LOVE定額の導入などにより11月、12月と契約者数を純増基調に戻したボーダフォン。1月18日に、3Gを中心とした春モデルの投入により、本格的な“反転攻勢”を狙う。
「2005年の後半を反転攻勢のポイントと位置付けた。今後は攻勢に出て行きたい」(コンシューマー事業統括本部長の野副正行氏)
J-フォン時代に写メールやJava端末などのヒットを生み出した太田洋氏がボーダフォンに戻って最初に発表したのは、韓Samsungの超薄型端末だった。
「ヤングビジネスマン向けにフォーカスしている。ドキュメントのビューワ機能などが入っている。なんといっても3Gでは世界最薄」──。「804SS」を手に持ち、太田氏はそう胸を張った。
NTTドコモがLG電子と、KDDIがPantec & Curitelと組む中で、ボーダフォン向けに端末を供給したのはSamsung。世界第3位の携帯メーカーが投入したのは、14.9ミリという超薄型の3G携帯電話だ。Vodafoneグループとして、全世界向けにも発売していく予定で、日本で先行発売となる。価格も1万5000円程度となる見込みだ。
「3Gでも開発スピードの速さ、品質コントロール、価格設定、そうしたファンダメンタルズを押さえるところが力を持ってくる。そうした会社の1つがSamsungだ」と、野副氏は評価する。
Samsung端末という隠し球を披露したボーダフォンだが、波乱の年2006年には正攻法の戦略で挑む。
「第一に、3Gの端末をしっかりしたものにしていこう。ラインアップの拡充と品質の強化を第一に。基地局についても大分拡充してきて、人口カバー率は99.8%まできた。3Gの契約者数も1年間で200万を超えて、全加入者の15%まできた。11月、12月、今月を見ると、(契約者の)50%以上が3Gになっている。先行する2事業者からは遅れていたが、ここにきて3Gのパワーを生かせる体制になってきている」と野副氏は、3Gへの意気込みを話した。
もう1つは、“定額ラッシュ”による攻勢の強化だ。
「3つの定額を出して、さらに11月には『LOVE定額』を出したわけだが、メッセージとしても分かりやすいということでご好評をいただいた。11月、12月は、新しく入ったユーザーの半数以上が、家族通話定額かLOVE定額のいずれかに入っている。分かりやすい定額サービスが受け入れられてきた」(野副氏)
今後も定額サービスには力を入れていく。掲げるキーワードは“コミュニティのコミュニケーション”だ。「その人ならではのコミュニティをサポートする分かりやすい定額制度を打ち出していきたい」(野副氏)
LOVE定額以降、やっと元気になってきたボーダフォンだが、サービスや端末などで、まだ他キャリアの一周遅れの感は否めない。発表会場でも、報道陣からは「あの端末はないのか」「新サービスが他社に似ているのでは」という質問が相次いだ。
4月1日にサービスが開始される「ワンセグ」対応端末については、「ワンセグは開発している」(太田氏)と言うに留まった。サービス開始のタイミングで端末が用意できるのかは未定だ。
ドコモやKDDIが残ったニッチセグメントとして、春商戦向けに力を入れている“キッズ向けケータイ”についても、「キッズ向けを用意しなくても戦っていける」(野副氏)と答えた。
FeliCa対応端末についても、今回発表した4機種のうち対応したのは「904T」の1機種だけだ。しかも「904TはモバイルSuicaには対応していない。(今後やっていく方向で準備はしている」と太田氏は話した。
新サービスである「Vodafone live! CAST」についても、KDDIがサービス中の「EZチャンネル」と比較したプラットフォーム面の優位点はパケット料金代くらいだ。太田氏は「重要なのはどんなコンテンツを用意できるのか。今準備を始めているので、楽しいマガジンが朝必ず届くようにしたい。趣味指向に合わせて、複数のマガジンをおいおい出していかなくてはならない」と話すが、現時点ではコンテンツの内容は明らかにできていない。
ともあれ、純減傾向から抜け出し、攻勢に向けてボーダフォンが再スタートを切れたことは確かだ。
野副氏は次のように話し、これまでの失敗を踏まえての今年の戦略であることを強調した。「2005年は年間で契約数がマイナスの形となった。結果を真摯に受け止めていかなくてはならない。グループ全体としても、1昨年(2004年)の施策で間違った部分もあるのではないか。お客様第一ということでやってきたが、少しずつだが改革が進んできたと思っている」
今度こそ“攻勢”──春モデルで再スタートするボーダフォン
6機種程度では、auやDoCoMoの新ラインナップと比較して、サムスン端末という隠し球だけでは明らかに物足りない。それに、アントニオ猪木を連想させるサムスン端末の操作性が国内ユーザーに受け入れられるのかも未知数だ。
ハード面で見劣りするのだから、せめてサービス面で、無料通話分2ヶ月繰越や思い切った料金プランの値下げぐらいをしないと、auやDoCoMoの後姿はなかなか見えてこないだろう。
最近の純増は水増しによる見せ掛けの純増なのか、本当の純増なのか・・・その判定をする意味でも、今年前半の純増数はとても重要な意味をもっている。