1. まえがき
以前、抵抗に供給される電力として VI が使われているが明確な説明がない。これについて
改めて考えた。
2. 概略の説明
まず、電源でも抵抗でも電流の向きが逆なだけで理屈は同じなので電源について考える。
電源の電圧をV、流れる電流をIとする。
Vは単位電荷がこの電位差を移動したときの仕事だから I=dQ/dt と電流連続により、dt時
間の間に、dQの電荷が電源全体で移動しているので、電位差Vを電荷dQが移動したことに
なる。つまり、単位時間あたりの仕事(電力)は VdQ/dt=VI になる。そして、抵抗のとき
は、電流の方向が逆なので、電力の供給になる。
ところが、内部の電界や電荷・電流分布が一様でないので上の議論は無理があり、精細な
議論を考える。
3. 精細な議論
電磁界のエネルギー方程式はポインティングの定理
dU/dt=-∲∂τ S・dA-∫τ E・i dτ ・・・・・・・・・・・・・・・①
ここで、
U=∫τ(εE2/2+μH2/2)dτ , S=E×H
である。Uは電磁界による内部エネルギー、①の右辺第2項は電磁界が領域τにする単位時
間当たりの仕事(電力)です。
図のようにτとして電源を包む領域に取ります。電源の場合、電磁エネルギーの内部変化は
無いから、①式では dU/dt=0 となる。すると
P=∫τ E・i dτ=-∲ ∂τ S・dA
となり、右辺から、(-があるので)領域内に侵入する電磁エネルギーが領域に成される単位
時間当たりの仕事(電力)Pになります。また、E=-∇V として、ベクトル解析の部分積分
の公式から
P=-∫τ ∇V・i dτ=-∲ ∂τ Vi・dA+∫τ V∇・i dτ
となる(https://www.ims.tsukuba.ac.jp/~shugo_suzuki_lab/intro_vector.pdf の(6.13))。
ここで「準定常電流」と仮定すれば、電荷保存則から
∇・i=-∂ρ/∂t=0
なので、上式の右辺第二項は消えて
P=-∲ ∂τ Vi・dA
となる。電源表面の積分において、電極以外の表面の電流の出入りは無く、i・dA=0 だか
ら、電流が出入りのあるのは残りの電極のみで、等電位だからVは積分の外に出せて
P=-∲∂τ Vi・dA=-(V1∫A₁ i・dA+V2∫A₂ i・dA)=-(V1-V2)I=-VI
ここで
I=∫A₁ i・dA=-∫A₂ i・dA (A1面では i・dA>0、A2面では逆)
を使った。Pが負なので、これは電源の外部にした単位時間当たりの仕事になる。
Rの場合も同様の議論ができ、領域について電流の方向が逆だから
P=VI
となり、正なのでRに成される仕事率になる。このとき、熱力学の第一法則により、
dU=δW+δQ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・②
の関係がありますが、ジュールの実験結果よりRでは(C,Lと違って)仕事が成されても、す
べて熱に変換され、内部エネルギーは変化しません。つまり
dU=0
となる。
ちなみに、Lの内部は E=0、Cの内部は i=0なので、①の右辺第二項は0となり、外部から
供給されたエネルギーは内部エネルギーU(電界や磁界)になります。
4. あとがき
準定常電流で、時間変化する電圧・電流の場合も上の議論が成り立つ。ただ、電源やC、L
の時、VIの正負により、瞬間的に電力の入出力が変わり、入力の場合は、電磁界の内部エ
ネルギーの変化となる。つまり、電源であっても内部に C、Lを内蔵するモデルとなる。
以上
1.まえがき
三相交流の無効電力を求める問題があった。これをフェザー法で求める。
2.計算
スター結線において、相電圧、相電流を Va, Vb, Vc, Ia, Ib, Ic 、力率を cosθ とする。
V=|Va|=|Vb|=|Vc| , I=|Ia|=|Ib|=|Ic|
ここで、Va=V exp(jα) 、負荷を Z とすると、 Va/Ia=Z=|Z|exp(jθ) , V/|Z|=I なので、
Ia=Va/Z=V exp(jα)/( |Z|exp(jθ) )=I exp(j(α-θ))
となり
VaIa*=VI exp(jα)exp(-j(α-θ))=VI exp(jθ)
となる。また、a=exp(-j2π/3) とすると
Vb=aVa , Vc=a²Va , Ib=a Ia , Ic=a² Ia , a³=1
となる。
