特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

ある関数の偏微分の関係 (∂/∂x)ⁿf=(∂/∂y)ⁿ⁻¹(hⁿ∂f/∂y)

2019-04-30 11:40:48 | 解析

1.まえがき

 あるサイトに次の問題があった。∂f/∂x=∂xf=fx , g'(u)=dg(u)/du などと書く。

 [問題]ともにC級の関数f(x,y)とg(u)に対して
        h(x,y)=g(f(x,y))
     と定める。このとき
        f(x,y)=y+xh(x,y)
     となる関係を満たすとき、次の関係を証明せよ。
      (1) (∂f/∂x)(x,y)=h(x,y)(∂f/∂y)(x,y) が成り立つ。
      (2) ∀n∈N に対して (∂ⁿf/∂xⁿ)(x,y)=(∂ⁿ⁻¹/∂yⁿ⁻¹)(hⁿ∂f/∂y)(x,y)

2.証明

 (1) まず、
       f=y+xg(f)・・・・・①
  の両辺をxで偏微分すると
       fx=g+xg'fx ⇒ fx=g/(1-xg')・・・・②
  ①の両辺をyで偏微分すると
       fy=1+xg'fy ⇒ fy=1/(1-xg')
  ゆえに、fx=gfy (もとい、∂f/∂x=h∂f/∂y)・・・・③
  を得る。

 (2) ③を使って
     ∂yⁿ(gⁿfx)
       =∂yⁿ⁻¹(ngⁿ⁻¹g'fyfx+gⁿfxy)=∂yⁿ⁻¹{ngⁿ⁻¹g'(fx/g)fx+gⁿ∂x(fy)}
       =∂yⁿ⁻¹{ngⁿ⁻²g'fx²+gⁿ∂x(fx/g)}=∂yⁿ⁻¹{ngⁿ⁻²g'fx²+gⁿ(fxxg-fxg'fx)/g²}
       =∂yⁿ⁻¹{(n-1)gⁿ⁻²g'fx²+gⁿ⁻¹fxx}=∂yⁿ⁻¹{∂x(gⁿ⁻¹fx)}
       =∂x{∂yⁿ⁻¹(gⁿ⁻¹fx)}・・・④

  ③④を使って
     ∂yⁿ⁻¹(gⁿfy)=∂yⁿ⁻¹(gⁿ⁻¹fx)=∂x{∂yⁿ⁻²(gⁿ⁻²fx)}
  以降を帰納的に{}内のnを下げていけば
     ∂yⁿ⁻¹(gⁿfy)=∂xⁿ⁻¹{fx}=∂xⁿf
  を得る。これは求める式になる。

3.あとがき

 どうしてこのような関係を見つけるのか驚きである。何か役に立つのだろうか?

以上


キルヒホッフの電圧則と運動する導体棒(電磁誘導の闇④)

2019-04-22 19:18:49 | 電磁気学

1.まえがき

 図のS系のように磁界中を導体棒が運動するとき、ローレンツ力によって、起電力が生ず
 る。
これを使って、キルヒホッフの電圧則から電流が求められているが、キルヒホッフ
 の電圧則
は定常状態の電磁界やインダクタンスの電磁誘導についてのみ確認されている
 だけである。

 このため、運動体の電磁誘導についても電圧則が成立するか検討する。



2.運動する導体を含む回路

 2.1 運動する導体中の電磁界

  議論の前に運動する導体中の電磁界について注意点がある。一般に外部から電界が加
  わっても(静止)導体中には電界が無い(表面の接線方向にも)ことはよく知られて
  いる。しかし、
磁界中を運動する導体には一般に電界がある。というのは、
  F=q(E+v×B) によっ
て、導体中では F=q(E+v×B)=0 となる。そうでないと、永遠
  に電荷が分離し続けることになる。つまり、ローレンツ力によって分離した電荷によ
  る電界
    E= - v×B   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1)
  が、導体中(および導体表面の接線方向)に発生して、ローレンツ力を打ち消したと
  ころで釣り合っている。このことはファインマンが「
くどーく」念を押している(私
  は40年間誤解していた)。

