新 ゆ~ゆ~日記

一生独身を決めた男の自堕落で貧乏くさい日記

熊本地震の記憶 Part3

2016年11月26日 | 熊本地震
 2016年4月17日

 倉庫は2度の大地震を耐えており、倒壊する心配は無いと安心し、広めの倉庫なのでテントも張れる。だが問題なのはトイレ。男なので、風呂などは濡れたタオルで拭いていれば良いし、小は数回は流さなくても我慢できるし、夜にでもコッソリ裏の公園ですればいい。しかし、大は困る。さすがに裏の公園でも無理。
 幸いにも、「再び大きな余震がくるかも!」という緊張でこの日は大はもよおさなかった。
 
 相変わらず道路の亀裂からは臭い水が定期的に溢れ出す。
 給水所の場所を呼びかけていたオッサンがリーダーシップを取って、近所を見回りしていて、うちにも見に来た際に、臭い水が溢れているのを確認。
 「こぎゃんとはすぐ上下水道局に電話せんといかんよ」「よし、俺が今から電話してやるけん」と言って電話してくれた。
 見た目は怖いオッサンだなと思ってたけど、本当に良い人。
 その日に工事の車が来て、やっぱり下水が溢れていたみたいで、応急工事してもらえたので臭い水は出なくなった。
 
 一人暮らしなので、常備食なども無く、この日も食料を求めてスクーターを走らせる。
 すると、スーパーにたくさんの車。なんと早くも営業している。
 何はともあれ入り、その日の分だけの食べ物は買えた。

 暗くなり、テントでワンセグ放送を見ながら夕飯を食べて座っていると、その間もしつこいくらいくる余震。
 だけど、それは本当に余震なのか?もう自分が揺れているのか、果たして本当の地震なのかもわからなくなる。
 そういえば、昼間にラジオで言っていたけど、そういう時はコップやペットボトルに入った水を見ればいいらしい。
 じっと座っていると、たまにグラグラと揺れるので、ペットボトルの液体を見るとどっちかわかるので、少しは気分を紛らわすことが出来た。

 昼も夜も、相変わらず余震と、車の音と振動でまともに眠れず。


 2016年4月18日

 倉庫内に2畳ほどの物置があるのを思い出し、そこに寝ようと思うが、叔母の売れも使えも出来ないようなガラクタが詰め込まれていたので、それを震災ゴミのどさくさに紛れて全て廃棄。
 布団を敷き、電気は復旧していたので延長コードリールで電気を引き、テレビやノートPC、あとはもし家が倒壊した時のことを考えて大事な物も運び込み、ちょっと広めのネカフェ風になった。
 なんとか仮の居住空間は確保できたが、やっぱりトイレの大きい方が問題。
 「困ったなぁ」と思っていると、下水が溢れていた亀裂と別の亀裂から綺麗な水が出ているのを発見。そうか!これを汲めばいいのか!
 というわけで、叔母が漬け物を作るときに使っていた大きいポリ容器がいくつもあったので、それに風呂で使う手桶で汲んで、トイレの水確保。
 無色透明で臭くもなく、たぶん水道管が破裂して溢れていると思われるが、汲む際にどうしても濁るので、トイレの水以外に使えず。
 そうやって水を汲んでいると、またリーダーシップのオッサンが来て、「こぎゃんとも電話せなんよ!」と言って、また電話してくれた。(後日、21日に水道工事が来たが、全開にしてもしばらくは30%ほどしか出ず。)
 

 物置に寝泊まりする事になって、トイレ問題もクリアし少し生活を取り戻しかけるが、また問題発生。物置に鍵が無い。
 そこで掛金と錠前を取り付けるため、思いつく限りのホームセンターを回ってみたけど、全て店頭販売か休業中で全滅。店頭販売も一応見てみるが鍵は売ってなかった。
 熊本市内はどこも同じような状況で開いてないと判断し、盗られたら困る大事な物はロックの出来る車に入れて、思い切って山鹿方面へ遠征。
 車で行くと混むだろうからスクーターで大きめのバッグも用意し向かうと、やっぱりどこもかも渋滞。
 特に植木辺りがひどい。高速道路の下りが植木までしか通っておらず、みんなそこへ向かったり降りたりしているからだろう。
 どんなに渋滞してても、スクーターは横をすり抜ければ良いので、改めてスクーターで行って良かったと思う。
 植木ICを過ぎると、さっきまでの超大渋滞がウソのように無くなって、ほどなく山鹿へ到着。
 ホームセンターを探すと、3軒ほどあって、どこも普通に営業中。しかし、カップラーメンや紙皿などは全て完売。
 鍵は無事に買えて、一安心すると、そういえば山鹿は温泉が有名だったというのを思い出し、銭湯へ行ってみると、そこも普通に営業中。
 温泉で垢を洗い流し、外のベンチでくつろいでいると、どこの建物も一部損壊どころか、無傷。お湯もじゃんじゃん出てたし、バスも普通に走ってるし、まるではじめから熊本地震など無かったかのよう。
 でもさっきホームセンターの店員に「こっちも揺れましたか?」と訊いたら「けっこう揺れましたよ」と言っていたので、やっぱり地震はあったようだ。

