1. まえがき
πx-ex-x+1>0 を示す問題があった。極値などの計算が困難なので、面倒だった。
2. 計算
極値の計算ではなく、間接的な評価法をとり、x≦0 , 0<x≦2 , 2≦x の3つの場合に分
けて検討した。
f(x)=πx-ex-x+1
とおく。
2.1 x≦0 のとき
πx>0 , -x≧0 , ex≦1 だから
f(x)>-ex+1≧0
2.2 x>0 のとき
f>0 を示せば良い。このとき、上の範囲と違って、f''>0 となるので、以下のよう
に凸関数の性質で評価できる。
logπ≒1.14 (>1)だから、x>0 で、f''=(logπ)²πx-ex>πx-ex>0 なので、テーラー展開
から
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+f''(c)(x-a)²>f(a)+f'(a)(x-a)・・・・・①
を得る。
(1) 0<x≦2 のとき
f'=(logπ)πx-ex-1 だから、①で a=1 とすると、x-1≦1 なので
f(1)=π-e , f'(1)=(logπ)π-e-1 ( <0 )
f>π-e+{ (logπ)π-e-1 }(x-1)≧π-e+{ (logπ)π-e-1 }・1
=π-2e-1+(logπ)π>3.10-2・2.72-1+1.10・3.10>0.07>0
(2) 2≦x のとき
同様に、①で a=2 とすると、x≧2 なので
f(2)=π²-e²-1 , f'(2)=(logπ)π²-e²-1 ( >0 )
f>π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}x≧π²-e²-1+{(logπ)π²-e²-1}・2
=π²-3e²-3+2(logπ)π²>3.1²-3・2.8²-3+2・1.1・3.1²>3.27>0
3. 結果
以上のことから、すべての区間で f(x)=πx-ex-x+1>0 となる。
以上
[2020/5/30] 2.1項の論理を簡潔にした。
[2021/5/14] 追記
・問題
x>0 のとき、x≧exp{(x-1)/x} の成立を証明せよ。
f(x)=x-exp(1-1/x)≧0 (x>0) を示せば良い。
すべての y につき、e^y≧1+y である(微分するとすぐわかる)。すると
exp((1/x)-1)≧1+((1/x)-1)=1/x
x>0 だから
x≧1/exp((1/x)-1)=exp(1-(1/x)) → -exp(1-(1/x)) ≧ -x
すると
f(x)=x-exp(1-(1/x))≧x-x=0
となり、与式が証明された。
この関係を微分で評価しようとすると困難となる。
以上
1. まえがき
√2^√2^√2^・・・・の極限を求める問題があった。これも、前の例と同じくこのまま
では不正確な議論になるので検討した。
2. 計算
この数列を定義しようとすると、つぎの2つ
① an+1=(√2)an , a₁=√2 , n≧1
② an+1=(an)√2 , a₁=√2 , n≧1
が考えられる。しかし、②は発散する。
3. an+1=(√2)an , a₁=√2 のとき
a₂/a₁=(√2)√2/√2 > √2/√2=1
an+2/an+1=(√2)(an+1-an)
となる。つまり、an+1/an > 1 、つまり、an+1-an > 0 と仮定すれば、an+2/an+1 > 1 となる
ので、帰納法から an は単調増加となる。また、
a₁=√2 < 2 であり、an < 2 と仮定すると
an+1=(√2)an < (√2)2=2
となり、帰納法から an < 2 となる。つまり、上に有界となるから、an は収束する。この
極限をaとすれば、a=(√2)a から、a=2 とわかる。a=4もこの解であるが an < 2 から除外
できる。
4. an+1=(an)√2 , a₁=√2 のとき
a₂/a₁=(√2)√2/√2≒1.15 > 1.1 である。an+1/an > 1.1 と仮定すると
an+2/an+1=(an+1/an)√2 > 1.1√2 > 1.11.4 > 1.1
となり、帰納法から
an+1/an > 1.1 → an=(1.1)n√2 → ∞ (n → ∞)
となるので、発散する。
以上
1. まえがき
数列 (an) が、an>0 および、an → a を満たすとき、
(a1a2・・・an)1/n → a
