特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

直線に接する円のとある幾何学的関係

2021-03-30 14:34:47 | 算数

1.まえがき

 座標系の原点をOとする。直線l: y=3x/4 上の点A(4,3)で、lに接する円をC₁とする。
 C₁は +x軸とも接する。円C₂は直線lについて円C₁と線対象である。円C₁上の点Pが点A
 について点対称のC₂上の点をQとする。

 このとき、円C₁の式と、三角形OPQの面積が 25/3 となるとき、直線 PQの傾きを求め
 よ。



2.計算

 (1) C₁の式

  円C₁の中心を(a,b)とする。つまり
    C₁: (x-a)²+(y-b)²=b²・・・・・①
  となる。これをxで微分して、この円の接線の傾きy'は
    x-a+(y-b)y'=0 → y'=-(x-a)/(y-b)
  となる。

  これが、A(4,3)でlと接すると傾きは 3/4になるから
    y'=-(x-a)/(y-b)=-(4-a)/(3-b)=3/4 → 4a+3b=25・・・・②
  また、AはC₁上にもあるから、①により
    (4-a)²+(3-b)²=b²
  となり、②を入れてbを消すと
    a²=25 → a=5 (>0)
  を得る。②から
    b=5/3
  ゆえに
    C₁: (x-5)²+(y-5/3)²=(5/3)²・・・・・③

 (2) 直線PQの傾き

  点対称だから、長さ QA=AP であり、3角形 OAQとOAP の面積は等しい。だから
  求める3角形OPQの面積Sは、ベクトルOP=<x,y> と OA=<4,3> の外積で表される
  平行四辺形の面積だから
    S=|<x,y>×<4,3>|=|3x-4y|=3x-4y=25/3
  となる(この順のベクトル積は+z方向となり、3x-4y≧0)。これに、④を入れると
    y=3x/4-25/12・・・・・⑤
  これを③に入れてまとめると
    x²-10x+25+(3x/4-25/12-5/3)²=25/9 → x²-10x+25+(3x/4-15/4)²=25/9
     → (1+9/16)x²-(10+45/8)x+25+(15/4)²-25/9=0
     → 25x²-250x+16・25+15²-16・25/9=0 → x²-10x+16+15²/25-16/9=0
     → x²-10x+209/9=0 → x=5±4/3=11/3, 19/3

  ⑤にいれて
    (x,y)=(11/3,2/3), (19/3,8/3)
  PQの傾きmは
    (11/3,2/3)のとき m=(3-y)/(4-x)=7
    (19/3,8/3)のとき m=(3-y)/(4-x)=-1/7

3.あとがき

 上のように、2つの傾きは直行している。AP、AQが円の直径と一致するとき、3角
 形OPQの面積は最大
   OA・AP=5・(5/3)・2=50/3
 となる。PQの角度が時計・反時計回りの2方向に変化していくとき3角系の面積は
 0になっていく。

以上


方形導波管の電磁界とベクトルポテンシャル

2021-03-26 08:15:45 | 導波管の電磁気学

1.まえがき

 方形導波管の電磁界をベクトルポテンシャルを用いて解く問題があった。「完全独習電磁
 気学(林光男、講談社)」にあるというが、他で見たことがないので調べると、「電磁気学
 (川村清、岩波)」に載っていたが、ページ数の関係か計算が杜撰なので考えてみた。

 方形導波管の切り口は x=0~a, y=0~bで、伝送方向は zである。

2.
方程式


 この場合、境界以外は真空中なので、クーロンゲージ div A=0 とΦ=0 (合わせて放射ゲ
 ージ)を選べば
   ∇²A=(1/c²)∂t²A , B=rot A , E=-∂tA 
 を満たす。今回は電磁波、正弦波解のみを求めるのでフェザー表示で、A(x,y,z,t) →
 A(x,y,z)exp(jwt) などとして(Aなどのフェザー表示は面倒なので区別しない)
   ∇²A=-(w/c)²A   ・・・・・・(2.1)
   B=rot A , E=-jwA ・・・・・・(2.2)
 となる。

 よく知られたようにこの微分方程式は変数分離による特殊解が求められ、Aの成分、
 Ai (i=x,y,z) についてそれぞれ
   Ai=(αcos px+βsin px)(α'cos qy+β'sin qy)exp(-jkz) ・・・・・(2.3)
 が得られる。ここで、α,β,α',β',p,q,k(p,q,k≧0) は定数で、x,yについては境界条件を満た
 す条件から cos/sin 関数となり、zについては、減衰のない進行波のみ考えるため、上
 のようになり、
   p²+q²+k²=(w/c)² ・・・・・・(2.4)
 を満たす(各定数は x,y,zに依存するが略す)。