 2.2 運動する導体を含む回路の電圧則(図の左、S系)


  簡単のため、図のS系ように一様・一定な磁界の中のレール上を運動する(完全)導
  体棒
を考える。解析可能とするため終端には抵抗Rを接続し、線積分は電流の方向に
  取る。前
に述べたように運動する回路がある場合の電磁誘導の式は起電力の定義から
    e=∲[C](E+v×B)・ds=-dΦ/dt ・・・・・・・・・・・・・(2.2)
  である。ここで、パノフスキーが示しているように右辺は
    dΦ/dt=(d/dt)∫[S]B・dS =∫[S]∂B/∂t・dS - ∲[C](v×B)・ds     
        = - ∲[C](v×B)・ds           ・・・・・・・・・・・・・・・(2.3)
  となる。ここで、∂B/∂t=0 を使った。したがって、(2.2)から e=∲[C](v×B)・ds
  となるが、回路の中で移動しているのは導体棒だけであり、積分は導体棒の部分のみ
  となる。つまり
    e=∲[C](v×B)・ds =∫[a→b](v×B)・ds = - ∫[a→b]E・ds ・・・(2.4)
  となる。ここで、導体棒内の電界(2.1)を使った。また、(2.2)(2.3)から
    ∲[C](E+v×B)・ds=∲[C](v×B)・ds ⇒ ∲[C]E・ds=0
  を得る。したがって、この回路では電位が定義できる。

  この電界の線積分を抵抗部分Rと導体棒Dに分けると
    ∫[D,a→b]E・ds+∫[R,b→a]E・ds=0
  となり、この式に抵抗の電圧 VR= -∫[a→b]E・ds=∫[b→a]E・ds と(2.4)を使うと
    -e+VR=0
  を得る。つまり、キルヒホッフの電圧則が成立つ。

3.運動する抵抗体を含む回路の電圧則

 3.1 速度vで運動する慣性系との電磁界の変換式

  つぎの議論の前に、慣性系Sに対して速度 v をもつ慣性系S'との電磁界の変換式を確
  認しておく。これはローレンツ変換によらずともマクスウェルの式とガリレイ変換
  から求まる
  (|v|≪c のとき。完全な整合性は無いが)。それは
    B'≒B , E'=E+v×B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3.1)
  である。

 3.2 運動する電磁界の変換式

  つぎに、電磁界が速度 v で運動するとき、電磁界の変換式を確認しておく。これは
  上の
3.1項で運動する慣性系S'からS系の電磁界を見たときに相当するから、(3.1)で
  速度の符
号を変えたものになる。つまり
    B'≒B , E'=E-v×B ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3.2)
  となる。 つまり、磁界が運動すると電界が発生する。したがって、自由空間を電荷
  と磁
界が一緒に運動すると狭義のローレンツ力 (v×B'=v×B) と発生した誘導電界
  (-v×B)
による力が打ち消されて電荷には力が働かない。このことは、「磁界ととも
  に運動する電荷に
はローレンツ力が働かない」などと勘違いしてはいけない。

  なお、古来より電磁界は運動する(近角聰信)、しない(今井功)という議論があ
  るが、
上のように運動すると考えてよい状況がある。すなわち、同じく一様な磁界
  であっても一
方は誘導電界を伴っている

 3.3 運動する抵抗体とオームの法則

  上で、運動する導体棒内部の電磁界について述べたが、運動する抵抗体内部の電磁
  界はど
うなるだろうか。運動体に静止した慣性系S'ではオームの法則 i'=σE' が成り
  立つ。電流
i'=i(今回はρ=0なので)、電界は(3.1)から
    i'=σE' ⇒ i=σ(E+v×B) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3.3)
  となる。これが、運動抵抗体のオームの法則になる。このことは、あまり知られて
  いない
が、
以下の説明で必要となる。

 3.4 運動する導体を含む回路の電圧則(図の右、S'系)

