団塊太郎の徒然草

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「橋下氏と共闘し電力会社の『体質』に切り込む」

2012-04-10 08:42:14 | 日記

 東日本大震災の発生を機に喫緊の課題になった電力制度改革。その一歩となる東京電力の経営形態の見直し論議は難航し、悪しき経営体質に厳しい眼差しが向けられる。東電の企業向け電気料金の一方的な値上げに対する批判の急先鋒となった東京都の猪瀬直樹副知事は「橋下徹・大阪市長と連携しながら、電力会社の体質に切り込むのが都の役割」と強調する。

猪瀬直樹・東京都副知事に聞く (聞き手は安藤 毅)

 日経ビジネス4月9日号特集「電力維新 東電からエネルギーを奪う方法」もお読みください。

東京電力による企業向け電気料金の一律17パーセント引き上げを強く批判した。

猪瀬:料金値上げは東電の総合特別事業計画の前提にもなっている。一応、「きちんとリストラをするので値上げさせてください」という建前になっているが、実態は全く違う。東電の膨張したファミリー企業などにメスを入れることなく、値上げすることなどありえない。

 今、政府と東電だけで株主総会をやっているような状況にある。東京都は2.7%の株を持つ株主でもあるわけで、「ちょっと待て」と言わざるを得なかった。

「メタボ体質のままで値上げするのは虫が良すぎる」

東電の合理化努力が足りないと。

猪瀬 直樹(いのせ・なおき)
1946年長野県生まれ。87年「ミカドの肖像」で第18回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。96年「日本国の研究」で文藝春秋読者賞受賞。2002年、道路関係4公団民営化推進委員会委員に任命され、道路公団民営化に尽力。07年6月から東京都副知事
(写真:丸毛透、以下同)

猪瀬:東電の経営が危機に瀕していることも、電気料金を値上げしなければ債務超過に陥ることも、みんな知っている。

 それでも腑に落ちないのは、メタボリック症候群的な企業体質や意識の改革がなされないまま、公的資金の注入を受け、しかも、値上げもする。これは、虫が良すぎる。誰しもがそう思っているはずだ。

 やるべきことははっきりしている。ファミリー企業との取引コストの削減だ。

 東電の有価証券報告書を見ると、「当社グループ」は「当社と子会社168社及び関連会社97社で構成され…」とある。しかも、子会社の社名と本社所在地が載っているのは40社だけ。調べるほど、膨大なファミリー企業との不透明な取引実態が浮かび上がってきた。

 これまで、東電の子会社や関係会社との取引の85%が随意契約だった。膨大なファミリー企業を抱え、天下りと高コスト体質の温床になっている構図は、道路公団民営化論議の時とすっかり一緒だ。

そこで、随意契約による取引額の3割削減を提案し、枝野幸男・経済産業相も受け入れる考えを示した。

猪瀬:「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の報告によると、東電のファミリー企業との随意契約は年間1720億円ある。

 政府の原子力損害賠償支援機構と話したら、現実的な数字を積み上げた結果、そのうちの1割削減を目標にするという。政府と東電の話し合いだけだと、どうしても控えめな数字をはじいてしまう。

 道路公団改革の経験があるのでよくわかるが、あの時は維持管理コストについて「3年で3割削減」という目標を掲げ、実現させた。あの道路公団だって努力して達成したんです。

 これほどの子会社・関連会社を抱える東電が1割削減で許されるはずがない。3割カットという水準を示し、そこからスタートしなければいけない。

 そういうロジックを賠償機構に認めさせたので、経産省の電力システム改革専門委員会の場で「3年以内に子会社や関係会社との年間取引額の3割削減」を提案し、枝野経産相もそれを東電と機構に指示する考えを示したというわけです。

「東電と戦い、実質的に値上げをさせない形に」

ファミリー企業に切り込む効果は大きいと。

猪瀬:ファミリー企業を整理・統合すればビルを売却したり、家賃を下げたりするなどのコスト削減効果も見込める。

 さらに、こうした3割カットなどの要求をしていくことで東電に経営努力を求め、東電が中小企業に節電への協力を促す新しい割引料金メニューを発表するなどの取り組みを引き出すことにつながった。何もしなければ、一律に企業向け料金の値上げをしただけで終わったはずだ。