をε-N法で、証明する問題があった。
2. 準備
M>0 のとき、M1/n → 1 がわかっている。つまり
(∀ε>0, ∃N,n>N → |M1/n-1|<ε) ⇒ M1/n<1+ε・・・・①
an は収束するから
(∀ε>0, ∃N,n>N → |an-a|<ε) ⇒ an<a+ε・・・・・・・②
3. 証明
An=(Π[k=1→n] ak)1/n とおく。
(1) An< a+ε の証明
∀ε>0, ∃N₁, n>N₁、ε'=min{1, ε/(2+a)} 、M=max{a₁, a₂,・・・, aN₁} とすると
ak≦M(k≦N₁)なので①から
( Π[k=1→N₁] ak )1/n ≦ (MN₁)1/n<1+ε'・・・・③
となる。また、②から
∃N₂, n>N₂、ak<a+ε' (k>N₂) 、および、(n-N₂)/n<1 だから
( Π[k=N₂+1→n] ak )1/n ≦ (a+ε')(n-N₂)/n < a+ε'・・・④
となる。
ここで、n>max{N₁,N₂}とすると➂④が成立ち、ε'≦1 なので ε'²≦ε' だから
An < (1+ε')(a+ε')=a+(1+a)ε'+ε'²≦a+(2+a)ε'≦a+ε・・・・⑤
を得る。
(2) An > a-ε の証明
まず、a>0 とすると⑤から、数列 (1/an) は 1/an → 1/a だから
∀ε>0, ∃N₃, n>N₃, ε'=ε/a² に対して
( Π[k=1→n] 1/ak )1/n < 1/a+ε'
この式の逆数を取って
An > 1/(1/a+ε')=a/(1+aε')=a/(1+ε/a)>a(1-ε/a)=a-ε・・・・⑥
(3) 証明の完成
以上のことから N=max{N₁,N₂,N₃}として
∀ε>0, ∃N, n>N,
a=0 → -ε<0<An <a+ε=ε
a>0 → a-ε<An <a+ε
となる。ゆえに、An は aに収束する。
以上
1. まえがき
液体または固体の比熱の関係式を求める問題があった。苦手とする領域だが、この理
解なくして物理は無いと痛感するこの頃なので調べてみた。
2. 問題
一様な圧力(静水圧)を受けている液体または等方性の固体ある。その熱膨張率βと等
温圧縮率κ
β=(1/V)(∂V/∂T)p , κ=(1/V)(∂V/∂p)T ・・・・・・・・・・・(2.1)
が定数と見なせる領域では
V=V₀(1+β(T-T₀)-κ(p-p₀)} ・・・・・・・・・・・・・・・(2.2)
で与えられることを示せ。また、Cpが一定なら、エントロピーは
S=Cp log(T/T₀)-β(p-p₀)+S₀ ・・・・・・・・・・・・・・(2.3)
で与えられ、
Cp-Cv=(β²/κ)V₀T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.4)
となることを示せ。
3. 準備計算
はじめに、次のマクスウェルの関係式が成り立つ。
(∂S/∂p)T=-(∂V/∂T)p ・・・・・・・・・・・・・・・・(3.1)
まず、V,T が変数のとき
δQ=(δQ)V +(δQ)T
となるが、V=一定の時、定義から
Cv=(δQ/dT)V → (δQ)V=CvdT
となる。また、Tが一定の時、∂S/∂T=0 から、dS=(∂S/∂V)T dV+(∂S/∂T)V dT=(∂S/∂V)T dV
となる。したがって、δQ=TdS だから
(δQ)T =(TdS)T =T(∂S/∂V)T dV
これらをまとめると
δQ=TdS=CvdT+T(∂S/∂V)T dV ・・・・・・・・・・・・(3.2)
が得られる。
つぎに、p,T が変数のとき
δQ=(δQ)p +(δQ)T
となるが、p=一定の時、定義から
Cp=(δQ/dT)p → (δQ)p=CpdT
となる。同様に、Tが一定の時、dS=(∂S/∂p)T dp+(∂S/∂T)p dT=(∂S/∂p)T dp
となる。したがって、δQ=TdS だから
(δQ)T =(TdS)T =T(∂S/∂p)T dp
これらをまとめると
δQ=TdS=CpdT+T(∂S/∂p)T dp ・・・・・・・・・・・・(3.3)
を得る。
4. 計算
V=V(T,p)をティラー展開すると、0<θ<1 として
V=V(T₀, p₀)+{ (T-T₀)(∂/∂T)+(p-p₀)(∂/∂p) }V(T₀+θ(T-T₀), p₀+θ(p-p₀))