このとき、①から、有効、無効電力、P, Q は
P=3Re(VaIa*)=3VIRe(exp(jθ))=3VI cosθ
Q=3Im(VaIa*)=3VIIm(exp(jθ))=3VI sinθ
3.線間電圧をを使った有効電力の測定
線間電圧は
1-a=1-(-1/2-j(√3)/2)=(√3)exp(jπ/6) , (a²-a)(a²)*=1-a*=(√3)exp(-jπ/6)
なので
Vab=Va-Vb=(1-a)Va , Vcb=Vc-Vb=(a²-a)Va
Pab=Re{Vab Ia*}=Re{(1-a)VaIa*}=Re{(√3)VIexp(jπ/6)exp(jθ)}=(√3)VIcos(θ+π/6)
Pcb=Re{Vcb Ia*}=Re{(a²-a)Va(a²)*Ia*}=Re{(√3)VIexp(-jπ/6)exp(jθ)}
=(√3)VIcos(θ-π/6)
となる。したがって
Pab+Pcb=(√3)VI {cos(θ+π/6)+cos(θ-π/6)}=(√3)VI 2cos(π/6)cosθ=3VI cosθ
となって、この系によって、有効電力が測定できる。
4.線間電圧をを使った無効電力の測定
a²-a=-1/2+j(√3)/2-(-1/2-j(√3)/2)=j√3
(1-a)(a²)*=(1-a)a=a-a²=-1/2-j(√3)/2-(-1/2+j(√3)/2)=-j√3
なので
Qa=Re{Vbc Ia*}=Re{-(a²-a)VaIa*}=Re{ -(√3)VI jexp(jθ) }=(√3)VIsinθ
Qc=Re{Vab Ic*}=Re{(1-a)Va(a²)*Ia*}=Re{ (√3)VI (-j)exp(jθ) }=(√3)VIsinθ
したがって
(√3)Qa=(√3)Qc=3VI sinθ
となって、無効電力が測定できる。
以上
つぎ図のようなの RC回路の電流を求める問題があった。
各コンデンサの初期電荷は0である。
2.計算
回路式は
Ri+q₁/C₁=E・・・・・・・・①
q₁/C₁=R₂i₂+q₂/C₂
i₁=q₁' , i₂=q₂'
i=i₁+i₂ → i=q₁'+q₂'・・・・・②
なので
Rq₁'+q₁/C₁+Rq₂'=E , -q₁/C₁+R₂q₂'+q₂/C₂=0
微分演算子Dを使うと
(RD+1/C₁)q₁+RDq₂=E・・・・・④
q₁/C₁=(R₂D+1/C₂)q₂ ・・・・・⑤
④に(R₂D+1/C₂)をとって、⑤を使うと
(R₂D+1/C₂)(RD+1/C₁)q₁+RD{(R₂D+1/C₂)q₂}=(R₂D+1/C₂)E
→ {R₂RD²+(R/C₂+R₂/C₁)+1/C₁C₂}q₁+(R/C₁)Dq₁=E/C₂
→ {R₂RD²+(R/C₁+R/C₂+R₂/C₁)+1/C₁C₂}q₁=E/C₂
→ {D²+(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)+1/RR₂C₁C₂}q₁=E/RR₂C₂・・・・⑥
⑥の特殊解は代入すれば
q₁=C₁E ・・・・・・・・・・⑦
とすぐわかる。また、⑥の特性方程式は
D=-(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)/2±√{(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)²/4-1/RR₂C₁C₂}・・・⑧
ここでルート内を4倍したものは
{(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)²-4/RR₂C₁C₂}
=1/(R₂C₁)²+(2/R₂C₁)(1/R₂C₂+1/RC₁)+(1/R₂C₂+1/RC₁)²-4/RR₂C₁C₂
=1/(R₂C₁)²+(2/R₂C₁)(1/R₂C₂+1/RC₁)+(1/R₂C₂-1/RC₁)² > 0
となる。また、ルートは⑧から (1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)/2よりも小さいので
p₁=(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)/2+√{(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)²/4-1/RR₂C₁C₂}
