1. まえがき
微分方程式
y''-3y'+2y=1/(1+e-x)
の特殊解を求める問題があった。微分演算子法で
y={1/(D2-3D+2)}1/(1+e-x)
を解けばよい。
2. 計算
y={1/(D-2)(D-1)}1/(1+e-x)={1/(D-2)} [ {1/(D-1)}1/(1+e-x) ]
だから、公式
{1/(D-a)}F(x)=eax∫e-axF(x)dx ・・・・・・・①
を使って
y={1/(D-2)} {ex∫e-x/(1+e-x)dx}
となる。ここで、u=e-x とおくと、dx=-du/u だから
∫e-x/(1+e-x)dx=∫u/(1+u) (-du/u)=-∫du/(1+u)=-log(1+u)=-log(1+e-x) ・・・・・②
を使って
y=-{1/(D-2)} ex log(1+e-x)
となる。①を使うと
y=-e2x∫e-2x ex log(1+e-x)dx=e2x∫e-x log(1+e-x)dx
=-e2x{ -e-x log(1+e-x)-∫(-e-x) (-e-x)/(1+e-x)dx }
=e2x{ e-x log(1+e-x)+∫e-2x/(1+e-x)dx }
ここで、②と同様に
∫e-2x/(1+e-x)dx=∫u2/(1+u) (-du/u)=∫u/(1+u) (-du)=∫(1/(1+u)-1)du
=log(1+u)-u=log(1+e-x)-e-x
を使うと
y=e2x{ e-x log(1+e-x)+log(1+e-x)-e-x =ex(ex+1)log(1+e-x)-e-x
を得る。ここで特殊解として、もう少し簡単な
y=ex(ex+1)log(1+e-x)
がある。というのは y=e-x という解は y''-3y+2y=0 を満たすので、無くてもよい。あるい
は斉次式の解の1つなので、特殊解としては不要。
3. あとがき
始め、y=uex と変換して、微分方程式の左辺を u''-u'=(u'e-x)'ex などと変換して計算したが
別解で、上のように微分演算子で素直に解けることが示されていた。
以上
微分方程式
(1+x²)y''+xy'=4y
の一般解を求める問題があった。
両辺にy' を掛けてまとめると
(1+x²)(y'²/2)'+xy'²=4(y²/2)'・・・・①
ここで
{(1+x²)(y'²/2)}'=2x(y'²/2)+(1+x²)(y'²/2)'=xy'²+(1+x²)(y'²/2)'
だから①は
{(1+x²)(y'²/2)}'=4(y²/2)'
積分すると
(1+x²)(y'²/2)=4(y²/2)+A → (1+x²)y'²=4(y²+A)
→ y'=±2√{(y²+A)/(1+x²)}
ここで、A → 4Aとした。
さらに、
y²+A≠0・・・・・②
とすると
→ dy/√(y²+A)=±2dx/√(x²+1)
積分して
log|y+√(y²+A)|=±2log|x+√(x²+1)|+B
ここで、±e^B → B とすると
→ {y+√(y²+A)}/(x+√(x²+1))^(±2)=B (B≠0)
→ y+√(y²+A)=B(x+√(x²+1))^(±2)
→ √(y²+A)=B(x+√(x²+1))^(±2)}-y
両辺を二乗して
→ -2yB(x+√(x²+1))^(±2)+B²(x+√(x²+1))^(±4)=A
→ y=-(A/2B)(x+√(x²+1))^(∓2)+(B/2)(x+√(x²+1))^(±2)
B → 2B , A → -4AB として
y=A(x+√(x²+1))^(∓2)+B(x+√(x²+1))^(±2) (B≠0)・・・③
が解となる。
また、②から y=Aを元の式に入れると
y=0
をえるが、これも解となるから③と合わせて、A,Bを任意定数として
1、2項は対称だから
y=A(x+√(x²+1))²+B/(x+√(x²+1))²
