1.まえがき
電磁気学には「単位系」という問題がある。これは、力学のように単純でなく物理量や不随す
関して興味深い記述があったので紹介する。
2.電磁気の構成・法則間の係数の関係
(1) 電荷と電界・磁束密度の定義
各法則の係数はどのように取って物理量を定義してもよいのですが、物理量が関連しあい、
幾つかの縛りがあります。そして、このゆるい縛りのため、どうにでも係数が選べ色んな単
位系があります。
以下で、MKS有理単位系で説明するが、あくまでも理論的な定義で、実用的な定義は法則
を駆使した結果から、都合の良いものを選んでいる。
どの書籍にも述べられていないが、電磁気はまず、電荷を定義しないと、いかなる議論もで
きない。それは勿論、クーロンの法則
F=k₁Qq r/r³ ・・・・・①
です。つぎに、電界Eと磁束密度Bの定義が必要で、これも勿論、ローレンツ力
F=q(E+v×B) ・・・・・②
です(でないと、マクスウェルの式は意味不明な記号の羅列になる)。ここで、係数を付け
ないのは、議論を簡単にするためで、必然ではない(要は縛り条件を満たすだけの係数があれ
ばよい)。
①②から、ガウスの式
div E=4πk₁ρ ・・・・・③
が出る。蛇足ではあるが、マクスウェルの式から電磁気を説明すると称する書籍で、ガウス
の式から、クーロンの法則が導かれると真面目に述べている。これも、論理的な構成を考え
ていない弊害で、元々の前提が得られることは必然で、「理論は矛盾していない」に過ぎな
い。
(2) 電磁誘導の式
つぎに、電磁誘導
rot E=-k∂B/∂t ・・・・・④
ですが、この積分形のレンツの法則で、一定磁界上を運動する導体棒に適用すると、②が
適用でき、k=1が導かれます。つまり、②で F=k(qv×B)の係数を k=1としたことによる。
(3) アンペールの式
(3) アンペールの式
つぎに、アンペールの式
rot B=k₂i+k₃∂E/∂t
の検討である。上の式に div をとって、電流の定義と電荷保存則 div i=-∂ρ/∂t から、③
を使うと
0=div rot B=k₂ div i+k₃(∂/∂t)div E=(-k₂+4πk₁k₃)∂ρ/∂t
結局、-k₂+4πk₁k₃=0 つまり、k₃=k₂/(4πk₁) となる。最後に、波動方程式の光速度と
言う縛りから、
k₂/(4πk₁) =1/c² ・・・・・⑤
となる。
これで、磁荷を除く、すべての法則がが出たので、k₁, k₂は⑤の範囲で任意に定めてよい。
MKS有理単位系では k₂=μ₀という定数と決め、k₁=μ₀c²/(4π)=1/(4πε₀) となった。
すると、アンペールの式は
すると、アンペールの式は
rot B=μ₀i+μ₀ε₀∂E/∂t・・・・⑥
となる。
以上のように、磁荷と磁界の強さHを除いて、完結する。
なお、divB=0 は単位の決定には関係しない。
(4) 磁荷のクーロンの法則
以下の議論のため、アンペールの式から、ビオ・サバールの式
dB=(μ₀/4π)Ids×r/r³ ・・・・・・⑦
が導かれることを注意しておく。
最後に、磁荷のクーロンの法則
F=k₄Mm r/r³
であるが、電荷との類推で、
F=MH、 H=k₄m r/r³ ・・・・・・⑧
と定める。ここで、BとHの関係を仮定しないといかなる議論もできない。実際、磁荷と
電流が相互作用することは明らかであり、「真空中でこれらは比例するという法則」を設
定し、
H=B/μ₀
と定義する。このHに基づいて、⑧から磁荷を定義したと考えればよい。
つぎに、電流素片Idsと磁荷m との相互作用を考える。
まず、磁荷m による磁界は H=k₄m r/r³ だから、この磁界による電流素片Idsへのロー
レンツ力は dF=Ids×B=Ids×(μ₀H)=mμ₀k₄(Ids×r/r³) となる。逆に、Idsからm へ
の力はビオ・サバールの式から dF'=mdH=m(dB/μ₀)=m(1/4π)(Ids×(-r)/r³) となる。
作用反作用の法則により、dF=-dF' だから μ₀k₄=1/4π を得る。ゆえに、k₄=1/(4πμ₀)
を得る。
以上