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ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

飛べ!フェニックス

2021年07月19日 | 映画みたで
監督 ロバート・アルドリッチ
出演 ジェームス・スチュアート、リチャード・アッテンボロー、ハーディ・クリューガー、アーネスト・ボーグナイン、ジョージ・ケネディ、ピーター・フィンチ

 オトコ映画のロバート・アルドリッチが監督だけに、上記のごとく、なんとも濃いいおじさんばかり。女は一人も出てこない。男むんむんの映画である。灼熱の砂漠に、かようなおっさんがいっぱい。さぞ暑苦しいとお思いだろう。映画を観終わった後はさわやかで、実に気持ちがいい。
 石油掘削基地に向かう輸送機が砂嵐で砂漠の真ん中に不時着。航路を外れているため捜索機に発見されるのは絶望的。死人もけが人も出る。水の残量も少ない。八方ふさがり絶望である。それでもあきらめず砂漠を歩いて脱出しようとする軍人もいる。結局、引き返すことになるが。
 若いドイツ人がこんなことをいい出した。遭難機は双胴の飛行機だ。胴体もエンジンも二つある。こいつを改造して単発の飛行機を作って砂漠を脱出しよう。だれも本気にしない。でもこのドイツ人は航空機のエンジニアだった。それしか生きのびる手はない。男たちは力を合わせて飛行機を造る。
 男たちは欠点もある。長所もある。プライドもあるし立場もある。ぶつかり合いながらも生きるために働く。
 ドイツ人エンジニアは理論的で計算づく。机上の理屈で正論をはく。機長はベテランパイロットでたたき上げの現場人間。この二人はたびたび対立。人格者の副機長が間に入って二人をなだめる。
 軍人が二人いる。大尉と軍曹。大尉は軍曹に命令し従わせるが。こうなって大尉も軍曹もあるものか。最後には軍曹は大尉のいうことを聞かなくなる。
 極限状態である。大尉も軍曹もない。機長も乗客もない。そこにいるのはむき出しの男という生き物だけ。でも、結局、みんなを助けたのはエンジニアの飛行機製造の知識と機長の操縦の腕だ。
 この映画には悪人は出てこない。ただ生き延びようとする人たちだけが出てくる。人を殺さない、生きる映画である。モノを破壊しないモノをつくる映画である。だから観終わった後爽快なのだ。

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