団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

市場原理を利用して「がれき処理」を進める方法を考える

2012-04-09 20:07:53 | 日記

がれき処理を市場原理でやるには

経済学者・齊藤 誠さんに聞く~「復興の経済学」編 池上 彰

池上:土地の問題で、1つ今深刻なのは、被災地のがれき処理問題ですね。特に海岸沿いでは、十数年分のがれきやゴミが発生し、その処理が進んでいない。

齊藤:放射能問題が暗い影を投げかけていますね。原発事故現場から遠く離れた海岸のがれきも、若干放射能反応があるというだけで、各地で受け入れが進まなくなっている。広域処理が進んでいません。

池上:がれき処理が進まないと、物理的な意味での復興は前途多難ですね。

齊藤:広域処理はもちろん必要ですが、かなりの部分はやはり域内で処理しなければならないでしょう。他地域にがれきを運ぶ物流コストを考えても、域内処理の方法をメインに据える方が現実的だと思います。

 そこで先ほどの用途転換の話が出てくるわけです。がれきを処理するということは、域内で処理場、最終処分場や焼却場など処理施設、埋め立て地などをニーズがなくなった土地に積極的に誘致するわけです。すると経済的価値がなくなった土地に新しい価値が生まれる。初めて土地が有効利用されますから、地主さんも自分の土地を従来より高く売ることができる。最終処分地や焼却工場をつくるという価値を生み出す場所になる。そのため高い値段で土地を買い取ってあげる。そうすればそのお金を原資に、地主さんも生活や仕事の再生を見込むことができるようになる。

池上:がれき処理も市場原理で考えた方がいい、ということですね。

齊藤:今、有効な代替利用もなく、土地を自治体が買い上げるとすると、どういう値段がつくかというと被災後の路線価格が精いっぱいなんです。そうすると場合によってはかつての評価額の2、3割とかせいぜい5割くらいにしかならない。というのはそこまで土地の生み出す価値が下がっているからです。

 けれどもその土地の代替利用法が決まっていれば、新しい価値を生み出す場所に変身する。被災前の値段にもう少し上乗せして買い上げてもらうことも可能になる。例えば沿岸部の農地が津波に遭って、もはや農業用としては使えなくなってしまった。そのままだとこの土地の価値は下がってしまっている。

 けれども、防災公園用や新しい幹線道路用の土地として行政が買い取る、というかたちになれば、有効な活用方法が既に提示されているわけですから、高い値段で買い取ってもらえる。このように、被災してそれまでの価値が減じてしまった土地に新しい価値をつけてあげれば、土地に有効利用も進むし、がれき処理なども域内で相当できるはずです。

池上:つまり、被災した土地に新しい付加価値を付けるということですね。ここでも市場原理を応用する。行政にしても、被災した土地が本質的にどんな付加価値をつけられるかという視点が必要になってきますね。

齊藤:がれき処理に関しては、広域処理も念頭に置きつつ、基本は地元でがれき処理をすることで付加価値を生み出すような仕組みが必要になります。東京でいくら受け入れる、といっても面積的に限界がありますしね。

池上:横浜市の山下公園は、関東大震災のがれきでつくった埋め立て地ですね。その山下公園は、防災用の価値も、観光的な価値も持つ空間に育ちました。同じようなことを東北沿岸でできないでしょうか?

 現代版山下公園をがれき処理と兼ねながらどんどん作っていくような。

齊藤:東北のがれき問題で忘れてはならないのは、燃えるゴミがさらされていることによる衛生問題です。石巻市もいくつかがれき置き場がありますが、その1つが地元の高校の隣なんですね。昨年5月に私が訪れた時もとても臭かったのですが、夏になったら真っ黒になるほどハエが発生してしまいました。そうなると、隣の高校生も含めた地域の健康被害が心配になります。さらに心配なのは、アスベストです。

池上:アスベストが使われている古い建物がずいぶんと被災した可能性があるわけですね。

齊藤:アスベストによる健康被害は、場所によっては放射線による健康被害よりも深刻になるおそれもあります。

池上:ゴミ処理に関しては、例えば日本ならではの現場力は燃えるゴミ、燃えないゴミなどがすべてきれいに分別されている点ですね。ここまでは既に済んでいる。外国の方が見るとびっくりすると思います。この前取材で訪れてたまげたのは、釜石市から大槌町に移動する途中、がれきの山を燃えるゴミと燃えないゴミに分ける巨大な分別機械が動いていて、たまげましたよ。うわーっ、日本ってこんなことやるんだと。見事に広大なところにゴミを燃えるゴミと、燃えないゴミに分けている。

 衛生問題に直結するのは基本的に燃えるゴミの処理の方ですね。燃えるゴミを燃料にする小型の火力発電所を配置する、ということができないでしょうか?

齊藤:被災地では、焼却場とセットにした小型火力発電所も検討されています。

池上:動き始めようとしているんですね。

齊藤:原発事故による放射能問題にばかり目がいきがちですが、被災地においてがれき処理ゴミ処理はより直接的な健康問題に直結します。燃えるゴミに関しては衛生問題が直接生じますし、アスベストなどに関しては深刻な健康被害を引き起こしかねません。燃えるゴミに関しては、代替エネルギー施設とセットで焼却場を用意し、燃えないゴミに関しては域内での埋め立てを含めた処理用地の設定を行う。その用地確保は、そのまま地権者たちを経済的に潤すことにもなります。

池上:市場原理をうまく利用しながら、地域の再生、地元産業の再生、ゴミの処理、そして土地の活用を促していく。時間はかかるでしょうが、従来型の補助金頼りの復旧ではない、真の復興が東北の、そして日本の未来には必須だということですね。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