特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

ある関数の積分に関する不等式

2021-04-09 18:00:29 | 解析(積分)

1.問題

 (1) 関数 g(t) (t∈R)を
    g(t)=∫01 |x-t|n dx
  と定義する。このとき、g(t)の最小値とその時の tを求めよ。

 (2) f(x) (x∈[0,1]) を連続関数とする。このとき
    ∫01 xk f(x) dx=0 (k=0,1,・・・,n-1)・・・・・①
  を満たすとき、
    ∫01 (x-t)n f(x)dx=∫01 xn f(x)dx・・・・・・②
  が成立することを示せ。

 (3) ①の条件のもと、f(x) (x∈[0,1]) の最大値をMとすれば
    |∫01 xn f(x)dx| ≦ M/{ (n+1)2n }
  が成立する。  


2.証明

 (1)
  (a) x∈[0,1], t<0 とすると、
    0≦xn<|x-t|n 
   なので、g(t)≧g(0) (t<0) となる。

  (b) t>1 → t-x>1-x、ここで、0≦x≦1 なので t-x>0, 1-x≧0 だから
    → |t-x|>|1-x| → |x-t|>|x-1| → |x-t|n>|x-1|n
   積分して
    ∫01 |x-t|ndx >∫01 |x-1|ndx → g(t)>g(1) (t>1)

  (c) 上の(a)(b)から、g(t)の最小値は 0≦t≦1の間にある。0≦t≦1 とする。
    g(t)=∫01 |x-t|ndx=∫0t |x-t|ndx +∫t1 |x-t|ndx
       =∫0t (t-x)ndx +∫t1 (x-t)ndx  
       (0≦x≦t → |x-t|=t-x , t≦x≦1 → |x-t|=x-t なので)

       =(1/(n+1)){ [-(t-x)n+1]t0  + [(x-t)n+1]1t 
       =(1/(n+1)){ tn+1 + (1-t)n+1 }

     g'(t)=tn - (1-t)n=0 → t=1-t → t=1/2
     g''(t)=n{tn-1 + (1-t)n-1}≧0
   したがって、g(t) は t=1/2で最小となり
     g(1/2)=(1/(n+1)){ (1/2)n+1 + (1/2)n+1 }=1/{(n+1)2n} ・・・・・・③
   となる。

 (2)
  ①が成り立つから (x-t)n を展開すれば②のせいりつは自明。


 (3)
    A=|∫01 xn f(x)dx|=|∫01 (x-t)n f(x)dx|
     ≦∫01 |x-t|n |f(x)|dx ≦ M∫01 |x-t|n dx = Mg(t)

  上の不等式は 任意のtについて成り立つから、①によりg(t)の最小、g(1/2)を取れ
  ばよい。つまり
    A≦Mg(1/2)=M/{(n+1)2n}
  となる。

以上


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∫(-∞,∞) xsin(e^x)dx の収束の証明

2020-12-06 16:08:45 | 解析(積分)

-∞ xsin(ex)dx の収束を示す問題があった。

u=ex と変換すると
   I=∫-∞ xsin(ex)dx=∫0 logu sinu du/u
ここで
   A=∫01 logx (sinx/x) dx
   B=∫1π logx sinx dx/x
   C=∫π {(logx)/x} sinx dx
とすると、I=A+B+Cであり、各部分の収束を示せばよい。Bの収束は閉区間の連続関数
の積分だから積分の存在は自明。したがって、A,Cの収束を証明すればよい。

1.Aの収束

 sinx /x < 1 (x>0) はよく知られている。logx≦0 (0<x≦1) だから
   logx(sinx/x)≧logx
 したがって
   0≧A≧∫01 logx dx=[xlogx-x]10=-1 (xlogx → 0 はロピタルの定理から周知)
 となり、収束する。

2.Cの収束

   Cn=(-1)n(n+1)π {(logx)/x} sinx dx
 とおくと
   (-1)n sinx ≧ 0 ( nπ≦x≦(n+1)π) だから、Cn≧0・・・・①
 また
   C=Σn=1 (-1)nCn・・・・・②

   Cn+1-Cn=(-1)n+1(n+1)π(n+2)π {(logx)/x} sinx dx-(-1)n(n+1)π {(logx)/x} sinx dx
 右辺第一項を y=x-πと変換すると
   Cn+1-Cn=(-1)n+1(n+1)π {(log(y+π)/(y+π)} sin(y+π) dy
           -(-1)n(n+1)π {(logx)/x} sinx dx

       =(-1)n(n+1)π {(log(y+π)/(y+π)} siny dy-(-1)n(n+1)π {(logx)/x} sinx dx
       =∫(n+1)π [ {(log(x+π)/(x+π)}-(logx)/x ] (-1)nsinx dx・・・・・③