 そして、コストを料金に算入できる「総括原価方式」を見直し、さらにコスト削減が進めば、遡って支払った電気料金の還付ができるはずだ。随意契約により高値で取引しているコストが原価に跳ね返り、それで電気料金が決まるわけだから。

 このように具体的に詰め、東電と戦っていくことで、実質的に値上げをさせない形にしていくことが重要だ。

 先に述べたように、都は東電の株主だが、さらに83万キロワットの契約を結んでいる大口ユーザーであり、首都圏の中小企業を守る行政主体としての立場がある。この3つの立場があるからこそ、具体的にチェックし、問題点を指摘しているのだ。

東電改革を足がかりに、より抜本的な電力制度改革の必要性を唱えている。

猪瀬:原発事故を起こした東電が悪い、という形だけで問題を設定すると、たぶん、改革の展望はない。電力制度改革のためには、今まさにこの時期に、9電力の地域独占体制を見直していかなければいけない。

 「地域独占体制は安定供給のため」と電力会社は説明してきたが、送配電網に自由に接続できるように参入障壁を低くすれば、新しい発電の形が生まれるはずだ。新規の発電事業者や工場の自家発電で余っている電力などが送配電網に乗ってくるようになるわけだから。

 そのためには、地域間連系線や周波数変換装置の増強のほか、特定規模電気事業者(PPS)が負担する託送料や、発電所の故障などで送電網を不安定にさせた対価として電力会社に支払う「インバランス料金」の見直しなどが欠かせないだろう。

 例えば、東電管内でPPSの託送料は電気料金の2割程度。しかも、託送料の2割は電源開発促進税の負担に相当する。火力が主体のPPSがなぜ原発立地を促進するための負担をしなければいけないのか。

 インバランス料金もおかしい。これは30分単位で供給と需要を一致させていなければ罰金が取られる仕組みだが、あるPPS事業者は火力発電が不具合で5時間送電がストップしたとして、8000万円の罰金を東電に取られた。これにより、この事業者の年間利益は吹っ飛んでしまった。

 こんな構造を変え、送配電を一つのネットワークで結び、参入障壁を低くする。電力不足の解消には9電力体制にメスを入れることが必要だ。

「僕は東電、橋下市長は関電の株主総会に出席する」

そのため、橋下徹・大阪市長と共闘する考えを示しているが。

猪瀬:東電の経営体質を変えるようモノを言えるのは、東京都しかない。一方、関西電力については橋下市長にやってもらう。

 特に、関電は事故を起こしたわけではないだけに、「原発廃止」ぐらいのことを打ち上げないと、関電をテーブルに着かせることはできない。そうした戦術を昨年12月に橋下市長と会談した際に決めている。

 僕は6月の東電の株主総会に出席し、橋下市長は関電の総会に出る。僕はガバナンスの問題や電力の供給責任に関してなど、きちんと主張するつもりだ。

 実は、道路公団改革の際に相当批判も浴び、既得権益の塊のような相手とやりあうのは、ほとほと懲りている。でも、今のような状況で僕が声を上げないと、ほかに誰がやるのか、仕方ないかなと。そういう意味で、橋下市長が出てきてくれたことにほっとしている。彼に、改革のリレーをしたかなと思っている。

東京に100万キロワット級の天然ガス発電所を建設するプロジェクトの検討が進んでいる。

猪瀬:「脱原発」の流れもあり、長期的には再生可能エネルギーの利用を促進すべきだが、太陽光発電などでこの東京圏の電力をまかなえるようになるには10年や20年はかかるだろう。

 昨年夏のような節電を企業や家庭に求め続ければ、東京の国際競争力低下や産業の空洞化を招いてしまう。本来エネルギー問題は国が取り組むべき課題だが、民主党政権は相変わらず迷走している。国がやらないなら、東京都がやるしかない。

 大事なのは、原発の代替エネルギーを確保し、「企業は安心して東京にいてください」というメッセージを打ち出していくことだ。地産地消・分散型の発電所の建設計画を早急に進めると同時に、老朽火力発電所の更新などを後押しするための官民連携のファンド構想も詰めていくつもりだ。


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