p₂=(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)/2-√{(1/R₂C₁+1/R₂C₂+1/RC₁)²/4-1/RR₂C₁C₂}
とおくと
p₁>p₂>0
となることもわかり、⑥の斉次式の一般解は公式よりわかり、⑦の特殊解も含め非斉
次式の一般解は
q₁=Aexp(-p₁t)+Bexp(-p₂t)・・・・・⑨
となる。
初期条件から
q₁(0)=0=A+B・・・・⑩
また、q₁(0)=q₂(0)=0 から、C₁, C₂の電圧は0であり、Rには Eの電圧がかかるから、
i(0)=E/R である。C₁,C₂の電圧が0だから R₂の電圧も0であり、i₂(0)=0 となる。した
がって、i₁(0)=i(0)-i₂(0)=E/R となる。
すると⑨を微分して
i₁(0)=E/R=-Ap₁-p₂B・・・・・⑪
⑩⑪から
A=-E/{R(p₁-p₂)} , B=-A=E/{R(p₁-p₂)}
まとめると
q₁=( E/{R(p₁-p₂)} ){-exp(-p₁t)+exp(-p₂t)}=(E/R){1/(p₁-p₂)}{-exp(-p₁t)+exp(-p₂t)}
i₁=(E/R){1/(p₁-p₂)}{p₁exp(-p₁t)-p₂exp(-p₂t)}
①から
i=E/R-q₁/RC₁=E/R-(E/R){1/RC₁(p₁-p₂)}{-exp(-p₁t)+exp(-p₂t)}
=(E/R)[ 1-( 1/{RC₁(p₁-p₂)} ){-exp(-p₁t)+exp(-p₂t)} ]
=(E/R)[ 1+( 1/{RC₁(p₁-p₂)} ){exp(-p₁t)-exp(-p₂t)} ]
②から
i₂=i-i₁=(E/R)[ 1 +{ 1/{RC₁(p₁-p₂)}-p₁/(p₁-p₂) }exp(-p₁t)
+{ -1/{RC₁(p₁-p₂)}+p₂/(p₁-p₂) }exp(-p₂t) ]
=(E/R)[ 1 +{ (1/RC₁-p₁)/(p₁-p₂) }exp(-p₁t)+{ -1/RC₁+p₂)/(p₁-p₂) }exp(-p₂t) ]
となる。
以上
1.まえがき
図のような RC回路でスイッチの開閉を繰り返すとき、十分時間がたった時のCの電圧v
を求める問題があった。
2.説明
Cの電圧を v、C,Rの下向きの電流を i, j、Cの上側の電荷を +qとする。すると
i=q'=Cv' , j=v/R
となる。また
E'=E/(1+r/R)
とおく。
t=0 で、閉から始まるとすると、以前は開なので
v(0)=0
で、時間間隔 Tで、スィッチSの開閉を行う。1組の閉開動作の回数を n=0,1,2,・・・と
する。つまり、1組の動作時間は 2T となる。
3.閉の回路式(2nT≦t≦(2n+1)T のとき)
r(i+j)+v=E → r(Cv'+v/R)+v=E → rCv'+(1+r/R)v=E
この特殊解は v=E/(1+r/R)=E' とすぐわかり、斉次式の解はよく知られており、変数分離
によるまでもなく、代入すればすぐわかるように
v=E'+Aexp{-p(t-2nT)} , p=(1+r/R)/rC
となる。
初期電圧は t=2nT で v(2nT)だから
v(2nT)=E'+A なので、A=v(2nT)-E'
となる。したがって
v=E'+{v(2nT)-E'}exp{-p(t-2nT)}・・・・・・・・①
4.開の回路式( (2n+1)T≦t≦(2n+2)T のとき )
i=-j なので
v=Rj=-Ri=-RCv'
この解は同様に
v=Aexp{-s(t-(2n+1)T)} , s=1/RC
となる。
初期電圧は t=(2n+1)T で v((2n+1)T)だから v((2n+1)T)=A なので
v=v((2n+1)T)exp{-s(t-(2n+1)T)}・・・・・・・②
5.v(2nT) の計算
v(0)=0
v(T)=E'+{v(0)-E'}exp(-pT)=E'{1-exp(-pT)}・・・・・①から
v(2T)=v(T)exp(-sT)=E'{1-exp(-pT)}exp(-sT)・・・・・②から
一般に
v((2n+1)T)=E'+{v(2nT)-E'}exp(-pT)・・・・・①から
=E'{1-exp(-pT)}+v(2nT)exp(-pT)
v((2n+2)T)=v((2n+1)T)exp(-sT)・・・・②から
=[ E'{1-exp(-pT)}+v(2nT)exp(-pT) ]exp(-sT)