 ここで、f(x)=logx/x とすると
   f'=1/x²-logx/x²=(1-logx)/x²<0 (logx>1, x≧πにおいて )
 となり、fは減少関数だから
   [ {(log(x+π)/(x+π)}-(logx)/x ]≦0
 と①から、③の被積分関数は負になり、
   Cn+1-Cn≦0
 となる。

 結局②に戻って、Cn は0以上の減少数列であり、Cは交代級数の和なので、アーベル
 の定理により収束する。

以上


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微分演算子法の解 e^(ax)/f(D)=xⁿe^(ax)/f⁽ⁿ⁾(a) , f(a)=f'(a)=・・・=f⁽ⁿ⁻¹⁾(a)=0 , f⁽ⁿ⁾(a)≠0

2020-12-06 06:38:49 | 解析(積分)

微分演算子法の解
   eax/f(D)=xneax/f(n)(a) ,  f(a)=f'(a)=・・・=f(n-1)(a)=0 ,  f(n)(a)≠0
を求める問題があった。

この問題は公式
   (1/f(D))eax=eax/f(a)   ( f(a)≠0 )
の拡張になっている。これを示すには公式
   ( 1/{ (D-a)ag(D) } )eax=xneax/(n!g(a))   ( g(a)≠0 )・・・・・・①
を使用する。

f(x)をテーラー展開すると
   f(x)=f(a)+(x-a)f'(a)+・・・+{(x-a)n-1/(n-1)!}f(n-1)(a)+{(x-a)n/n!}f(n)(x+θ(x-a))   (0<θ<1)
      ={(x-a)n/n!}f(n)(x+θ(x-a))
となる。ここで、g(x)=f(n)(x+θ(x-a))/n! とおくと f(x)=(x-a)ng(x) となる。すると
   g(a)=f(n)(a)/n! (≠0)・・・・・・②
となるから、①に入れて②を使うと
   (1/f(D))eax=( 1/{ (D-a)ag(D) } )eax=xneax/(n!g(a))=xneax/(n!f(n)(a)/n!)
         =xneax/f(n)(a)   ( f(n)(a)≠0 )
となり、命題が証明された。

しかし、この関係は、実際にはあまり意味がないかもしれない。というのは f(n)(x) を求
るのは一般に面倒であり、 f(x)=(x-a)ng(x) となることがわかっているから、g(x) がわ
れば①によりすぐ計算できる。

以上


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級数和 Σ [√{(2k+1)/n} ]/n の極限を積分により求める

2020-11-27 20:57:28 | 解析(積分)

級数和
   lim [n→∞] Σk=0n [√{(2k+1)/n} ]/n = (1/2)∫02 f(x) dx
を証明する問題があった。これは次のように、閉区間における連続関数のリーマン和
の極限が積分になることを使う。つまり




   lim [n→∞] Σk=1n f(k/n)(1/n)=∫01 f(x) dx
   (区間 [0,1] をn等分して、区間 [(k-1)/n, k/n] (k=1,・・・,n] のうち、右端 f(k/n)
    と区間幅(1/n)の積の和をとったもの。)
で求められるタイプだが多少工夫を要する。

今回は、区間 [0,2] をn等分して、幅が (2/n) である区間 [2k/n, (2k+2)/n] (k=0,1, … , n-1)
のセンター値、f( (2k+1)/n ) のリーマン和を考えている。



すると

   lim [n→∞] Σk=0n f( (2k+1)/n )/n
     = lim [n→∞] { (1/2) [ Σk=0n-1 f( (2k+1)/n ) (2/n) ] + f( (2n+1)/n )/n }
     = (1/2) lim [n→∞] Σk=0n-1 f( (2k+1)/n ) (2/n)  + 0
     = (1/2)∫02 f(x) dx
となる。

今回、 f(x)=√x に適用すると
   lim [n→∞] Σk=0n [√{(2k+1)/n} ]/n = (1/2)∫02 √x dx = (1/2) [(2/3) x3/2 ]20 =(2/3)√2
となる。

以上


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フレネル積分など三角関数を含む広義積分の収束判定

2020-11-24 00:11:07 | 解析(積分)

下記の三角関数を含む広義積分の収束を判定する問題があった。あるサイトに証明が
載っていたので紹介する。この方法は ∫0 sin(x)/x dx の収束の証明にも使える。


1. I=∫0 sin(x²) dx (フレネル積分) は収束
   An=(-1)ⁿ∫√(nπ)√{(n+1)π} sin(x²) dx (n=0,1,2,・・・) ・・・・・(1.1)
 とおくと、(-1)ⁿ sin(x²)≧0 ( √(nπ)≦x≦√{(n+1)π} ) なので
   An > 0   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1.2)
 である。つまり、An は正項級数である。
 また、
   An≦∫√(nπ)√{(n+1)π} dx=√{(n+1)π} - √(nπ) =π/[ √{(n+1)π} + √(nπ) ] → 0・・・・(1.3)
 だから、An → 0 となる。

