特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

運動する直角レバーのパラドックス

2019-05-26 19:49:18 | 特殊相対性理論

1.まえがき

 直角レバーのパラドックスというものがある。これはパノフスキー、江沢洋、石原藤夫、細野敏夫
 の各氏の書籍に載っているが、前者3人の説明は理解できなかった。これらを紹介する。

2.パラドックスの内容

 慣性系Sに静止した直角レバーが O点で固定されて回転できるようになっている。図のように、そ
 れぞれ O点からの距離Lの A点には、+y方向の力 Fが、B点には -x方向に力 -Fが加わって釣り合
 っている。これをS系に対して、+x方向に速度 v
をもつ慣性系 S'系で見ると、レバーは速度 -vで
 x'方向に運動している。

 このとき、x' 方向の長さは L'=L/γに短縮、y' 方向の力は F'=F/γとなる( 
γ=1/√(1-v²/c²) )。
 すると、モーメントは FL/γ²-FL≠0 となり回転してしまう。慣性系を
変えただけでレバーが回転
 するのはおかしい。



3.細野氏の説明

 レバーが釣り合っているということは、S系で加えた力の反作用が A,B各点に存在する。すると
 この反作用という力も同様にA',B'点で -F/γ、+Fとなり、これら各点の合力は0である。この説
 明は簡明かつ完ぺきである
。しかし、身も蓋も無い
説明ではあり、疑問点に正面から向き合って
 いない気がする(モーメントの釣合とは何か?)。ただ、これを考えると下記
のようにとても困
 難となる。


4.石原氏の説明

 まず、S系でt=0でA,B点に F,-Fを加えたとする。この現象はS'系では
   A'点は x'=γ(x-vt)=γ(0-v・0)=0 , t'=γ(t-vx/c²)=0
   B'点は x'=γ(L-v・0)=γL ,            t'=γ(0-vL/c²)=-γvL/c²
 となる。つまり、B'点のモーメントは (F/γ)γL=FL となり、釣り合う

 しかし、A',B'点では力の加わる時刻が異なっている。つまり、B'点の長さγLは異なった時刻で測
 ったものであり、この物理的意味がはっきりしない。これはモーメントだろうか? つまり、モー
 メントの長さとして、t'=-γvL/c²のA'点と、t'=0のO'点の差γLを使う根拠がない。

 ただ、A'点で t'=-γvL/c²に発生したモーメントと、B'点で t'=0 に発生したモーメントは同時刻
 にO'点に到達する。何故かというと、S系でA,B点に同時に発生したモーメントはある速度 uで O
 点に同時に到達する(S系のつり合いの条件)。すると、計算するまでも無く、ローレンツ変換の
 示す所により、同一地点の同時は慣性系を変えたS'系の O'点でも「同時」であるから。

5.パノフスキーの説明

 まず、S'系のモーメントは FL/γ²-FL=-FLv²/c²(時計回り) となるが、O'B'の部分は毎秒 -Fv
 の仕事をしているので、レバーの角運動量は dM'/dt'=-Fv(vL/c²)=-FLv²/c² の割合で減少して、
 上のモーメントと「バランス」するというのである。訳が分からない。

 さらに、なぜ仕事率 -Fvがモーメントと関係するのか、vL/c² は時間の単位だが何の時間か書か
 れ
ていない。これらの積は仕事であるがモーメントと言えるのだろうか?(r×F の単位は仕事で
 は
あるけれど、rの方向が仕事の方向と違う)ましてや、なぜ角運動量の時間変化になるのだろう
 か?

6.江沢氏の説明 

 この説明はパノフスキーに準じたものと思われ、「y軸方向の腕には下端で fVの、上端で -fVの仕
 事がされている。単位時間当たり fVのエネルギーがてこの下端から注ぎ込まれ上端から吸い出さ
 れている」というのであるがいったい何が流れているのだろうか?(エネルギーなのだろうが、そ
 の実体は何?)私には理解不能だ。

7.あとがき 

 はじめは、石原氏の説明に納得していたが、上のようにまずいと思った。これらはモーメントと
 いう概念の相対性を理解できていないせいかもしれない。


[文献]

  電磁気学上、パノフスキー、丸善、1967
  相対性理論、江沢洋、裳華房、2008 / 相対性理論とは?、江沢洋、日本評論社、2005
  メタ電磁気学、細野敏夫、森北出版、1999
  SF相対論入門/宇宙旅行と四次元の世界、石原藤夫、講談社〈ブルーバックス〉、1971

