芝・雑草 → バイオエタノール 岐阜大教授が技術開発
11月、プラント完成
穀物不足の懸念解消? 注目浴びる
ゴルフ場の芝や河川敷の雑草から、高品質のバイオエタノールを作る技術を岐阜大学応用生物科学部の高見沢一裕教授(59)が開発した。原油価格の高騰と世界的な穀物不足の中、食料と競合しない植物を使うことから、ゴルフ場や自治体からも注目されている。岐阜市の環境ベンチャー企業などが11月、三重県亀山市に実証プラントを完成し、本格的な生産を目指す。
バイオエタノールは、トウモロコシやサトウキビなどから作られる燃料。二酸化炭素(CO2)などの排出量抑制にも役立ち、化石燃料に替わるエネルギーとして注目されている。一方で、トウモロコシや小麦の価格が上昇し、世界的な食料不足につながりかねないという懸念も出ている。
高見沢教授によると、18ホールのゴルフ場1か所で、年間約100トンの芝が刈り取られ、その焼却費用は約1000万円かかる。このため、芝からバイオエタノールを生産することに着目し、技術開発に取り組んできた。
乾燥した芝を50度の湯に入れ、独自に開発した酵素を加えて分解、糖化、発酵させたところ、アルコール濃度3%のバイオエタノール液の生成に成功した。これを蒸留し濃縮することで、100%の燃料用バイオエタノールをつくることができた。
トウモロコシ1トンから約300キロのバイオエタノールを生産できるが、芝でも1トンから200~250キロの生産が可能ということも分かった。高見沢教授は「芝だけでなく、河川周辺の雑草や竹なども利用できる」と説明する。
岐阜大と提携している岐阜市正木の環境ベンチャー企業「コンティグ・アイ」が事業化。亀山市のプラントは来春、実用化され、1日約5トンの芝などの処理が可能という。来年1月には、千葉、滋賀、福井県内でもプラントを着工する。
雑草や芝の処理は、刈り取りや焼却費のほか、1立方メートルあたり約1万5000円の輸送コストがかかる。プラントの設備投資は約8000万~1億円かかるが、コンティグ・アイの鈴木繁三社長(48)は「輸送コストをかけない地産地消型のプラントにすれば、十分に事業として成り立つ」と話している。