江戸の笑いの海へ

江戸時代の笑い話や川柳の世界、そして、その当時の人々の暮らしぶりやものの考え方などを一緒に考えてみませんか。

鳩に聞かれると、まずい

2009年12月15日 | Weblog
次郎作が畑に種を蒔いていると、与太郎がやって来て、
「何の種を蒔いているんだ?」
と尋ねる。しかし、
「…」
 次郎作の声が小さくて聞こえない。
「? 聞こえねぇよ、もっと大きな声で言えよ」
次郎作は仕事の手を休め、与太郎に近づくと耳元で、
「大豆」
と、囁く。
「囁かなくてもいいだろうに」
「いや、鳩に聞かれるとまずい」

用心深い百姓
ある百姓、畑に物種を蒔き居たりける。
隣の畑の与太郎、見て、
「なんと次郎作、結構な日和(ひより)じゃ。何を蒔きたるぞ」
次郎作、返事をすれども聞へず。
与太郎、見て、
「何といふぞ。すきと聞へぬ」
と言へば、そばへ寄り、耳の端へ囁(ささや)きて、
「大豆を蒔く」と言ふ。
「はてさて、囁かいでも大事ない事を」
と言へば、
「高ふ言へば、鳩が聞く」
    『露休置土産』(宝永4年 1707年)



かねこめくすりや

2009年12月14日 | Weblog
どこで切るかによって、
言葉の意味が全く違ってしまうことがある。
次のような江戸の笑い話がある。

 物を書くには、句の切りやふが専らじゃ。
下京に目薬者あり。垂れ幕に「かねこめくすりや」とあり。
三色まで売り物あるとて、人々買ひに来れども、
このうち一色もなし。
迷惑して、後には「かねこめぐすり屋」、
かくの如く直しける。
『きのふはけふの物語』(元和(1615年~1624年)頃)

「かねこめくすりや」というから、
金、米、薬を商う店かと思いきや、
金子という名の目薬屋だったというのだ。

他行って、何?

2009年08月25日 | Weblog
小気味のいい江戸の笑い話の数々を紹介しよう。
笑いの鋭さや鮮やかさに感服、感じ入っていただければ幸いだ。

他行
「旦那様、向ふの隠居様から呼びに参りました」
「エエ、又来たか。他行したと言ふてやれ」
「ハイ。旦那は他行いたしましたと言ふて下さい」
といへば、使の者が、
「モシ、他行とは何の事でござります」
「ハテ、炬燵(こたつ)に寝ころんで居さっしゃる事さ」。             『聞上手三編』(安永二年 一七七三)

「旦那様、御隠居様から、お迎えの者が参りましたが…」
「またか…、困ったものだ。俺は他行したとでも言って、追い返せ」
と、主から申し付けられた下人が、使いの者に向かい、
「主人は生憎、他行いたしております」
「…」
「そのように御隠居様に、お伝えいただきたく」
「それは承知いたしましたが…」
 その場を立ち去ろうとしない。
「他に、何か?」
「その…、他行というのは、どういうことでしょうか?」
「どうもこうもありません。他行をいたしているということは、
つまり、他行をいたしているということです」
「ですから、その…」
「?」
「私、不勉強で、他行という言葉の意味を存じません。
お教えいただければ幸いなのですが」
「他行…、ですか?」
当の下人も、
「そう言え」と申し付けられたから、
そのまま言っただけのことで、
言葉の意味までは承知していない。
「生憎、私も…」
「はぁ?」
ここで下人はありったけの知恵を絞った。
「確信は持てませんが…」
使いの者が身を乗り出し、聞き耳を立てる。
「他行と申すのは多分、
炬燵でゴロゴロしていることだと…」
「炬燵でゴロゴロ、なるほど。承知いたしました」

それほどに道化ねば、面白ふない

2009年04月21日 | Weblog
粗相(そそう)なる侍あり。
鷹野の供に出るとて、
脚半(きゃはん)を片足履きて出たり。
傍輩ども、どっと笑ひければ、
急ぎ宿へ、方々(かたがた)を取りにやりた。
小者(こもの)取りて来たり。
脇より、
「どこにあったぞ」
と問へば、
「縁柱に履かせてござりました」
と言ふ。
かの侍、騒がぬ顔にて、
「それほどに道化ねば、面白ふない」
と言はれた。
     『当世手打笑』(延宝9年 1681)


鷹狩りの日のしくじりを、
「人を笑わせるための道化だ」
などと言っている。
「朝が早かったものだから、寝ぼけてて、つい…」
と素直に言えばいいのに。

江戸の笑いを読む10という本です

2009年04月20日 | Weblog
江戸の笑いを読む10という本があります。

「猫の手と猫舌の足」というタイトルです。

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