  以上の準備によって、運動する抵抗体の電圧則を考察できる。これは図のS系の現
  象を導体棒に固定したS'系での現象に相当する。

  この場合、磁界の運動による誘導電界が全空間に発生している。導体棒と抵抗体の
  内部ではこの電界によって、電荷が分離して電界が発生し、誘導電界を打ち消して
  いる。つまり、回路全体にわたって、電界は無く、∲[C]E'・ds=0 を満たしているが、
  電界そのものが無いので、電圧が無い。

  すなわち、電圧則を考えようにも電圧が無いので、電圧則の議論ができない。この
  回路に発生する起電力は e=∲[C](E'-v×B')・ds=∫[b→a](-v×B')・ds となる。
  しかし、(3.3) のオームの法則によって、 i=i'=σ(E'-v×B')=σ(-v×B') だから
     e=∫[b→a](i/σ)・ds   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3.4)
  というオームの法則、e=IR が起電力について成り立っている(電圧は定義できな
  い)


4.あとがき

 上のS'系のように抵抗体に電磁誘導が発生するときはキルヒホッフの電圧則は成立せ
 ず
、オームの法則で電流が求められるだけである。

 同様に、抵抗体の円リングに磁界の時間変化による電磁誘導が発生するときも、電圧
 は定義
できず(∲[C]E・ds≠0 なので)、電圧則は成立しないが起電力によるオームの
 法則は成り
立つ(起電力による電荷の分離がなく、その電荷による電界が無いので電
 圧が定義できない)。



[文献]

 電磁誘導・交流・電磁波(初等物理シリーズ 7)、近角聰信、培風館、2001
 電磁気学上、パノフスキー、丸善、1967


[追記][2022/1/14]
 あるサイトでリングの抵抗が0の電磁誘導の問題があった。上の例で電流が決定でき
 ず気になっていたので考えてみた。このときは
    e=-Ldi/dt=-dΦ/dt → i=Φ/L (積分定数は0とした)
 となる(初期状態としてどのような定電流も存在できる)。さらに
    e=∲E・ds=2πrE (リングの半径をrとする)
 だから
    E=-(dΦ/dt)/2πr
 の電界が生じている。当然、抵抗ではないのでオームの法則は成り立たない。

以上

キルヒホッフの電圧則とインダクタンス(電磁誘導の闇③)

2019-04-22 18:20:28 | 電磁気学

1.まえがき

 自己インダクタンスLを含む直列回路における過渡現象の回路方程式(キルヒホッフの電圧則)
 は、抵抗をR、コンデンサの容量、電荷をC,q、流れる電流をi、電源の起電力をeとして
    Ri+q/C+Ldi/dt=e ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1.1)
 と表される。明確な説明が無いので、+Ldi/dt が何か、その符号について疑問を持つ人は多い

 これに関して、Lに生ずる起電力eLは電磁誘導の式 eL=-dΦ/dt から、Φ=Li として、
    eL=-Ldi/dt  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1.2)
 である
。この起電力と電源の起電力eをまとめて電圧則は
    Ri+q/C=e+eL=e-Ldi/dt ・・・・・・・・・・・・・・・(1.3)
 となり、これは(1.1)と同じ式であるという説明がある。

 しかし、電圧則はRのみの回路で、電磁誘導の無い回路において、
    e=∲E・ds=-dΦ/dt=0 ・・・・・・・・・・・・・・・・(1.4)
 から求められる。そして当然、電磁誘導があれば(1.4)式は成り立たず、この説明は間違って
 いる。


 したがって、電圧則は独立の法則として説明されており、マクスウェルの方程式から求められ
 ていない。この原因は、前に述べたように、起電力の定義が不明な事や電圧・電位との違いが
 説明されていないことなど、
いくつか
の問題が放置されていることによる
 以下では電磁誘導がある場合の電圧則を説明する。



.電磁誘導とキルヒホッフの電圧則

 2.1 Lの内部に積分路を取ったとき 

  起電力、電圧については前に述べた。今回の場合、回路の運動は無いから電磁誘導の式は
    ∲E・ds=-dΦ/dt=-Ldi/dt ・・・・・・・・・・・・・・(2.1)
  である。電流や電圧の向きを図のようにとる。各素子の電圧は電源、抵抗、コンデンサの
  順に

