『磐城誌料歳時民俗記』の世界

明治時代の中頃に書かれた『磐城誌料歳時民俗記』。そこには江戸と明治のいわきの人々の暮らしぶりがつぶさに描かれています。

旧暦8月15日 飯野八幡宮露店  

2007年10月06日 | 歴史
今回もまた、大須賀筠軒(おおすがいんけん 天保12(1841)年~大正元(1912)年)が、明治25(1892)年に書き記した『磐城誌料歳時民俗記』(歴史春秋社刊)を紐解いてみたいと思う。
『磐城誌料歳時民俗記』には、江戸時代から明治時代の初めにかけてのいわき地域の民俗や人々の暮らしが極めて丹念に書き綴られている。

さて、『磐城誌料歳時民俗記』の旧暦8月15日の項には、次のような記述がある。飯野八幡宮の祭礼の際に設けられる露店についての記述だ。

近隣ハ勿論、十餘里外ヨリモ參詣ノ老若男女夥シ。商估賣物ハ士小路ヨリ六間門前廣小路樓門前松原迄、軒ヲ並ベ、店ヲ構ヘ、立錐ノ地ナキマデニ小屋作リツヾケ、恰モ繁蕐ノ街衢ノ如ク賑ヒ大方ナラズ。賣物ノ中ニ生姜、張箱、弓矢、木製ノ太刀、長刀ハ、參詣人ノ土産ニ求ムルヲ例トス。海村魚漁ヲ業トスル者ハ、必ズ天狗ノ假面ヲ買フ。又、きやこんトイフ物ヲ賣ル。

これを現代的な表現に改めると、次のようになるかと思う。

飯野八幡宮の祭礼には近隣は勿論、4、50キロメートル以上も遠方の人達も訪れ、大変な賑わいとなる。祭りの露店は、士小路から六間門前の広小路楼門前の松原まで立錐の余地もなく連なり、その様は繁華街のようだ。それらの店で売っているのは生姜、張箱、弓矢、木製の太刀、長刀などで、祭りに訪れた人達がお土産として買い求める。また、漁業を営む人達は必ず天狗の仮面を買い求める。また、店では「きやこん」という物も売っている。
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3 コメント

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ご質問いたします (くぅくぅ)
2007-10-06 21:11:04
「きやこん」とは何ですか?

それから、漁業を営む人は天狗の仮面を…ということですが、天狗には大漁などの意味合いがあるのでしょうか??

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きやこんについて (瀬戸しゅん)
2007-10-07 06:04:59
「きやこん」というのは、子どもの玩具、おもちゃのようです。
「きやこん」を口にくわえ、「きやこん」の一部を指先ではじき、音を出して遊ぶもののようです。
口の中で音が反響し、趣きぶかい音がしたようです。

それから、もうひとつの天狗と漁業の関わりについては、私もよく分かりません。ごめんなんさい。
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きやこんについて その2 (瀬戸しゅん)
2007-10-08 10:04:43
実は「きやこん」については、『磐城誌料歳時民俗記』のなかに次のような記載もあります。
「長サ二寸許、其形剣ノ如シ。上下ノ脣ヘカケテ、右ノ指ニテ弾キ鳴ラス。童謡アリ、八幡小路、道場小路、御宮の前できやこんきやこん。
露沾俳句集に、
飯野八幡宮、御朱印四百石。祭式八月十四日、流鏑馬あり。馬場先、武者屋敷、商人多く出て、木太刀、生姜を賣り、參詣の人、必是を求て家土産とす。又、キヤコンを賣る。」
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