特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

π^x-e^x-x+1>0 の証明

2020-05-29 11:28:01 | 不等式

1. まえがき

 πx-ex-x+1>0 を示す問題があった。極値などの計算が困難なので、面倒だった。



2. 計算


 極値の計算ではなく、間接的な評価法をとり、x≦0 , 0<x≦2 , 2≦x の3つの場合に分
 けて検討した。
    f(x)=πx-ex-x+1
 とおく。

 2.1 x≦0 のとき

  πx>0 , -x≧0 , ex≦1 だから
    f(x)>-ex+1≧0

 2.2 x>0 のとき

  f>0 を示せば良い。このとき、上の範囲と違って、f''>0 となるので、以下のよう
  に凸関数の性質で評価できる。 

  logπ≒1.14 (>1)だから、x>0 で、f''=(logπ)²πx-exx-ex>0 なので、テーラー展開
  から
    f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+f''(c)(x-a)²>f(a)+f'(a)(x-a)・・・・・①
  を得る。

  (1) 0<x≦2 のとき

   f'=(logπ)πx-ex-1 だから、①で a=1 とすると、x-1≦1 なので
     f(1)=π-e , f'(1)=(logπ)π-e-1 ( <0 )
     f>π-e+{ (logπ)π-e-1 }(x-1)≧π-e+{ (logπ)π-e-1 }・1
      =π-2e-1+(logπ)π>3.10-2・2.72-1+1.10・3.10>0.07>0

  (2) 2≦x のとき

   同様に、①で a=2 とすると、x≧2 なので
     f(2)=π²-e²-1 , f'(2)=(logπ)π²-e²-1 ( >0 )
     f>π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}x≧π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}・2
       =π²-3e²-3+2(logπ)π²>3.1²-3・2.8²-3+2・1.1・3.1²>3.27>0

3. 結果

 以上のことから、すべての区間で f(x)=πx-ex-x+1>0 となる。

以上

[2020/5/30] 2.1項の論理を簡潔にした。

[2021/5/14] 追記
・問題
 x>0 のとき、x≧exp{(x-1)/x} の成立を証明せよ。



 f(x)=x-exp(1-1/x)≧0 (x>0) を示せば良い。

 すべての y につき、e^y≧1+y である(微分するとすぐわかる)。すると
  exp((1/x)-1)≧1+((1/x)-1)=1/x

 x>0 だから
  x≧1/exp((1/x)-1)=exp(1-(1/x)) → -exp(1-(1/x)) ≧ -x
 すると
  f(x)=x-exp(1-(1/x))≧x-x=0
 となり、与式が証明された。

 この関係を微分で評価しようとすると困難となる。

以上


√2^√2^√2^・・・・の極限

2020-05-24 17:27:24 | 解析(極限・数列)

1. まえがき

 √2^√2^√2^・・・・の極限を求める問題があった。これも、前の例と同じくこのまま
 では不正確な議論になるので検討した。

2. 計算

 この数列を定義しようとすると、つぎの2つ
    ① an+1=(√2)an , a₁=√2 , n≧1
    ② an+1=(an)√2 , a₁=√2 , n≧1
 が考えられる。しかし、②は発散する。

3. an+1=(√2)an , a₁=√2 のとき

    a₂/a₁=(√2)√2/√2 > √2/√2=1
    an+2/an+1=(√2)(an+1-an) 
 となる。つまり、an+1/an > 1 、つまり、an+1-an > 0 と仮定すれば、an+2/an+1 > 1 となる
 ので、帰納法から an は単調増加となる。また、
    a₁=√2 < 2 であり、an < 2 と仮定すると
    an+1=(√2)an < (√2)2=2
 となり、帰納法から an < 2 となる。つまり、上に有界となるから、an は収束する。この
 極限をaとすれば、a=(√2)a から、a=2 とわかる。a=4もこの解であるが an < 2 から除外
 できる。

4. an+1=(an)√2 , a₁=√2 のとき

 a₂/a₁=(√2)√2/√2≒1.15 > 1.1 である。an+1/an > 1.1 と仮定すると
    an+2/an+1=(an+1/an)√2 > 1.1√2 > 1.11.4 > 1.1
 となり、帰納法から
    an+1/an > 1.1 → an=(1.1)n√2 → ∞ (n → ∞)

 となるので、発散する。

以上


a[n]>0 を満たす数列が a[n] → a のとき、(a₁a₂・・・a[n])¹/ⁿ → a をε-N法での証明

2020-05-24 16:18:56 | 解析(極限・数列)