以上


級数 (1/n){n/1!+(n-1)/2!+・・・+2/(n-1)!+1/n!}の極限値

2019-05-26 11:29:59 | 解析(極限・数列)

級数
   S[n]=(1/n){n/1!+(n-1)/2!+・・・+2/(n-1)!+1/n!}
の極限値を求める問題があった。とてもやりにくい形で、積分化による収束判定も使えない。ヒント
に基づいて解いてみた。

   S[n]=1+(1-1/n)/2!+(1-2/n)/3!+・・・+{1-(n-2)/n}/(n-1)!+{1-(n-1)/n}/n!
     ={1+1/2!+1/3!+・・・+1/n!}-(1/n){1/2!+2/3!+・・・+(n-1)/n!}

ここで、「補題1と2」から
   (1/n){1/2!+2/3!+・・・+(n-1)/n!}→0
   1+1/2!+1/3!+・・・+1/n!→e
となり、結局
   S[n]→e (n→∞)
をえる。


[補題1]
 以下はよく知られた結果である。
   1+1/2!+1/3!+・・・+1/n!<e
   1+1/2!+1/3!+・・・+1/n!→e (n→∞)

[補題2]
   P[n]=(1/n){1/2!+2/3!+・・・+(n-1)/n!}→0
[証明]
   a[n]=(n-1)/n!→0 のときは、(1/n)(a[1]+a[2]+・・・+a[n])→0 なので
   (1/n)(a[1]+a[2]+・・・+a[n])=P[n]→0

 あるいは「補題1」から
   P[n]≦(1/n){2/2!+3/3!+4/4!・・・+n/n!}
      =(1/n){1+1/2!+1/3!・・・+1/(n-1)!}<e/n→0

以上


有限長電線に流れる電流のパラドックス➁

2019-05-22 15:43:47 | 特殊相対性理論

1.まえがき

 有限長電線に流れる電流のパラドックスとして、もうひとつ面白い(深刻というか)ものがある
 慣性系Sで静止した有限長電線に電流が流れている。このとき電界は無いから、その横に置かれ
 た静止電荷Qには力は働かない(どの位置においても)。ここでS系に対して速度vをもつ慣性系
 S’ を考える。

 このときも、電荷Qは速度 -v で運動するので、ローレンツ力は打ち消されて力は加わらない。
 しかし、図のように導線の真横に電荷Qを置くと、電線の分離した電荷によって力が働くはず
 である(-v以外の運動をする)。前の記事と同様に慣性系を変えただけで力の有無が違うのはお
 かしい。



2.計算と考察(1)

 まず、z=0面での電磁界を計算してみる。S系では E=0, B=(0,0,Bz) だから、S’系では
    E’=(0,γvBz,0) , B’=(0,0,γBz) , F’=Q(E’-v×B’)=0
 となるので、S’系でも電界と磁界の力が打ち消して、S'系で -vの運動をする電荷Qには力は働か
 ない。大体、発生する電界はy方向のみである(Bzは座標によって変わる)。

 つまり、問題はS'系ではx方向の電界は0となるということになる。しかし、電線に発生した電荷
 によって、図の電荷Qにはx方向の力が働くように見える。
これはどう考えればよいのだろうか?

 この疑問は、電荷が発生して、それによって発生する電界という手順を考えることに問題がある
 実は話は逆なのである。計算のように電界はy方向にしか発生しない(だから電荷Qにはx方向の
 力は働かない)。したがって、その電界に対応する電荷が電線に発生していると考えればよいだ
 けである。

 つまり、無限直線電荷分布のようなy方向の電界が発生していることになる(S'系では、これに
 よって運動電荷Qに働く力は狭義のローレンツ力によって打ち消される)。

3.計算と考察(2)

 上の論理ではある意味、身も蓋も無いことになる(パラドックスの論理に対して正面から向き
 合っていない)ので、y=z=0 として簡単な計算をしてみる。

 γ=1/√(1-u²/c²) として、電流を構成する負電荷は前の計算より、ρ_'=-q/γ であり、この電
 荷はS'系で静止しているから、kを定数として、電荷からx' 離れた位置の電界は
 Ex_'=-k((q/γ)dx')/x'²=-k(qdx')/(γx'²) となる。

