特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

アンペールの法則からビオ・サバールの法則を導く

2019-03-11 06:35:09 | 電磁気学(磁界)
1.まえがき

 ベクトルポテンシャルを使うとアンペールの法則からビオ・サバールの法則が導かれることは
 砂川氏の理論電磁気学に載っている。ここでは、初等的な方法でこれを導く。

2.計算

 まず、電流微小辺だけというモデルは電荷保存則を満たさず物理的に存在しない。このため、
 両端に+Q/-Qの電荷が存在し、Q=It と時間変動するとする。

 図2のように電流微小片を考え、S2面をx=aの平面内の半径bの円盤にとる。原点からS2面ま
 での距離をrとする。
 
 
 原点に +Q, x=-dの距離に-Qがある。簡単のため a>0としてS2面は電流Iを含まないように
 とる。すると(拡張)アンンペールの法則によって、まず+Qの分の磁界を考えると
     ∫c H・dl = ε0S2 E/∂t・ dS
 となる。周回路 Cは円だから対称性によりHの大きさは一定となり、左辺は ∫c H・dl =2πbH
 となる。右辺はクーロンの法則から E=Q/(4πεr2)、Q=It またcos θ=a/r だから
    ε0S2 E/∂t・ dS=(I/4π)∫S2 (cos θ/r2)dS = (ε0I/4π)∫[0,b](a/r3) (2πy)dy
       = (Ia/2)∫[0,b](y/r3) dy =(Ia/2)[-1/r][y=0,b]
       = (I/2)[-a/√(a2 +b2) + 1]
 これらをまとめて
     H=(I/4πb)[1 - a/√(a2 +b2)]                               (8)
 となる。同様に -Qの分の磁界は
     H’=(-I/4πb)[1–(a+d)/√((a+d)2 +b2)]
 となる。これを加えると
    H+H’=(-I/4πb){ [1–(a+d)/√((a+d)2 +b2)] - [1- a/√(a2 +b2)] }
 となり、d→0の極限では(8)式にマイナスをかけてdで微分したことになる。

 したがって、周回路Cにおいて改めて、r=√(a2 +b2) , sin θ=b/r と置けば
   dH/dd=-(I/4πb)[-1/(a2 +b2)1/2 + a2/(a2 +b2)3/2 ] =(I/4π)[b/(a2 +b2)3/2 ]
      =(I/4π)[sin θ/r2]
 となり、ビオ・サバールの法則が得られる。

 aの位置は計算が簡単となるようにとったが、どの位置(どのような曲面)でも結果は同じ
 となる。このことは(拡張)アンペールの式により
     ∫c H・dl = ∫S2(i0 E/∂t)・ dS
 となるが、電荷保存則から
    0=∫(div i+∂ρ/∂t)dv=∫v (div i0(∂/∂t)(div E))dv
     =∫v div(i0(∂E/∂t))dv=∫S(i0 E/∂t)・ dS
 となり、閉曲面S を周辺回路Cで2つの面に分けると、面積分の値が変わらないことが得ら
 れることからも保証されている。

3.あとがき

 昔はビオ・サバールの法則とマクスウェルの式との関係に悩んだが、ジャクソンの電磁気学
 には超関数を使った難しい計算によって、ビオ・サバールの法則からアンペールの法則を導
 いている。以上のことをまとめると

  (1) アンペールの法則+電流連続の法則           → ビオ・サバールの法則
  (2) 拡張アンペールの法則+電荷保存の法則+クーロンの法則 → ビオ・サバールの法則
  (3) ビオ・サバールの法則+電流連続の法則         → アンペールの法則
  (4) ビオ・サバールの法則+電荷保存の法則+クーロンの法則 → 拡張アンペールの法則

 となる。(1)は砂川氏の本に載っている方法だが、条件がよくわからない。しかし、
 0=div rot H=div i を自動的に満たすので、これを条件とした。(2)は上に述べた方法であ
 る。

以上

[2019/4/6] あとがきなど追加。
[2020/9/13]  一部のa→dと訂正。