団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

New Strain X

2011-07-17 20:40:20 | 日記

農水省が着目「藻で作る油」は脱原発の救世主か 昼は太陽光、夜はLEDで培養可能! 日本の農家が〝石油王〟になる?

7月1日に電力使用制限令が発令された。第一次オイルショック以来、実に37年ぶりである。これにより、大口電力需要家には昨夏比15%の節電を義務づけ、故意に違反すれば100万円以下の罰金が科される(病院などは除く)。

「経済産業省と電力会社が主導して算出した電力の最大出力量を基にしていますから、緊急性があるかは不明です。とにかく彼らの『節電しないと計画停電になる』の大号令により、事実上の〝節電令〟が始まりました。東京で3日間停電すると、1兆8000億円の損失が出るとの試算もあります」(全国紙政治部記者)

 今回の節電令は、原発事故により発電量が低下し、夏の電力需要のピークに対応できないという理由で発令された。〝脱原発〟を模索する声が首相の口からも上がるが、それでも原発は停められないという意見を支えるのは、他の発電施設で使われるのが石油という限りある地下資源だからである。37年前も現在も、石油がいつ枯渇するかという予測は、電気に依存する生活者を一喜一憂させる。

 だが、石油に替わるエネルギーが見つかれば状況は一変する。筑波大学系のベンチャー企業「筑波バイオテック研究所」の代表取締役・前川孝昭氏(68)は、比較的容易に培養可能な「藻」から油が採れることを発見したのだ---。

「私たちは、この新しく見つけた藻にNew Strain X(以下、NSX)と名付けました。そしてこれを震災復興の一助にしようと考えています。現在、首都圏で年間約40万㎘の航空機燃料が必要とされています。この燃料をNSXから生産するとなると約300haの培養場が必要です。これを復興地に作れば雇用を創出できます。そして、NSXの油は火力発電所の燃料としても利用できるのです」

 農学博士(食品・生物資源プロセス工学)で、筑波大学名誉教授、国際農業工学会名誉会長などの肩書を持つ前川氏を代表に、千葉大学、群馬大学、北九州市立大学などの研究者からなるチームが組まれ、 '09 年12月にスタートした研究は「NSX」という一つの答えに辿り着いた。これこそ脱原発を可能にする次世代バイオエネルギーだと前川氏は主張する。発見までの経緯を前川氏が説明する。

「国内で採取した約6000種の藻類を1年以上かけてスクリーニングし、油脂の含有率が70~80%と非常に高い藻類を他の種と選り分けて培養しました。NSXはクロロフィル(葉緑素)を持ち、CO2と光で光合成をします。体長は30ミクロンほどで、器に入れても肉眼では緑色の水にしか見えません。好都合だったのは細胞の柔らかさで、油が溜まると細胞膜が破れて滲み出てきます」

 NSXは淡水に棲むので、日本国内の川や湖沼にいるというが、前川氏は「採取場所を発表すると業界関係者が殺到して迷惑がかかるので」と、NSXの存在が〝企業秘密〟であることをやんわり示唆した。

 藻類の細胞は堅く、油を抽出するには、乾燥して破砕する工程が必要だ。前川氏らが採用しているのは、流体(水)の中でNSXを破砕して油だけを集め、加工場で濾過した後、メチルアルコールと反応させてBDF(Bio Diesel Fuel)化、つまり軽油の代替燃料にする加工方法だという。前川氏は、こう続けた。

「BDFに、さらに水素を加え高温で触媒で反応させると酸素が水になって抜け、炭化水素、つまり石油と同じものになります。これが航空機燃料になります。火力発電所で利用するのであれば、BDFを精製する必要はなく、NSXの油脂分をある程度濃縮すれば、直接、発電所の燃料として使えるでしょう。精製する必要がない分、さらに低価格です」

 20~30℃程度の水温と光など一定の条件を満たせば、毎日出荷が可能なほど非常に活発に増殖するというNSX。前川氏の試算では、1ha当たり年間630klのBDFが生産可能だという。

「培養池は昼間は太陽光、夜間はこのために開発したLEDで光を供給し、24時間培養します。水はポンプで循環させ、油の分離も簡単なので、1ha当たりの作業人数は4人ほどで十分です。300haで1200人ほど働けます。分離した油を各農家からタンクローリーで回収し、加工するサイクルが実現すれば、各農家が〝油田〟を持つことになるわけです」

 6月20日、社団法人農林水産先端技術産業振興センターと農林水産省が主催の「アグリ技術シーズセミナー」が開催され、東日本大震災の被災地復興に役立つ先端技術として前川氏の研究成果が発表された。農水省関係者がこう明かす。

「この日、発表した研究者は、農林水産先端技術産業振興センターの岩元睦夫理事長が直接声を掛けたと聞きます。岩元理事長は農水省の技術畑でトップを務めた人物で、今でも本省に影響力がある」

 前川氏の計画は、原子力政策の方向転換を、比較的容易に可能にする内容に見える。国の本音を問うと、農水省環境バイオマス政策課は、こう答えた。

「バイオマスは植物由来の資源であり、将来的なエネルギー源として活用を推進することを決めています。藻類は将来的に非常に期待されている分野です。ただし、実用化には長い時間が必要でしょう。調査費などの支援として、今年度は約18億円弱の予算が組まれています」

 実現までの道程について前川氏は強気で、'13年にはパイロットプラントを建設し、安定供給の実験に乗り出すという。脱原発の可能性を秘めた次世代エネルギーの研究。くれぐれも〝大臣交代〟などという理由で妨げてほしくないのだが。
「フライデー」2011年7月22日号より


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