3.境界条件

 導体の表面で電界の接線成分は0だから、
   Ex(x,0,z)=Ex(x,b,z)=0 , Ey(0,y,z)=Ey(a,y,z)=0・・・・・(3.1)
   Ez(x,0,z)=Ez(x,b,z)=0 , Ez(0,y,z)=Ez(a,y,z)=0・・・・・(3.2)
 であるが、(3.1)と(2.2)式の後者から
   Ax(x,0,z)=Ax(x,b,z)=0 , Ay(0,y,z)=Ay(a,y,z)=0・・・・・(3.3)
 を得る。これから
   ∂xAx(x,0,z)=∂xAx(x,b,z)=0 , ∂yAy(0,y,z)=∂yAy(a,y,z)=0・・・・・(3.4)
 となる。

 さらに(3.2)と(2.2)式の後者から

   Az(0,y,z)=Az(a,y,z)=0 , Az(x,0,z)=Az(x,b,z)=0 , ・・・・・(3.5)
 となる。

4.TE波(Ez=0)

 解析可能とするため、Ez=0 という条件を追加した TE波の解を求める。
 すると、(2.2)式から、
   Az=0 ・・・・・・・・(4.1)
 となる。つぎに、x成分の解は(2.3)式から
   Ax=(αcos px+βsin px)(α'cos qy+β'sin qy)exp(-jkz)
 となる。すると境界条件(3.1)式の前者から
   Ax=(αcos px+βsin px)sin qy exp(-jkz) , q=nπ/b (n=0,1,2,・・・)・・・・(4.2)
 となる(n<0 はα,βに含められる)。

 (4.1)式とクーロンゲージから
   ∂xAx=-∂yAy ・・・・・・・・・・・(4.3) 
 となり、(3.4)式の後者により
   ∂xAx({0a},y,z)=-∂yAy({0a},y,z)=0
 となる。この第一項を(4.2)式に使うと
   Ax=qA0cos px sin qy exp(-jkz) , p=mπ/a (m=0,1,2,・・・)・・・・(4.4)
 を得る(ここで、α → qA0とした)。(4.4)式を微分して積分すると
   Ay=∫-∂xAxdy=∫qA0p sin px sin qy exp(-jkz) dy
    =-pA0 sin px cos qy exp(-jkz)+f(x,z)   (fは任意関数)
 となるが、f=0 がうまく説明できない

 そこで、Ay について同様の議論をすると
   Ay=A'0sin p'x cos q'y exp(-jk'z)
 を得るが、(4.3)式により、A'0=-A0 p , p'=p , q'=q , k'=k となる。まとめると
   Ax=qA0 cos px sin qy exp(-jkz)
   Ay=-pA0 sin px cos qy exp(-jkz)
   Az=0
   p=mπ/a , q=nπ/b (m,n=0,1,2,・・・)  ・・・・・・(4.5)
 を得る。ただし、m,nは同時に0でない(A=0 となるから)。
 これらを使って(2.2)式から、E,B が計算できる。


5.TM波(Hz=0)

 つぎに、解析可能な、Hz=0 として TM波の解を求める。すると
   ∂xAy-∂yAx=0 ・・・・・(5.1)
 となる。TE波と同様にAzについて解くと、境界条件(3.5)式から
   Az=βsin px sin qy exp(-jkz)・・・・・(5.2)
 となる。

 また、TE波と同様に
   Ax=(α'cos p'x+β'sin p'x)sin q'y exp(-jk'z)
   Ay=sin p''x(α''cos q''y+β''sin q''y) exp(-jk''z)
 を得るが、(5.1)式を使うと、β'=β''=0 , p'=p'', q'=q'', k'=k'' , α''=α'q'/p''=α'q'/p' となり
   Ax=α'cos p'x sin q'y exp(-jk'z)
   Ay=(q'/p')α'sin p'x cos q'y exp(-jk'z)
 を得る。するとクーロンゲージから ∂zAz=-(∂xAx+∂yAy) となり、(5.2)式と上式を入れる
 と
   -jkβ sin px sin qy exp(-jkz)=-α'(-p'sin p'x sin q'y -(q'/p')q'sin p'x sin q'y)exp(-jk'z)
     =α'(p'+(q'²/p')) sin p'x sin q'y exp(-jk'z)=α'((p'²+q'²)/p') sin p'x sin q'y exp(-jk'z)
 この両辺を比較すると
   p'=p , q'=q , k'=k , -jkβ=α'((p'²+q'²)/p')=α'((p²+q²)/p) 
 となる。

 まとめると、β → A0 として
   Ax={ -jkp/(p²+q²) }A0 cos px sin qy exp(-jkz)
   Ay={ -jkq/(p²+q²) }A0 sin px cos qy exp(-jkz)
   Az=A0 sin px sin qy exp(-jkz)
 となる。なお、
   p=mπ/a , q=nπ/b (m,n=1,2,・・・)
 である。m,nのいずれかが 0 のときは、A=0 なので、除去

6.あとがき

 E,Hの計算では、Ez,Hz から電磁界成分が計算できるのに対し、Aの計算では、境界条
 件のAへの移し替えや計算が面倒で簡潔でない。


以上