となる。導関数が定数と仮定するので、V₀=V(T₀, p₀) として、(2.1)から
V=V₀+(T-T₀)βV₀+(p-p₀)κV₀
となり、(2.2)が得られる。
(3.3)に(3.1)を入れると
δQ=TdS=CpdT-T(∂V/∂T)p dp ・・・・・・・・・・・・(4.1)
となり、(2.2)を使って微分を計算すると
dS=Cp(dT/T)-V₀βdp=d(Cp logT-V₀βp)
となり、積分すると(2.3)を得る。
つぎに、p=p(T,V) より
dp=(∂p/∂T)v dT+(∂p/∂V)T dV
となる。これを、(4.1)にいれると
δQ=TdS=CpdT-T(∂V/∂T)p { (∂p/∂T)v dT+(∂p/∂V)T dV }
={Cp-T(∂V/∂T)p(∂p/∂T)v} dT+T(∂V/∂T)p(∂p/∂V)T dV
となる。
dSは完全微分なので、この式と(3.2)のdTの係数は同じとなるから
Cv=Cp-T(∂V/∂T)p (∂p/∂T)v=Cp-TβV(∂p/∂T)v ・・・・(4.2)
を得る。ここで、(2.1)を使った。
同様に、V=V(p,T) に(2.1)を使うと
dV=(∂V/∂p)T dp+(∂V/∂T)p dT=V(-κdp+βdT)
となるが、体積一定(dV=0)のとき、この式は (∂p/∂T)v=β/κ となり、これを
(4.2)に入れると
Cv=Cp-TβVβ/κ=Cp-VTβ²/κ ・・・・・・・・・・・(4.3)
となる。ここで、(2.1)を使うと
Vβ=(∂V/∂T)p=V₀β、Vκ=-(∂V/∂p)T=V₀κ
となるので、(4.3)は
Cv=Cp-VTβ²/κ=Cp-T(Vβ)²/(Vκ)=Cp-T(V₀β)²/(V₀κ)=Cp-V₀Tβ²/κ
となり、(2.4)を得る。
[参考文献]
熱力学・統計力学、W.グライナー他、丸善出版(P100,112)
以上
1. まえがき
ネットに ∫√(x+(√(x+(√(x+・・・) dx を求める問題があった。基本的には関数を極限
を求める問題のだが、議論を見ると杜撰なので考えた。内容はオチャラケなので緻密
な議論は求めていないようだが、数学としてどうだろうか。
2. 計算
関数の極限が存在するとして、y=√(x+(√(x+(√(x+・・・) とおくと y=√(x+y) でもある
から y²=x+y, y={1±√(1+4x)}/2 をえる。
ここで、y≧0 はすぐ分かり、x≧0 だから、y={1+√(1+4x)}/2 としていた。積分は簡単
で
∫√(x+(√(x+(√(x+・・・) dx=x/2+(1+4x)3/2/12+C
をえる。
3. 問題点
問題点は2つある。時折見かけるこの奇妙な数列は収束するか? x≧0とする根拠は?
yの解からは
y={1+√(1+4x)}/2 → x≧-1/4・・・・・①
y={1-√(1+4x)}/2 → 0≧x≧-1/4・・・・②
が得られるが始めの疑問を解かない限りこの議論には意味が無い。
問題は与式の意味が不明確なことである。明確な定義をしない限り、いかなる議論も
無意味となる。そこで、よくあるように次の数列で与式を定義する。
yn+1=√(x+yn) , n≧1 ・・・・・③
問題は初期値(初期関数)y[1] の決定であるが、まず、この数列の収束を検討する。
yn+2-yn+1=√(x+yn+1)-√(x+yn)=(yn+1-yn)/{√(x+yn+1)+√(x+yn)}
となる。したがって、(y2-y1)の正負とyn の有界性によって、帰納法により極限の
存在が言える。
①②の2つの解の意味を考えるが、y1 に一般性を持たせると議論が複雑になる。
したがって、以下では、y1=√x とした簡単な例を見る。
4. y1=√x の議論
当然、x≧0 であり、x=0 のときは、y=0 は自明(つまり、解は➁となる)。した
がって、x>0 とすると、収束解は①のみとなる(②ではy<0だから)。また、
y2=√(x+√x)>√(x+0)=y1 だから y2-y1>0 となり、yn は単調増加となる。
つぎに、y₁=√x<1+√x である。yn<1+√x と仮定すると、
yn+1=√(x+yn)<√(x+1+√x)<1+√x (両辺を2乗すれば明らか)
となり、帰納法から、yn<1+√x となり、上に有界となる。つまり、x>0 のとき、
yn は収束し、その解は①となる。このとき、y → 1 (x → 0) だから、x=0 で yは不連
続関数となる。
以上