 これに対して、正電荷 ρ₊'=γq は -u で運動している。運動電荷の電界はリエナール・ヴィー
 ヒェルト・ポテンシャル
などから求められ、Ex₊'=k(γqdx')/(γx')²=k(qdx')/(γx'²) となる。
 したがって、Ex'=Ex_'+Ex₊'=0 となる。

 しかし、
この計算は y=z=0 でしか通用しない。一般的に、電荷から電界を計算することは私
 には難しい(上の計算も正しいか自信がない)。

4.おわりに

 引用したサイトは計算式もあり、もう少し論点を絞り問題を簡明すると良い演習問題になる。
 この種の問題は複雑怪奇にしたり時空図を持ち込んだりして訳
がわからなくなるようにして、
 煙に巻くのが常とう手段だ。


 この中で、注意を引くのが L字型(直角)レバーのパラドックスである。これはパノフスキー、
 江沢洋、細野敏夫、石原藤夫の各氏の書籍に載っているが、後者の二人の説明は納得いくのだ
 が、それでも、なんとなくすっきりしない。

 特殊相対性理論と力学はあまり相性が良くない(式が複雑)。ある意味、微妙な問題を含んでい
 るのだろうか。あるいはモーメントという概念の相対性について考えが足りないのかもしれない。

[文献]
  電磁気学上、パノフスキー、丸善、1967
  相対性理論、江沢洋、裳華房、2008 / 相対性理論とは?、江沢洋、日本評論社、2005
  メタ電磁気学、細野敏夫、森北出版、1999
  SF相対論入門/宇宙旅行と四次元の世界、石原藤夫、講談社〈ブルーバックス〉、1971

以上


ランダウの記号の演算

2019-05-21 13:07:54 | 解析

1.まえがき

 ランダウの記号があるがこれらの演算についてはあまり明確な説明が無い。あるQAがあったの
 で調べてみた。


2.定義

 lim[x→a,x≠a] f(x)/g(x)=0 のとき、f(x)=o(g(x)) (x→a) と書く。
 あるいは ∀ε>0,∃δ>0 , |x-a|<δ → |f(x)/g(x)|<ε

 ∃M>0 して、lim[x→a,x≠a] |f(x)/g(x)|<M のとき、f(x)=O(g(x)) (x→a) と書く。
 つまり、o(g(x))=O(g(x)) であるが、次のように等号の意味には注意が必要となる。

 たとえば、x²=o(x) , x³=o(x) であり、o(x)は何か一つの関数を示すものではなく、等号も本
 来の意味とは異なる便宜的な記号である。

 あるいは、o(x²)=o(x) は成り立つが o(x)=o(x²) は成り立たない。つまり、上の定義での
 書き方の順序が意味を持つ。

3.例題

 あるサイトの例などを紹介する。
 (1) a>b のとき、xa=o(xb) (x→0)
 (2) x²+y²=o(|x|+|y|) ((x,y)→0)
 (3) xno(xm)=o(xn+m) , o(xn)o(xm)=o(xn+m)
 (x→0)
 (4) sin x=x+o(x²) , (1-cos x)=x²/2+o(x²)  (x→0)    から
   sin x(1-cos x)=(x+o(x²)(x²/2+o(x²))=x³/2+o()(x²/2)+xo()+o()o()
          =x³/2+o(x⁴)+o()+o(x⁴)=x³/2+o()+o(x⁴)
          =x³/2+o()

4.公式

 (1) o(f(x))±o(f(x))=o(f(x))

   g(x),h(x)=o(f(x)) → |g(x)|,|h(x)|<(ε/2)|f(x)|

   k(x)=o(f(x))±o(f(x))=g(x)±h(x)
   |k(x)|≦|g(x)|+|h(x)|<ε|f(x)| ⇒ k(x)=o(f(x)) ⇒ o(f(x))±o(f(x))=o(f(x))

   [注意]o(f(x))-o(f(x))=0 とはできない。
       上の計算で |x|<δ は3つあるが、定石として最小のものを取る。以下の
       議論も同様である。

 (2) o(f(x))O(g(x))=o(f(x)g(x))

   h(x)=o(f(x)), k(x)=O(g(x)) → |h|<(ε/M)|f|, |k|<M|g| → |hk|<ε|fg|

    ⇒ hk=o(fg) ⇒ o(f))O(g)=o(fg)