1. まえがき

 数列 (an) が、an>0 および、an → a を満たすとき、
    (a1a2・・・an)1/n → a
 をε-N法で、証明する問題があった。


2. 準備

 M>0 のとき、M1/n → 1 がわかっている。つまり
   (∀ε>0, ∃N,n>N → |M1/n-1|<ε) ⇒ M1/n<1+ε・・・・①

 an は収束するから
   (∀ε>0, ∃N,n>N → |an-a|<ε) ⇒ an<a+ε・・・・・・・②

3. 証明

 An=(Π[k=1→n] ak)1/n とおく。

 (1) An< a+ε の証明
  ∀ε>0, ∃N₁, n>N₁、ε'=min{1, ε/(2+a)} 、M=max{a₁, a₂,・・・, aN₁} とすると
  ak≦M(k≦N₁)なので①から
    ( Π[k=1→N₁] ak )1/n ≦ (MN₁)1/n<1+ε'・・・・③
  となる。また、②から
  ∃N₂, n>N₂、ak<a+ε' (k>N₂) 、および、(n-N₂)/n<1 だから
    ( Π[k=N₂+1→n] ak )1/n ≦ (a+ε')(n-N₂)/n < a+ε'・・・④
  となる。

  ここで、n>max{N₁,N₂}とすると➂④が成立ち、ε'≦1 なので ε'²≦ε' だから
    An < (1+ε')(a+ε')=a+(1+a)ε'+ε'²≦a+(2+a)ε'≦a+ε・・・・⑤
  を得る。

 (2) An > a-ε の証明
  まず、a>0 とすると⑤から、数列 (1/an) は 1/an → 1/a だから
  ∀ε>0, ∃N₃, n>N₃, ε'=ε/a² に対して
    ( Π[k=1→n] 1/ak )1/n < 1/a+ε'
  この式の逆数を取って
    An > 1/(1/a+ε')=a/(1+aε')=a/(1+ε/a)>a(1-ε/a)=a-ε・・・・⑥

 (3) 証明の完成
  以上のことから N=max{N₁,N₂,N₃}として
  ∀ε>0, ∃N, n>N,
    a=0 → -ε<0<An <a+ε=ε
    a>0 → a-ε<An <a+ε
  となる。ゆえに、An は aに収束する。

以上


液体または固体の比熱の関係式

2020-05-23 12:24:17 | 統計熱力学

1. まえがき

 液体または固体の比熱の関係式を求める問題があった。苦手とする領域だが、この理
 解なくして物理は無いと痛感するこの頃なので調べてみた。

2. 問題

 一様な圧力(静水圧)を受けている液体または等方性の固体ある。その熱膨張率βと等
 温圧縮率κ
     β=(1/V)(∂V/∂T)p  , κ=(1/V)(∂V/∂p)T ・・・・・・・・・・・(2.1)
 が定数と見なせる領域では
     V=V₀(1+β(T-T₀)-κ(p-p₀)} ・・・・・・・・・・・・・・・(2.2)
 で与えられることを示せ。また、Cpが一定なら、エントロピーは
     S=Cp log(T/T₀)-β(p-p₀)+S₀ ・・・・・・・・・・・・・・(2.3)
 で与えられ、
     Cp-Cv=(β²/κ)V₀T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.4)
 となることを示せ。

3. 準備計算

 はじめに、次のマクスウェルの関係式が成り立つ。
     (∂S/∂p)T=-(∂V/∂T)p ・・・・・・・・・・・・・・・・(3.1)

 まず、V,T が変数のとき

     δQ=(δQ)V +(δQ)T 
 となるが、V=一定の時、定義から
     Cv=(δQ/dT)V  → (δQ)V=CvdT
 となる。また、Tが一定の時、∂S/∂T=0 から、dS=(∂S/∂V)T dV+(∂S/∂T)V dT=(∂S/∂V)T dV
 となる。したがって、δQ=TdS だから    
     (δQ)T =(TdS)T =T(∂S/∂V)T dV
 これらをまとめると
     δQ=TdS=CvdT+T(∂S/∂V)T dV ・・・・・・・・・・・・(3.2)
 が得られる。

 つぎに、p,T が変数のとき
     δQ=(δQ)p +(δQ)T 
 となるが、p=一定の時、定義から
     Cp=(δQ/dT)p  → (δQ)p=CpdT
 となる。同様に、Tが一定の時、dS=(∂S/∂p)T dp+(∂S/∂T)p dT=(∂S/∂p)T dp
 となる。したがって、δQ=TdS だから    
     (δQ)T =(TdS)T =T(∂S/∂p)T dp
 これらをまとめると
     δQ=TdS=CpdT+T(∂S/∂p)T dp ・・・・・・・・・・・・(3.3)
 を得る。

4. 計算

 V=V(T,p)をティラー展開すると、0<θ<1 として
     V=V(T₀, p₀)+{ (T-T₀)(∂/∂T)+(p-p₀)(∂/∂p) }V(T₀+θ(T-T₀), p₀+θ(p-p₀))
 となる。導関数が定数と仮定するので、V₀=V(T₀, p₀) として、(2.1)から
     V=V₀+(T-T₀)βV₀+(p-p₀)κV₀
 となり、(2.2)が得られる。

