Cp logT-V₀βp)
 となり、積分すると(2.3)を得る。

 つぎに、p=p(T,V) より
     dp=(∂p/∂T)v dT+(∂p/∂V)T dV
 となる。これを、(4.1)にいれると
     δQ=TdS=CpdT-T(∂V/∂T)p { (∂p/∂T)v dT+(∂p/∂V)T dV }
          ={Cp-T(∂V/∂T)p(∂p/∂T)v} dT+T(∂V/∂T)p(∂p/∂V)T dV
 となる。

 dSは完全微分なので、この式と(3.2)のdTの係数は同じとなるから
     Cv=Cp-T(∂V/∂T)p (∂p/∂T)v=Cp-TβV(∂p/∂T)v ・・・・(4.2)
 を得る。ここで、(2.1)を使った。

 同様に、V=V(p,T) に(2.1)を使うと
     dV=(∂V/∂p)T dp+(∂V/∂T)p dT=V(-κdp+βdT)
 となるが、体積一定(dV=0)のとき、この式は (∂p/∂T)v=β/κ となり、これを
 (4.2)に入れると

     Cv=Cp-TβVβ/κ=Cp-VTβ²/κ ・・・・・・・・・・・(4.3)
 となる。ここで、(2.1)を使うと
     Vβ=(∂V/∂T)p=V₀β、Vκ=-(∂V/∂p)T=V₀κ
 となるので、(4.3)は
     Cv=Cp-VTβ²/κ=Cp-T(Vβ)²/(Vκ)=Cp-T(V₀β)²/(V₀κ)=Cp-V₀Tβ²/κ
 となり、(2.4)を得る。

[参考文献]
 熱力学・統計力学、W.グライナー他、丸善出版(P100,112)

以上


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