「蜩の記」 葉室麟 祥伝社 H23.11.10
第146回直木賞作品。
ようやく回って来た。
幽閉先での家譜編纂と十年後の切腹を命じられた戸田秋谷。
親友とのいざこざで隠居を命じられ、戸田の見張りと清書を命じられた檀野庄三郎。
戸田は何を思うのか。
家譜編纂の史料に垣間見える謎と今の藩はどう結び付くのか。。。
村人たちとの関わりあいもさもありなんと描かれている。
戸田の息子・郁太郎の友だち、百姓の源吉がよい。
『おれは世の中には覚えていなくちゃなんねえことは、そんなに多くはねえような気が擂るんよ』
『そらまあ、おとうやおかあ、お春(妹)のことは当たり前じゃけんど、他には郁太郎のことかなあ』
『友達のことは覚えちょかんといけん。忘れんから、友達ちゃ』
ラスト、いよいよ切腹を控えた秋谷が「もはや、この世に未練はござりませぬ」
と言ったとき、
僧・慶仙が「さて、それはいかぬな。まだ、覚悟が足らぬようじゃ」と。
そして
「未練がないと申すは、この世に残るものの心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。
この世をいとおしい、去りとうない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」
と。
成る程・・・
「羽州ものがたり」 菅野雪虫 角川書店 2011.1.30
カドカワ 銀のさじシリーズ。
アテルイの時代から70年以上経った、みちのく秋田。
ひとつしか瞳をもたない鷹のアキとクラス少女・ムメは、
都から来たばかりの少年・春名丸(元服してからは春雪)とであった。
それが縁で春名丸の父・小野春風にさまざまなことを教わるムメ。
野育ちの少年・カラスとの友情も育まれるが
小野たちは半年で、都に戻っていく。
飢饉の年、自ら生き延びることさえ難しいのに、税は過酷なままで。
農民たちが立ち上がった。
元慶(がんきょう)の乱 だそうだ。
手を焼いた朝廷は、新しい役人を派遣する。
小野春風と、春雪の姿もあった。
「相手を嫌って何も知ろうとしなかった、強くはなれない。
自分と違う相手を認めた者だけが強くなれるんだ」
「空白の桶狭間」 加藤廣 新潮社 2009.3.25
この著者の75歳のデヴュー作「信長の棺」には唸った。
素晴らしい発想と思ったモノだ。
次の「秀吉の枷」で秀吉の出自を独自に仮定した。
この本は、その流れ(と、思う)
「山の民」の秀吉が桶狭間を演出したと。
お話としては面白いが・・・
山の民といえば五木寛之の「風の王国」を思い出した。
久しぶりに読んでみようか。
「きなりの雲」 石田千 講談社 2012.1.26
第146回、芥川賞候補作という。
ひらがなが目立った。
それが、独特の雰囲気を醸し出している。
ふられて傷ついて、でも少しずつ日常を取りもどして生きていく。
さみ子の周りの世界が描かれている。
私も好きな編み物の繋がりがあったからか、何となく親近感だ(笑)
今回の芥川賞と直木賞の読後感が良くなかったせいか、
こっちの主人公の方が、生き方としてよっぽど納得。
『ひとの手は、貸すより、借りるほうが、ずっと勇気がいる。』
そうだよなぁ・・・
第146回直木賞作品。
ようやく回って来た。
幽閉先での家譜編纂と十年後の切腹を命じられた戸田秋谷。
親友とのいざこざで隠居を命じられ、戸田の見張りと清書を命じられた檀野庄三郎。
戸田は何を思うのか。
家譜編纂の史料に垣間見える謎と今の藩はどう結び付くのか。。。
村人たちとの関わりあいもさもありなんと描かれている。
戸田の息子・郁太郎の友だち、百姓の源吉がよい。
『おれは世の中には覚えていなくちゃなんねえことは、そんなに多くはねえような気が擂るんよ』
『そらまあ、おとうやおかあ、お春(妹)のことは当たり前じゃけんど、他には郁太郎のことかなあ』
『友達のことは覚えちょかんといけん。忘れんから、友達ちゃ』
ラスト、いよいよ切腹を控えた秋谷が「もはや、この世に未練はござりませぬ」
と言ったとき、
僧・慶仙が「さて、それはいかぬな。まだ、覚悟が足らぬようじゃ」と。
そして
「未練がないと申すは、この世に残るものの心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。
この世をいとおしい、去りとうない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」
と。
成る程・・・
「羽州ものがたり」 菅野雪虫 角川書店 2011.1.30
カドカワ 銀のさじシリーズ。
アテルイの時代から70年以上経った、みちのく秋田。
ひとつしか瞳をもたない鷹のアキとクラス少女・ムメは、
都から来たばかりの少年・春名丸(元服してからは春雪)とであった。
それが縁で春名丸の父・小野春風にさまざまなことを教わるムメ。
野育ちの少年・カラスとの友情も育まれるが
小野たちは半年で、都に戻っていく。
飢饉の年、自ら生き延びることさえ難しいのに、税は過酷なままで。
農民たちが立ち上がった。
元慶(がんきょう)の乱 だそうだ。
手を焼いた朝廷は、新しい役人を派遣する。
小野春風と、春雪の姿もあった。
「相手を嫌って何も知ろうとしなかった、強くはなれない。
自分と違う相手を認めた者だけが強くなれるんだ」
「空白の桶狭間」 加藤廣 新潮社 2009.3.25
この著者の75歳のデヴュー作「信長の棺」には唸った。
素晴らしい発想と思ったモノだ。
次の「秀吉の枷」で秀吉の出自を独自に仮定した。
この本は、その流れ(と、思う)
「山の民」の秀吉が桶狭間を演出したと。
お話としては面白いが・・・
山の民といえば五木寛之の「風の王国」を思い出した。
久しぶりに読んでみようか。
「きなりの雲」 石田千 講談社 2012.1.26
第146回、芥川賞候補作という。
ひらがなが目立った。
それが、独特の雰囲気を醸し出している。
ふられて傷ついて、でも少しずつ日常を取りもどして生きていく。
さみ子の周りの世界が描かれている。
私も好きな編み物の繋がりがあったからか、何となく親近感だ(笑)
今回の芥川賞と直木賞の読後感が良くなかったせいか、
こっちの主人公の方が、生き方としてよっぽど納得。
『ひとの手は、貸すより、借りるほうが、ずっと勇気がいる。』
そうだよなぁ・・・