 (3.3)に(3.1)を入れると
     δQ=TdS=CpdT-T(∂V/∂T)p dp ・・・・・・・・・・・・(4.1)
 となり、(2.2)を使って微分を計算すると
     dS=Cp(dT/T)-V₀βdp=d(Cp logT-V₀βp)
 となり、積分すると(2.3)を得る。

 つぎに、p=p(T,V) より
     dp=(∂p/∂T)v dT+(∂p/∂V)T dV
 となる。これを、(4.1)にいれると
     δQ=TdS=CpdT-T(∂V/∂T)p { (∂p/∂T)v dT+(∂p/∂V)T dV }
          ={Cp-T(∂V/∂T)p(∂p/∂T)v} dT+T(∂V/∂T)p(∂p/∂V)T dV
 となる。

 dSは完全微分なので、この式と(3.2)のdTの係数は同じとなるから
     Cv=Cp-T(∂V/∂T)p (∂p/∂T)v=Cp-TβV(∂p/∂T)v ・・・・(4.2)
 を得る。ここで、(2.1)を使った。

 同様に、V=V(p,T) に(2.1)を使うと
     dV=(∂V/∂p)T dp+(∂V/∂T)p dT=V(-κdp+βdT)
 となるが、体積一定(dV=0)のとき、この式は (∂p/∂T)v=β/κ となり、これを
 (4.2)に入れると

     Cv=Cp-TβVβ/κ=Cp-VTβ²/κ ・・・・・・・・・・・(4.3)
 となる。ここで、(2.1)を使うと
     Vβ=(∂V/∂T)p=V₀β、Vκ=-(∂V/∂p)T=V₀κ
 となるので、(4.3)は
     Cv=Cp-VTβ²/κ=Cp-T(Vβ)²/(Vκ)=Cp-T(V₀β)²/(V₀κ)=Cp-V₀Tβ²/κ
 となり、(2.4)を得る。

[参考文献]
 熱力学・統計力学、W.グライナー他、丸善出版(P100,112)

以上


∫√(x+(√(x+(√(x+・・・) dx を求む

2020-05-19 15:14:52 | 解析(極限・数列)

1. まえがき

 ネットに ∫√(x+(√(x+(√(x+・・・) dx を求める問題があった。基本的には関数を極限
 を求める問題のだが、議論を見ると杜撰なので考えた。内容はオチャラケなので緻密
 な議論は求めていないようだが、数学としてどうだろうか。


2. 計算

 関数の極限が存在するとして、y=√(x+(√(x+(√(x+・・・) とおくと y=√(x+y) でもある
 から y²=x+y, y={1±√(1+4x)}/2 をえる。

 ここで、y≧0 はすぐ分かり、x≧0 だから、y={1+√(1+4x)}/2 としていた。積分は簡単
 で
    ∫√(x+(√(x+(√(x+・・・) dx=x/2+(1+4x)3/2/12+C
 をえる。

3. 問題点

 問題点は2つある。時折見かけるこの奇妙な数列は収束するか? x≧0とする根拠は?

 yの解からは
    y={1+√(1+4x)}/2 → x≧-1/4・・・・・①
    y={1-√(1+4x)}/2 → 0≧x≧-1/4・・・・②
 が得られるが始めの疑問を解かない限りこの議論には意味が無い。

 問題は与式の意味が不明確なことである。明確な定義をしない限り、いかなる議論も
 無意味となる。そこで、よくあるように次の数列で与式を定義する。
    yn+1=√(x+yn) , n≧1 ・・・・・③
 問題は初期値(初期関数)y[1] の決定であるが、まず、この数列の収束を検討する。
    yn+2-yn+1=√(x+yn+1)-√(x+yn)=(yn+1-yn)/{√(x+yn+1)+√(x+yn)}
 となる。したがって、(y2-y1)の正負とyn の有界性によって、帰納法により極限の
 存在が言える。

 ①②の2つの解の意味を考えるが、y1 に一般性を持たせると議論が複雑になる。
 したがって、以下では、y1=√x とした簡単な例を見る。

4. y1=√x の議論

 当然、x≧0 であり、x=0 のときは、y=0 は自明(つまり、解は➁となる)。した
 がって、x>0 とすると、収束解は①のみとなる(②ではy<0だから)。また、
 y2=√(x+√x)>√(x+0)=y1 だから
y2-y1>0 となり、yn は単調増加となる。

 つぎに、y₁=√x<1+√x である。yn<1+√x と仮定すると、
    yn+1
=√(x+yn)<√(x+1+√x)<1+√x (両辺を2乗すれば明らか)
 となり、帰納法から、yn<1+√x となり、上に有界となる。つまり、x>0 のとき、
 yn は収束し、その解は①となる。このとき、y → 1 (x → 0) だから、x=0 で
yは不連
 続関数となる。

以上