 (3) |g(x)|≦Mのとき、g(x)o(f(x))=o(f(x))

   h(x)=o(f(x)) → |h(x)|<(ε/M)|f(x)| → |g(x)h(x)|<M(ε/M)|f(x)|=ε|f(x)|

    ⇒ g(x)h(x)=o(f(x)) ⇒ g(x)o(f(x))=o(f(x))

 (4) |g(x)|≦Mのとき、g o(f)+o(f)=o(f)
   わずらわしいので、略したが f,g,h,k,l はすべて xの関数。
   h,k=o(f) → |h|<(ε/2M)|f| , |k|<(ε/2)|f|

   l=g o(f)+o(f)=gh+k → |l|=|gh+k|≦(M(ε/2M)+(ε/2))|f|<ε|f|
    ⇒ l=o(f) ⇒ g o(f)+o(f)=o(f)

 (5) o(o(f(x))=o(f(x))

   ε=1 にとる。g=o(f) → |g|<ε|f|=|f|
   ∀ε>0 について(δを適当に取って)、
   h=o(o(f)=o(g) → |h|<ε|g|<ε|f| ⇒ h=o(f) ⇒ o(o(f))=o(f)
   
   これを利用すると、(4) から o(g o(f)+o(f))=o(f) が成り立つ。

 (6) |f(x)|≦M のとき、o(f(x)x+o(x))=o(x) (x→0)

   ε=1 にとって、g=o(x) → |g|<|x|
   h=o(f(x)x+o(x))=o(f(x)x+g(x)) →
   ∀ε>0 に対して ε/(M+1)をとり(δを適当に取って)、
   |h|<(ε/(M+1))|f(x)x+g(x)|≦(ε/(M+1))(|f(x)x|+|g(x)|)≦ε|x|
    ⇒ h=o(x) ⇒ o(f(x)x+o(x))=o(x)

5.あとがき

 ランダウの記号についてはやっぱり物理は杜撰だなぁ、と思っていたが、キッチリとした背景
 があるとは思っていなかった。さらに、ランダウとは、な、なんと数学者だった!! なんと
 いう思い込み。

文献
  解析入門Ⅰ、杉浦、東京大学出版会

以上


有限長電線に流れる電流のパラドックス

2019-05-17 14:27:39 | 特殊相対性理論

1.まえがき

 無限長電線に流れる電流という設定を使って、座標系を変換した時、磁界と誘導電界の等価性の
 説明に使わ
れている。このときは、両端が無いので問題ないが、有限長になると、ある種のパラ
 ドックスが指摘されている。そこで有限長電線に流れる電流
について考えてみる。

 2. パラドックスの概要

 まず、長さLの導線(正イオン)が静止した系をS系、速度uの電子に固定した座標系をS’ 系とす
 る。この導線には、垂直に導線が接続されて、電流が流れている。このとき、つぎの疑問がある。
 ここで、γ(u)=1/√(1-u²/c²) とする。

 (1)  S系でそれぞれ、長さLをもつ正イオンの導線部分はS'系では速度(-u)をもつため、L/γに
   短縮し、速度uをもつ電子の部分はS系では短縮しており、S’ 系では停止するため、長さは
   γLに伸長する。すると電子が導線からはみ出てしまう。これはおかしい

 (2)  正イオンと電子の線電荷密度をS系でq、-qとすると、S’ 系では、それぞれ γq、-q/γとな
   る。すると、Lの部分の電荷は、<正イオン>=γqL/γ=qL、<電子の電荷>=(-q/γ)γL=-qL
   となり、電荷は保存されている。しかし、もし電子が正イオンの範囲 L/γにあれば
   <電子の電荷>=(-q/γ)L/γ=-qL/γ²となって、電荷が保存されない

 つぎに、これらのことを実際に計算してみる。


3.
 S’ 系の座標・長さの計算

 図2のように、導体棒(正イオン)の両端A,BのS系の時刻 t=0 における座標 x=0,L はローレ
 ンツ変換により、S’ 系で、それぞれ (x’,t’)=(0,0) および (x’,t’)=(γL,-γLu/c²) である。つま
 り、B'端は x'=γL と伸長しているが、時刻は t'=-γLu/c²<0 であり、A端の時刻 t'=0 以前の