    Ve=-∫[1→2]E・ds , VR=-∫[3→2]E・ds , VC=-∫[4→3]E・ds ・・・(2.2)
  となる。(2.1)の積分路をLの内部、その向きを電流の向きにとり、(2.2)を使うと
    ∫[1→2]E・ds+∫[2→3]E・ds+∫[3→4]E・ds+∫[4→1]E・ds=-Ldi/dt ・・(2.3)
    ⇒  -Ve+VR+VC+0=-Ldi/dt
  となる。前に述べたようにLの内部に電界は無く、積分は0。まとめると
    VR+VC+Ldi/dt=Ve    ・・・・・・・・・・・・・・(2.4)
  となり、(1.1)を得る。なお、VR=Ri, VC=q/C である。前に述べたように、電源の起電力
  
は分離した電荷による電界の電圧で表される

 2.2 Lの外部に積分路を取ったとき

  Lの外部に積分路を取れば電磁誘導は無いから(2.1)は ∲E・ds=0 となるから、(2.3)は
    ∫[1→2]E・ds+∫[2→3]E・ds+∫[3→4]E・ds+∫[4→1]E・ds=0 ・・(2.5)
  となる。このとき、Lの起電力によって、正負の電荷がその両端に分離する。その電荷によ
  る電界はLの内部では起電力の電界を打消し、外部に電界を発生する。その電界を積分する
  とLの電圧が定義され、VL=-∫[1→4]E・ds となる。すると(2.5)は
    VR+VC+VL=Ve    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.6)
  となる。

  ここで、Lの起電力によって発生した電界を E' とすれば、は eL=∫[4→1]E'・ds 
である
 (Lの起電力は電流の方向の周回積分だが、発生場所がわかっている)。この電界は上で述
  べたように分離した電荷により発生した電界 E によって、Lの
内部では打消されて0にな
  る。つまり、E=-E' であるから

    eL=∫[4→1]E'・ds=∫[1→4]E・ds=-VL
  となる。(1.2)を使うと
    VL=Ldi/dt   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.7)
  を得る。これと(2.6)などを合わせ、(1.1)を得る。

3.あとがき

 ここでのポイントは「電源の内部(外部も)には電界がある」、「インダクタンスの内部に
 は電界は無く、外部に電界が在る」ことである。

 Lの両端の電界の積分は内部で ∫[4→1]E・ds=0、外部では ∫[4→1]E・ds=-Ldi/dt≠0
 である。これは電磁誘導がある場合、一般に電位が定義できないことによる。

 繰り返しになるが、起電力の記号は e,ε,Vemf などと表すのが普通である。(1.2)はLの起電
 力、(2.7)はLの電圧である。
V=-Ldi/dt などと書かれた書籍は、上のことを理解していない
 と疑ってよい。

 なお、キルヒホッフの電圧則は磁界中を運動する回路について成立つ場合が在る。この理由
 も説明無しに使われている。逆に、電圧則が成り立たない電磁誘導がある。電磁誘導の理解
 が深まるので、いずれ述べてみたい。

以上


磁石の運動による電磁誘導の要因(電磁誘導の闇➁)

2019-04-22 08:36:30 | 電磁気学

1.まえがき

 磁石の運動による電磁誘導の要因は普通「磁界が時間変化するから」と説明されている。
 しか
し、電磁誘導の法則の示すところは「鎖交磁束が時間変化するから」であって、こ
 の説明は間違っている。

 以下のように、この法則を3つの要因に
分解して説明する。

2.電磁誘導の要因

 前に述べたように電磁誘導の要因はつぎの3つがある。
  ① 磁界の純粋な時間変化(磁界の運動による変化ではない)
  ② 構成する回路(導体)の運動によるローレンツ力
  ③ 磁界(の源)の運動による誘導電界の発生(観測座標系の違いによる②と裏表の
    関係)