 つぎに、(1.1)において x=√y と変換すると、dx=dy/(2√y) であり

   An =(-1)ⁿ∫(n+1)π sin(y)/(2√y)dy = {(-1)ⁿ/2}∫(n+1)π sin(x)/(√x)dx
   An+1 =-{(-1)ⁿ/2}∫(n+1)π(n+2)π sin(x)/(√x)dx
 となる。z=x-π と変換すると
   An+1 =-{(-1)ⁿ/2}∫(n+1)π sin(z+π)/√(z+π)dz = {(-1)ⁿ/2}∫(n+1)π sin(z)/√(z+π)dz
      ={(-1)ⁿ/2}∫(n+1)π sin(x)/√(x+π)dx

   An+1 -An ={(-1)ⁿ/2}∫(n+1)π sin(x){1/√(x+π)-1/√(x)}dx
 このとき、
   {(-1)ⁿ/2}sin(x)≧0 , {1/√(x+π)-1/√(x)}<0
 なので、
   An+1 -An < 0・・・・・(1.4)
 となり、An は単調減少数列となる。

 ところで、
   I=∫0 sin(x²)dx = Σn=0√(nπ)√{(n+1)π} sin(x²)dx = Σn=0 (-1)ⁿAn
 となる。

 つまり、(1.2)(1.3)(1.4)から、An 交代級数のアーベルの定理の条件を満たし、I は収束
 する。



2. I=∫0 xsin²x/(1+x²) dx は発散
   I=∫0π xsin²x/(1+x²) dx + ∫π xsin²x/(1+x²) dx >∫π xsin²x/(1+x²) dx
 となる。

 x≧π → 1+x²<2x² だから
   I > ∫π xsin²x/(1+x²) dx > ∫π xsin²x/(2x²) dx = (1/2)∫π sin²x/(x) dx・・・・(2.1)
 ここで
   An =(1/2)∫(n+1)π sin²x/(x) dx
 とおくと(2.1)は

   I > Σn=1 An ・・・・・・・・(2.2)
 となる。y=x-nπと変換すると
   An =(1/2)∫1π sin²(y+nπ)/(y+nπ) dy = (1/2)∫1π sin²(y)/(y+nπ) dy
 このとき、 y+nπ≦(n+1)π だから

   An ≧(1/2)∫1π sin²(y)/{(n+1)π} dy =[1/{2(n+1)π}]∫1π sin²(y) dy=1/{4(n+1)}
 となる。すると(2.2)から
   I > Σn=1 An ≧ (1/4)Σn=1 1/(n+1) → ∞
 したがって、I は発散する。

3. I=π sin(x)/xa dx (a>0) は収束

 ここで
   An =(-1)ⁿ∫(n+1)π (sinx)/xa dx
 とおく。すると

   I=Σn=1 (-1)ⁿAn
 である。また
   An > 0
 は明らか。また
   An+1 -An = (-1)ⁿ⁺¹∫(n+1)π(n+2)π (sinx)/xa dx - (-1)ⁿ∫(n+1)π (sinx)/xa dx
 右辺第一項を y=x-π と変数変換すると、同様に
   An+1 -An = (-1)ⁿ∫(n+1)π (siny)/(y+π)a dy - (-1)ⁿ∫(n+1)π (sinx)/xa dx
       = ∫(n+1)π (-1)ⁿ(sinx) {1/(x+π)a - 1/xa } dx < 0
 となるから、An は減少数列である。

 したがって、以下のように An  → 0 なので、アーベルの定理から I の収束が言える。

 (1) a=1 のとき
   An =∫(n+1)π (-1)ⁿ(sinx)/x dx
    ≦ ∫(n+1)π 1/x dx = log{(n+1)π} - log{nπ} = log{(n+1)/n} → 0

 (2) a < 1 のとき
   An =∫(n+1)π (-1)ⁿ(sinx)/xa dx
    ≦ ∫(n+1)π 1/xa dx=(1/(1-a)) [ {(n+1)π}(1-a) - {nπ}(1-a) ]
     = (π(1-a)/(1-a)) { (n+1)(1-a) - n(1-a) } → 0・・・・・・(3.1)
  となる。というのは
   x → ∞ のとき、0 < b=1-a < 1 として、ロピタルの定理から
    (x+1)b - xb ={(1+1/x)b - 1}/(x-b)
      → b(1+1/x)b-1(-1/x2)/(-bx-b-1) = (1+1/x)b-1/(x1-b) → 0
  となるからである。

 (3) a > 1 のとき
  (3.1)から a-1 > 0 となり
   An ≦ (π(1-a)/(1-a)) { 1/(n+1)(a-1) - 1/n(a-1) } → 0
  となる。 

 なお、
   J=∫0 sin(x)/xa dx = ∫0π sin(x)/xa dx + ∫π sin(x)/xa dx
 と分解できるが、
   0< a≦1 のとき、sin(x)/xa は 0 < x≦π において有界なので、J は収束。
   (a>1 のときは検討中)   

以上

[2020/11/29] An → 0 の条件を追加し、書き直した。


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