 座標で
ある。S'系では導体棒は -uで運動しているから、B'の座標は t'=0 には x'=
 γL-u(γLu/c²)=L/γ 
のB''端の座標になり(A'端は x'=0 のA''端に移動する)、短縮している
 ことには変わりない。つまり、
2項の(1)は解釈が誤っており、パラドックスは無い

 導体棒の端で起きている現象のイメージは、S'系に停止した電子を -uで運動するB'端が吸い取っ
 ていき、A'端では電子を供給している。


4.S’ 系の電荷保存の計算(1)

 つぎに、電荷保存を考える場合、上のモデルは下側に電流が途切れているので理論的に不備であ
 る。そこで図3のようなループ回路を考える。



 まず、S系で静止しているAB、CD間の正イオンの電荷保存について考える。電荷の線密度をqと
 すると、S系の電荷は2qLとなる。S’ 系での電荷は(正イオンのS系の速度はv=0だから i=qv=0)
 ρ’=γ(q-ui/c²)=γq、長さは L/γになるので、ρ’L/γ=qL と
なって保存されている。 

 つぎに、電子の電荷保存を考えるが、S系では、正イオンと同じ(符号は逆)線電荷密度(-q)を
 持つから、AB、CD間の全電荷は(-2qL)である。S’ 系での電荷密度は(S系で i=-qu だから)
 ρ’=γ(-q-u(-qu)/c²)=-q/γ となるから、全電荷は

    Q₁=(-q/γ)L/γ=-qL/(γ(u))²=-qL(1-u²/c²)・・・・・①
 となり、保存されていない

 つぎに、CD間を考える。S系で電子は速度(-u)をもつ。この電荷は速度変換則により、S' 系で
 速度
    v=(-u-u)/(1-(u)u/c²)=-2u/(1+u²/c²) ・・・・②
 をもつ。速度(-u)の電荷線密度 -qは静止座標で電荷線密度は ρ₀=-q/γ(u)である。この電荷の
 S' 系で
の線密度 ρ' は、ρ₀が速度vの座標に移ったものだから ρ'=γ(v)ρ₀=( γ(v)/γ(u) )(-q)
 である。


 結局、C’ D’ 間の全電荷は
    Q₂=ρ'L/γ(u)= -( γ(v)/γ²(u) )qL  ・・・・・・・③
 となる。ここで、②を使って
    1/γ(v)²=1-v²/c²=1-(4u²/c²)/(1+u²/c²)²=(1-u²/c²)²/(1+u²/c²)²
        =1/{γ⁴(u)(1+u²/c²)²}
 つまり、γ(v)=γ²(u)(1+u²/c²) 
となる。これを③に代入すると Q₂=-qL(1+u²/c²) となる。
 ①からS' 系でのA’ B’ 、C’ D’ 間
の全電荷は
    Q₁+Q₂=2qL
 となって、S'系でも回路全体として保存されている。そして、S'系では正負の電荷を考えると回
 路の上側は+に下側
は-に帯電する。

 5.S’ 系の電荷保存の計算(2)

 以上でS'系ても回路全体として、電荷保存することを示したが、上下の電線で電荷が偏っている。
 これについて、少し考察する。簡単にするため、帯電していない(ρ=0)ループに電流 i だけが流
 れ
ているとする。 

 図4のようにS’ 系に静止した四角枠コーナB'の➃⑤の出入りの部分で(ρ=0, ui=-ui, i(//)=0)
     i’=γ(i-uρ)=γi , ρ’=γ(ρ+ui/c²)=γui/c²・・・・④
     i’=i(⊥)=i , ρ’=γ(ρ-ui(//)/c²)=0・・・・・・・⑤
 となる。

 ここで、B'の部分での電流を考えると、➃で電流γiが流出し、⑤で i が流入するため、電流の
 連続
が満たされていないように見えるが、⑤の部分では電線の断面が1/γに短縮している。結
 局、電
流の差は
     γi – i/γ=γi(1-1/γ²)=γi(u/c)²・・・・・⑥
 となる。また、➃の部分の電荷密度は γui/c²>0 であるが、この部分は -u で移動して、単位
 時間
当たり (γui/c²)u の電荷が消失している。つまり、⑥のの電荷が流出していることと
 致して、電流連続ではなく、電荷保存則(div i=-∂ρ/∂t)が成立している。

以上