 パノフスキーにより、①②の要因に分解したときは、次の式で表される。
    e=-dΦ/dt=-(d/dt)∫[S]B・dS 
      =-∫[S]∂B/∂t・dS + ∲[C](v×B)・ds    ・・・・・・・・・・・・・(2.1) 
 ここで、S,Cは回路の運動を含んだ領域となる。

 パノフスキーは、①②しか考察していないが③の要因はどう分解できるだろうか。(2.1)を
 導く過程で B(r,t+dt)-B(r,t)={∂B(r,t)/∂t}dt を用いているが、磁界が運動する場合は、
 L.ソリマーの書籍を参考に、uを磁界の速度とすると
    B(r-u(t+dt),t+dt)-B(r-ut,t)={∂B(r-ut,t)/∂t+(u・∇)B(r-ut,t)}dt ・・(2.2)
 
 となる。ここでの注意は偏微分は r'=r-ut としたとき、∂B(r-ut,t)/∂t ⇒ ∂B(r',t)/∂t , 
 (u・∇)B(r-ut,t) ⇒ (u・∇')B(r',t), ∇'=(∂/x',∂/y',∂/z') であることに注意する。つまり、
 ∂B(r',t)/∂t の時間微分はr' に含まれる時間を微分しておらず、磁界の運動とは無関係とし
 た純粋な時間変化を表す。このことを認識していないと、電気学会の書籍のように誤っ
 てしまう


 [注意]本当は、変数変換 r'=r-ut、t'=t を行っている。すなわち、数学的にはr' とt'は独
     立変数なので、r' 内のtとは無関係となる。


 以上のことを念頭に以下では簡略記法を使う。このとき公式から
    ∇×(u×B)=u(∇・B)-B(∇u)+(B・∇)u-(u・∇)B=-(u・∇)B
 となる。ここで、uは定数、∇・B=0 を使った。すると(2.2)は

    B(r-u(t+dt),t+dt)-B(r,t)={∂B(r-ut,t)/∂t-∇×(u×B)}dt
 となる。これを使って、(2.1)を書き換えると
     e=-dΦ/dt=-∫[S]∂B/∂t・dS +∲[C](v×B)・ds - ∲[C](u×B)・ds   
       =-∫[S]∂B/∂t・dS +∲[C]{(v-uB}・ds   ・・・・・・・・・・・(2.3)
 を得る。この式が、要因①~③をすべて含んだ式となる

 (2.3)の速度vで表される項は回路運動のローレンツ力による起電力であり、速度uで表され
 る項は磁界の運動による誘導電界による起電力になる。この式から、回路と磁界が同時に
 同じ速度で運動すればその効果は0となることが自明である。

3.磁石の運動による電磁誘導

 ここで磁石の運動による電磁誘導の要因を考えた場合、磁界の時間変化は運動によるもの
 であり、純粋な時間変化していない。(2.3)の右辺第一項の ∂B/∂t の意味は ∂B(r,t)/∂t 座標
 を固定した時間微分であるから、磁石などの固定磁界の場合、∂B/∂t=0 となる。

 つまり、磁石の運動による電磁誘導の要因は誘導電界の発生によるものである。一般に磁

 界の時間変化によると言われている意味は -dΦ/dt による磁束の時間変化を意味してい
 る。磁石の
場合は非均一な磁界なので時間変化としても違和感はないが、一定磁界の運動
 の場合の現象が
説明できない

 この誤解は、電気学会の電磁気学には磁石の運動による電磁誘導の説明で(2.1)を使って
 「∫[S]∂Bn/∂tdS=-Bvl  (11.22)」としている。これは、磁界の運動の効果を考慮しない
 パノフスキーの式のため、無理やりこじつけて誤った(実はdΦ/dtを計算している)



4.あとがき

 上に述べたように微分と偏微分の違い(dB/dt と∂B/∂t)は言葉としてわかっていも、物
 理ではあちこちで使われ、高名な学者であっても、実際の違いが理解されていない。


文献
 電磁気学上、パノフスキー、丸善
 科学者のための電磁理論、L.ソリマー、秀潤社
 電気磁気学、山田・桂井、電気学会

以上