『磐城誌料歳時民俗記』の世界

明治時代の中頃に書かれた『磐城誌料歳時民俗記』。そこには江戸と明治のいわきの人々の暮らしぶりがつぶさに描かれています。

旧暦9月 カヤの実、ヒウビの実取り

2007年11月09日 | 歴史
大須賀筠軒(天保12(1841)年~大正元(1912)年)が、
明治25(1892)年に書き記した『磐城誌料歳時民俗記』(歴史春秋社刊)を
ひも解くこととします。
どうぞ、お付き合いください。

さて、『磐城誌料歳時民俗記』の旧暦9月の項には、
次のような記述があります。

村里宅邉ニハ多ク榧(カヤ)及ビひうびヲ植ヘテ家圍(ヤガコヒ)トス。其實ヲ拾フモ是月ナリ。榧實ハ一處ニ集堆シ、莚(ムシロ)薦(コモ)ヲ覆ヒ、ひうびハ坎ヲ穿チ、莚席ヲ上下ニ覆フ。之ヲ「ねせる」トイフ。外殻ノ腐爛スル後ヲ待、竹籠ニ内(イ)レ、溪水ニ洗ヒ、敗穀ヲ流シ去リ、晴日ニ暴乾シテ貯フ。ひうびハ岩城ノ土ニテ、他方ニ希ナリ。窄シテ油ヲ採ル。燈ヲ點シ、極メテ明カ。

これを現代的な表現に改めると、
次のようになるかと思います。

いわきの各村の家々では
屋敷の囲いにカヤやヒウビを植えていることが多い。
旧暦の9月になると、これらの木の実を拾う。
カヤの実は一か所に集め、筵やこもを被せ、
また、ヒウビは実に穴をあけ、筵で包む。
これを「ねせる」という。
しばらくすると、外側の硬い殻が腐る。
その後、それを竹籠に入れ、清流にさらし、
腐った外側の穀を流し除き、
次にそれを天日で乾かし、貯蔵する。
ヒウビはいわき地域の名産で、他ではあまり見られない。
これを絞り、油を取り、明かりに用いるが、とても明るい。

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