が一般解となる。
以上
1.まえがき
微分方程式
x²y''+xy' -y=(logx)²・・・・①
を解く問題があった。
2.計算
(x²y')'=x²y''+2xy' , (xy)'=xy'+y
なので①は
(x²y')'-(xy)'=(logx)²
補題(b)を使って両辺を積分すると
x²y' -xy=x( (logx)²-2logx+2 )+A・・・・・②
ここで
x²y' -xy=x³(y/x)'
だから②に入れて両辺をx³で割ると
(y/x)'=( (logx)²-2logx+2 )/x²+A/x³
この両辺を積分すると補題(c)を使って
y/x=-(logx)²/x+2∫(logx)/x²dx-2∫(logx)/x²dx+∫2/x² dx+∫A/x³ dx+B
=-(logx)²/x-2/x-(A/2)/x²+B
=-(logx)²/x-2/x+A/x²+B
ここで、Aは任意定数だから、-A/2 → Aと書き直した。
したがって
y=-(logx)²-2+A/x+Bx
3.補題
(a) logx・1 の部分積分から
∫logx dx=x(logx-1)
(b) logx・logxを部分積分して、(a)を使うと
∫(logx)²dx=(logx)x(logx-1)-∫(1/x)x(logx-1)dx
=x((logx)²-logx)-∫(logx-1)dx=x((logx)²-logx)-x(logx-1)+x
=x( (logx)²-2logx+2 )
(c) (logx)²・1/x²を部分積分すると
∫(logx)²/x² dx=(logx)²(-1/x)-∫{(2logx)/x}(-1/x)dx
=-(logx)²/x+2∫(logx)/x²dx
なお、今回積分は不要だが参考で
∫(logx)/x²dx=(logx)(-1/x)-∫(1/x)(-1/x)dx=-(logx)/x+∫dx/x²=-(logx)/x-1/x
また
∫(logx)/xdx=(logx)²-∫(1/x)logx dx → 2∫(logx)/xdx=(logx)²
→ ∫(logx)/x dx=(logx)²/2
以上
1.まえがき
少し変わったラグランジュの偏微分方程式の解法の問題があったので紹介する。
2.xy∂U/∂x+y²∂U/∂y=x²
補助方程式は
dx/xy=dy/y²=dU/x²
1,2項から
dy/y=dx/x → log|y/x|=C → y/x=A・・・・・・①
2,3項から、①を使って xを消し、積分すると
dU=(x/y)²dy=dy/A² → U=y/A²+B・・・・・・・②
となる。①から Aを消して
U=x²/y+B
したがって、B=f(A) から、①②で、A,Bを消して
U=x²/y+f(y/x)
を得る。
3.U∂U/∂x+y∂U/∂y=x ・・・・・・③
ここで、U=0 とすると③式を満たさないので、U≠0 としてよい。
補助方程式は
dx/U=dy/y=dU/x
1,3項から
U²-x²=A・・・・・・・・④
1,2項と、④の U=±√(x²+A) を使って
dy/y=dx/U=dx/±√(x²+A) → log|y|=±log|x+√(x²+A)|+C
→ y/{x+√(x²+A)}=B or y{x-√(x²+A)}=B
①を使って、Aを消すと(Uの±の順に注意して)
y/(x+U)=B (U > 0) or y(x-U)=B (U < 0)
となる。
したがって、A=f(B) から
U²=x²+f( y/(x+U) ) (U > 0) ・・・・・・⑤
U²=x²+f( y(x-U) ) (U < 0) ・・・・・・⑥
となる。
この解は非常に複雑なので、⑤が③を満たすことを確認する。⑤をx,yで偏微分して
(偏微分を Ux, Uyとする)
2UUx=2x+f' {-y/(x+U)²}(1+Ux) → {2U+f'y/(x+U)²}Ux=2x-f'y/(x+U)²