=E'{1-exp(-pT)}exp(-sT)+v(2nT)exp{-(p+s)T}
v((2n+2)T)-E'=E'{exp(-sT)-1}+{v(2nT)-E'}exp{-(p+s)T}
となる。
ここで、
u(n)=v(2nT)-E' , a=E'{exp(-sT)-1} , b=exp{-(p+s)T}
とおけば
u(n+1)=a+bu(n) → u(n+1)-α=b(u(n)-α} , α=a/(1-b)
となる。この解は
u(n)=α+{u(0)-α}bⁿ (n≧0)
となる。
ここで、十分時間がたった時は n → ∞として
b=exp{-(p+s)T}<1 なので、bⁿ → 0
となる。したがって、
u(n)=α=a/(1-b)=E'{exp(-sT)-1}/[1-exp{-(p+s)T}]
=E'{1-exp(sT)}/{exp(sT)-exp(-pT)}
をえる。戻すと
v(2nT)=E'+u(n)=E'+E'{1-exp(sT)}/{exp(sT)-exp(-pT)}
=E'{1-exp(-pT)}/{exp(sT)-exp(-pT)}・・・・・・・③
6.v((2n+1)T) の計算
②で t=(2n+2)Tとして
v((2n+2)T)=v((2n+1)T)exp(-sT)
→ v((2n+1)T)=v((2n+2)T)exp(sT)=v(2nT)exp(sT)・・・・④
ここで、③からnに依存しないので、 v(2nT)=v((2n+2)T) を使った。
以上により、①と合わせて、④を使って、②を書き直すと
v=E'+{v(2nT)-E'}exp{-p(t-2nT)} ( 2nT≦t≦(2n+1)T )
v=v(2nT)exp(sT)exp{-s(t-(2n+1)T)} ( (2n+1)T≦t≦(2n+2)T )
ここで、v(2nT)は③となる。
以上
1. まえがき
「電気モグラ」、「世界一簡単な構造の電車」などという題名で、ボタン磁石を両端につけた
乾電池が、導体コイル中を運動する動画がたくさんある。しかし、ほとんど動作原理の説明が
無く、説明している動画も簡単すぎて疑問がある。
(1) コイルの磁界を磁極で説明しているが、磁性体の内部とは異なり、空芯コイルの内部の
磁界の方向は磁性体とは逆。つまり、コイルの外に「電車」を置いた時、逆方向に運動す
る説明が苦しい。というのは、どのような磁極と等価が難しい。
(2) ボタン電池は一つの磁極だけではなく、NSの2つの磁極が接近して存在し、この説明が
抜けている。
2. 設定
・ 怠惰なため実験での確認はできないが、動画から以下の推定をした。
・ コイルは裸導線で電池の接触によって電流が流れるが、ピッチ間でショートしないように
設定される。
・ ボタン電池はネオジウム磁石で導体でもある。電池の各極に同じ極を付ける(電池の極は
は磁性体である)。これらの吸着した部分は1つのNS極を持つ磁石となる。電池の内部の
黒鉛棒は磁性体でなく、両端は同一極なので無視してよい。つまり、両端にNS極が接近し
て存在する。
・ 電池の電流により、電池の負方向に向かう磁界ができるようにコイルがまかれている。
・ なお、磁界Hと磁荷mがあると F=mH という力が働く。
3. 考察
(1) 磁界を作るリング電流は電池の長さの範囲にあり、当然、電池の中心で大きく、両端に行
くにしたがって小さくなる。その変化は電池の両端で大きい。
(2) すると、図1のように両端のS極の力より、N極の力が大きい。その差によって、右方向の
力が働き、右方向に移動する。もし、これが正しければ、電池でない棒に磁石をつけ、長い
コイルの両端に電流を流すと、ほとんど動かないはずである。多分、入り口で引き込まれて
中に入った後、すぐ停止する。
(3) このことから、一方の端のNSを入替えると、力が反対方向になり、キャンセルされ、ほぼ
力が働かないことがわかる。さらに、両側ともにNSを逆にすると、逆方向の力が働き、左方
向に移動することがわかる。
(4) 以上のことから、磁石を重ねても、両端の磁荷はあまり変わらない。しかし、NS極の間隔
が離れるので、力の差は大きくなるはずで働く力は大きくなる。
(5) 最後に、図2のように、コイルの外側に乗せたときどうなるか。当然、磁界の向きは逆で小
さくなっている。だから、速度は小さく、移動方向は反対となる。
以上
[2019/9/13] 動画の追加、説明の修正。