特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

ロケットと隕石がすれちがう時間

2019-03-15 22:22:31 | 特殊相対性理論
1. まえがき
 
 あるサイトに、ロケットと隕石がすれ違う時間の問題があった。典型的な計算問題と
 思われるので紹介する。
 
 地上S系において、固有長さL(固有長さとはロケットに固定した慣性系におけるロケ
 ットの長さ)のロケットが+x方向に速度 v(>0)で、隕石の長さが無いとしてが -x方
 向に速度 -u(<0)ですれ違う時、S系、ロケットに静止した慣性系S'、隕石に静止した
 座標系S''における各すれ違い時間を求めよ。
 

2. 地上、S系の計算

 S系でのロケットの先端と後端の座標をx₁,x₂とし、隕石の座標をx₃とする。簡単のた
 め、t=0で、x₁=x₃=0とする。このときは、t'=t''=0で、x₁'=x₁''=x₃'=x₃''=0 でも
 ある。まず、S系で各座標の運動は
   x₁=vt , x₂=x₀+vt , x₃=-ut ・・・・①
 となる。x₀は定数。当然、x₁,x₂のS'系での座標x₁',x₂' は定点であり、
     x₁'=γ(v)(x₁-vt)=0, x₂'=γ(v)(x₂-vt)=γ(v)x₀
 となる。ここで、(x₁'-x₂')は定義から Lなので、x₀=-L/γ(v) となり、①は
   x₁=vt , x₂=-L/γ(v)+vt , x₃=-ut・・・・①'
 となる。

3.  ロケット、S'系における通過時間

 ロケットの先端を隕石が通過する時刻は t'=0と合わせたので、ロケットの後端の通過時
 刻t'がS'系でロケットを通過する時刻となる。➀'から
   x₂'=γ(v)(x₂-vt)=γ(v)(-L/γ(v)+vt-vt)=-L (当然)
   x₃'=γ(v)(-ut-vt)=-γ(v)(u+v)t
 そして x₃'=x₂'(=-L) のとき、隕石は後端を通過するから、
   t=(L/γ(v))/(u+v)・・・・②
 である。

 この時の x₂'=-L においてのS系での時刻は
   t=γ(v)(t'+vx₂'/c²)=γ(v)(t'-vL/c²)
 ➁に入れて
   t'=vL/c²+L/{(u+v)γ(v)²}=L(1+uv/c²)/(u+v)
 となる。これが求めるロケットの通過時間となる。

 ちなみに、S'系における隕石の速度は(速度の加法定理から)-(u+v)/(1+uv/c²)となり、
 これを使って、S'系のロケットの長さLを割ったものになっている。

4. 地上、S系における通過時間

 t=0 で先端を通過するから、後端で x₂=x₃となる時刻が通過時間となる。➀'から
   t=L/{γ(v)(u+v)}
 である。

 これは、S系でのロケット長L/γ(v)を相対速度(u+v)で割ったものになっている。

5. 隕石、S''系での通過時間

 このときも、隕石とロケットの先端が一致する時刻は t=t''=0 だから、後端の時刻を求め
 ればよい。➀'から
   x₃''=γ(u)(x₃+ut)=0 (当然)
   x₂''=γ(u)(x₂+ut)=γ(u)(-L/γ(v)+vt+ut)=γ(u){-L/γ(v)+(v+u)t}
 これも x₂''=x₃''(=0) となる時刻に、後端をロケットの通過する。これを解くと
   t=L/{γ(v)(v+u)}・・・・・③
 S''系の時刻は(x''=0での)
   t=γ(u)(t''-ux''/c²)=γ(u)(t''-u・0/c²)=γ(u)t''
 となり、➂から
   t''=L/{γ(v)γ(u)(v+u)}・・・・④
 が、S''系でのロケットを通過する時間となる。

 ちなみに、S''系から見た、ロケットの速度は w=(v+u)/(1+uv/c²)
 となり、γ(v)γ(u)=γ(w)/(1+uv/c²) を使うと④は
   t''=L/{γ(v)γ(u)(v+u)}=(L/γ(w))/w
 となるので、S''系でのロケット長 L/γ(w) をロケットの速度 wで
 割ったものになっている。

以上