2UUy=f' {1/(x+U)-yUy/(x+U)² → {2U+f'y/(x+U)²}Uy=f'/(x+U)
すると
{2U+f'y/(x+U)²}(UUx+yUy)={2x-f'y/(x+U)²}U+yf'/(x+U)=2xU+xyf'/(x+U)²
={2U+yf'/(x+U)²}x
→ UUx+yUy=x (2U+f'y/(x+U)²≠0 のとき)
つぎに、⑥が③を満たすことを確認する。⑥をx,yで偏微分して
2UUx=2x+f' y(1-Ux) → (2U+f'y)Ux=2x+f'y
2UUy=f'{ (x-U)+y(-Uy) } → (2U+f'y)Uy=f' (x-U)
すると
(2U+f'y)(UUx+yUy)=(2x+f'y)U+f' y(x-U)=2xU+f' yx=(2U+f'y)x
→ UUx+yUy=x (2U+f'y≠0 のとき)
以上
1.まえがき
微分方程式
x2y''+2xy'-2y=x3 ・・・・・・・・・①
の一般解の解法がのっていたので紹介する(中国のサイトだった)。
2.計算
x≠0 とし、t=log|x| 、D=d/dt と置く。すると
dt/dx=1/x , y'=(dy/dt)(dt/dx)=(Dy)/x , y''=(Dy)'/x -Dy/x2= D2y/x2-Dy/x2
となり、元の式は
(D2y-Dy)+2Dy-2y=x3 → D2y +Dy-2y=±e3t
となる。特性方程式は
D2+D-2=(D-1)(D+2)
なので、斉次式の一般解は
y=Aet +Be-2t =A|x|+B/x2
となるが、「±」は、任意定数 A に含めることがてきるので
y=Ax+B/x2
とできる。
つぎに、非斉次式の特殊解は微分演算子法から(①から Cx3の形であることはすぐわかる)
y={1/(D2+D-2)} ±e3t =±{1/(32+3-2)}e3t=±(1/10)e3t =x3/10
となり、①の一般解は
y=Ax+B/x2 +x3/10・・・・・・・・②
となる。
さいごに、x≠0 としたが、①において、x=0 のとき、y=0 であり、このように初期条件を
を定めたときは、B=0 となり、この解は②に含まれる。以上により、x=0 を定義域に含め
るか除外することにより、①の一般解は②となる。
3.計算2
もう一つ
x2y''-xy'+2y=0 ・・・・・・・・・③
の一般解を求める(非斉次方程式の場合は上と同様)。同様に
(D2y-Dy)-Dy+2y=0 → D2y -2Dy+2y=0
となり、特性方程式は D2 -2D+2=0 の解は D=1±√(1-2)=1±i なので、一般解は
y=et(Acost+Bsint)=|x|{ Acos(log|x|)+Bsin(log|x|) }
となるが、「±」は、A,Bに含めることができて
y=x{ Acos(log|x|)+Bsin(log|x|) } (x≠0)
y=0 (x=0)
となる(上式でも、x → 0 のとき、y → 0 であるが)。
4.あとがき
なお、方程式が
ax2y''+bxy'+cy=f(x) ( f(x) はxの多項式。xn の nは整数)
であれば、特殊解が求められることは簡単にわかる。斉次式の一般解も解ける。
さらに、f(x)も冪関数だけでなく、いくつかの関数(例えば、log x)でも特殊解が求め
られる。
以上
[2021/8/16] あるサイトに、特殊な場合は簡単に求められる方法があった。
x²y''-xy'+y=x²
の場合、上のようにしても解けるが(特殊解は y=x² を入れればすぐわかる)、
y''-y'/x+y/x²=1 → y''-(y/x)'=1 → y'-y/x=x+A → y'/x-y/x²=1+A/x
→ (y/x)'=1+A/x → y/x=x+Alog|x|+B → y=x²+Axlog|x|+Bx
をえる。