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エイヤフィヤットラヨークトルの火山灰の噴煙が、アイルランド南部のエイヤフィヨールの空を覆う(2010年5月初旬に撮影)。 (Photograph by Ingolfur Juliusson Reuters) |
火山から噴出した直後の噴煙の中では雷が発生することが知られており、また過去には、火山から最大50キロ離れた場所で帯電した噴煙が確認されたこともある。
しかし今回の研究によると、エイヤフィヤットラヨークトル火山から噴出した火山灰は、噴火口から1200キロ離れた場所でも帯電していたという。これほど遠い距離で帯電が確認されたのは初めてのことだ。
研究の共著者でイギリスにあるレディング大学の気象学者ジャイルズ・ハリソン氏は、この距離での帯電は噴火自体のエネルギーによるものではないと話す。火山灰に含まれる粒子の平均的なサイズと形状から考えて、「最初に生じた帯電はいずれもかなり劣化したのではないか」という。
事実、噴煙の中心部分の灰はエイヤフィヤットラヨークトル火山の噴火から32時間後も帯電していた。これは、灰が自ら帯電し直していることを示すものだと研究チームは推測する。
この発見は、火山灰の噴煙は多くの場合帯電している可能性があることを示すもので、航空業界にとっては重要な意味を持つ。
エイヤフィヤットラヨークトル火山の噴火が始まったのは2010年3月後半で、現地時間4月14日に巨大な火山灰の噴煙を噴き上げ始めた。噴煙はヨーロッパ大陸にまで到達し、旅客機のエンジンを火山灰が詰まらせて事故が起きる恐れがあるとして、ヨーロッパを理発着する旅客機が何日間も足止めされた。
噴煙がスコットランドに達すると、ハリソン氏の研究チームはスコットランド西部の港湾都市ストランラーへ駆け付けた。同地では約4000メートルの上空を厚さ600メートルに及ぶ火山灰の層が覆っていた。
研究チームは計器を装備した特製の気象観測気球を飛ばし、大気中の火山灰の粒子を測定して、そのサイズと性質を調査した。
地球の大気中には、天気の良い状態でもごく小さな電場がある。この電場が空気中を漂う粒子や雲の外縁部を帯電させる可能性があるとハリソン氏は説明する。
しかし、今回発見された帯電した火山灰は、厚い噴煙の外縁部ではなく中心部分で見つかった。そのため、大気電気や通常の気象条件が原因である可能性は排除されそうだ。「電荷は粒子の場所と量によって異なるため、粒子自体に関連する原因があると思われるが、それ以上のことは何とも言えない」。
気象観測気球を使った過去の研究から、砂漠の砂嵐が砂の粒子の衝突によって帯電することが確認されているが、その原因はまだ完全には解明されていない。同じ現象が火山灰でも起きている可能性があると研究チームは推測する。
理論的には、荷電粒子によって無線通信が妨害される恐れがあるため、帯電した火山灰は航空機にとって危険かもしれないと研究チームは指摘する。帯電した火山灰が旅客機の客室に侵入すれば、乗客や機内のシステムに静電気による障害が起きるかもしれない。
しかし、航空機は比較的大きな電荷を持つ落雷にも耐える構造になっているため、帯電した火山灰の危険性はごくわずかだろうとハリソン氏は予測する。しかも、電荷によって火山灰の噴煙の動きを予測しやすくなるため、帯電した火山灰の発見は旅客機の利用者にとってむしろ朗報だという。電荷は既存の計器でも非常に簡単に観測できるため、噴煙が拡散して目に見えなくなっても、帯電した噴煙の動きを追跡しやすいはずだ。
また、粒子同士の結合のプロセスは粒子の重さと運動に影響を与えるが、このプロセスを電荷がどう左右するのか、どのような電荷の時に雨で粒子が空から洗い流されやすくなるのかは、すでに科学的に解明されている。従って、噴煙の電荷を測定すれば、火山灰がどこへ行くか、どの程度の期間空中にとどまるかを予測しやすくなるかもしれない。
この研究は、オンラインジャーナル「Environmental Research Letters」誌で2010年5月27日に公開された。
Brian Handwerk for National Geographic News
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