 2016年4月19日以降

 熊本城の近くのマンションに住む友達に電話すると、倒壊も損壊もなく無事で、そこは屋上のタンクから水がきてるみたいで、とりあえずまだ水は出るもよう。
 後日、何日に行ったかは忘れたけど、洗濯をさせてもらえた。その際も、洗濯中に山鹿へ遠征。相変わらず渋滞なので、もちろんスクーターで。

 仮の住まいとしている物置にインターネットをひこうと思い立つが、長いLANケーブルやLANハブを買おうにも近所や少し遠くにあるホームセンターは相変わらず休業中。
 仕方なく、また山鹿へスクーターで遠征。
 何事もなく、ケーブルとハブを購入。
 山鹿へは合計4回ほど行ったが、コンビニに普通に食べ物が売ってあるし、弁当屋も普通に営業しているし、なんとも平和で別世界だった。
 無事に物置へネットが引けて、ノートPCでサイト閲覧や日記を書いたりといったことは出来るようになる。
 PS4も繋げて、16日の本震で中断していた「フォールアウト4」をやるが、画面を見た途端に、あの激しい揺れがフラッシュバックし、すぐに電源を切る。
 後日、再び「フォールアウト4」をプレイしようとするが、あのゲームは核兵器の使われた約200年後の荒廃した都市が舞台で、あちこちで建物は壊れ、道路もボコボコで、さながら熊本地震後を連想されられ、しばらくはどうしてもプレイできなかった。
 
 家は倒壊は免れたものの、完全に傾いており、窓が台所とトイレ以外開かず。家の中を歩くとミシミシと音が鳴り、怖い。


 22日、スクーターで一番被害が大きかったという益城町へ。
 テレビ等で被害状況は知っていたけど、改めて自分の目で見てみると、言葉が出ないほどの凄まじい被害に衝撃を受ける。
 辺り一面、何とも言えないような、カビの臭い、生活臭、土、木材、古い水、何かが焦げたような臭いなどが全て混ざったような独特な臭いが。
 時々、スクーターはおろか、徒歩でも通れないような道があり、どうにか通れる道はスクーターを押して通った。
 一番大きい避難所であろう益城町の体育館に行ってみると、通路にも被災者が寝ており、涙が出た。今思い出しても涙が出るほどの状況。


 ゴールデンウィーク中に、2回スクーターで南阿蘇へ。

 4月30日、大津からミルクロードを通って、赤水へ下りて、阿蘇ファームランド前を通り、河陽経由で南阿蘇入り。
 土砂崩れのあった河陽のペンション村の辺りは特に被害が大きかったが、南阿蘇の街中は倒壊した家は見あたらず意外と被害が少ないもよう。全て見て回ったわけではないので、もしかしたら倒壊した家もあったかも。
 あそ望の郷くぎのへ行ってみると、営業はしていたけど、自衛隊の基地みたいになっていて、たくさんの食料や物資を集約していた。
 展望デッキへ行ってみると、賞味期限がその日までのパンが「ご自由にどうぞ」と書かれて置いてあった。あまりにもたくさん集めすぎて余ってどうしようもないらしい。余って賞味期限切れたら捨てるだろうから、あまりにも集めすぎると元も子もないと思う。
 5月4日、本来ならゴールデンウィークの客で大賑わいのはずが、自衛隊も撤退していたこともあり、ヤバイほど閑散としていた。


 5月になり、ゴールデンウィーク辺りから暑くなってきて、窓もエアコンも無い物置での生活に限界を感じ、また大きな余震がきて倒壊しても、もう死んでもいいや、という気持ちで母屋へ戻る。
 物置に寝泊まりしている間は、狭い空間で毎日一人で泣いていたのを覚えている。
 震災前は週に1度、酒を飲むか飲まないか、飲んだとしても350mlの発泡酒を1本飲むくらいだったのが、毎日飲むようになる。飲まないとやってられないというのが本音。


 り災証明を申請後、1ヵ月以上かかってやっと発行。
 半壊、もしくは大規模半壊だなと思っていたら、なんと全壊判定。
 区役所で渡された全壊家屋用の赤い紙を見ていると、自然に涙が出た。

 
 熊本地震で、これまで何百回、いや、千回以上の地震を経験し、わかったこと。
 震度1~4までは慌てる必要無し。震度1~3で「あぁ~、またか」程度。震度4で「おっ?」と思うくらい。
 震度5。要注意。携帯電話から地震の警報アラームが鳴る。
 震度6弱。要避難。壊れる家もあるが、後日「怖かったね~」だけで済む場合も。
 震度6強。半壊、全壊する家屋多数。自然の猛威に人は何も出来なくなる。立って歩くことさえかなわず。後日、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になる場合もある。
 震度7。街が壊滅。倒壊する家屋多数。逃げるとかそういう次元ではなく、天に身をゆだね、ただ揺れが止まるのを待つだけ。


 以上。

 この後の仮設住宅などの問題など多数あったが、そこはブログを参照すれば良いので割愛。

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