原題は THE COMPASS OF PREASURE : How Our Brains Make Fatty Foods,Orgasum,Exercise,Marijuana,Cererosity,and Gambling Feel So Good
日本語の副題は――なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか
2012.1.20 河出書房新社
実は2ヶ月くらい前、図書館が購入した本を最初に借りた。
が、内容がかなり専門的で読まずに返したのだった。
雨の昨日、じっくり読んだら面白くて惹きこまれた♪
腹側被蓋野(VTA)のニューロンが活動してドーパミンを放出する軸策を側座核や他の領域に伸ばす。
たとえば扁桃体と前帯状皮質(情動の中枢)、背側線条体(ある種の週間の学習形式に関係する)、
海馬(事実や出来事の記憶に関係する)、前頭前皮質(判断や計画を司る)といった領域だ。
ある経験がVTAのドーパミン・ニューロンを活動させ、その結果上記即座核などの投射標的に
ドーパミンが放出されるとき、その経験は快いものと感じられる。そして、このような快い体験に先立つ(あるいは伴う)感覚や行動が手がかりとして記憶され、ポジティブな感情に関連付けられる。
以下、抜粋など、
肥満は食べ過ぎと意思の力が弱いせいだと言われているが、研究データが示すところでは
体重の軽重は、80%遺伝的に決まっている。
D2ドーパミン受容体に関係するTaqIA A1遺伝子をもつ人は、肥満傾向があるだけでなく、
薬物依存やアルコール依存、また病的なギャンブル依存にもなりやすいことがわかっている。
高カロリー食が珍しく、場所によっては塩が貴重品だったなど、祖先の食事の結果、私たちは生まれつき特定の味や匂いを好むよう身体が出来上がっている。糖と脂肪が顕著だが、塩もそうだ。脂肪と糖は同時に摂ると極端に依存性が高くなり、それぞれ片方だけを摂る場合よりはるかに大きな影響が快感回路に生じる。
マスタベーションは、ウマ、サル、イルカ、イヌ、ヤギ、ゾウなど多くの哺乳類で頻繁に観察される。メスもオスもこの快楽に身を委ねている。イヌ、ヤギ、サル、モルモットなど多くの種で、オスは自らフェラチオをし、ときにはそれで射精に至ることもある。雌のオランウータンは木の皮や棒で作った粗雑な張り形を使うことすらある。オスのバンドウイルカは、くねくねと動き回る生きたウナギをペニスにまとわりつかせる。オス同士のアナルセックスはヒツジ、キリン、バイソンなどで記録がある。アマゾンカワイルカはオス同士で互いの噴気孔にペニスを挿入する。多くの種では、メスの発情期にのみ異性間の性的接触が行われ、それ以外の時期には同性愛行動が一般的となる。
男性被験者たちにセックス画像を見せて脳スキャンした実験が面白かった。
ゲイの男性が男性同士の画像で脳が活性化したのはわかるが、ストレートの男性は女性同士の画像で活性化したというのだ。
ストレートの男性の中には、男性がセックスしている画像に嫌悪感を感じる人がいるからだとか。
脳の動きと身体の反応、本人の申告を付き合わせる実験も面白い。
どうも、恋愛と性的興奮は異なるようだ(^^;
お金儲けも人間の快感回路のドーパミン作動性ニューロンを活性化する。
薬物依存症でも食べ物依存そうでも快感回路のドーパミン機能が鈍くなっていることから、依存症というのは、依存症で無い人ならば簡単に到達する快感レベルを得ようとする結果、発症すると考え垂れる。
愛の反対が憎しみではなく無関心であるのと同じように、快の反対は痛みではなく倦怠、つまり感覚と経験への興味の欠如である。
ランナーズハイや出産時のように、快感と痛みは同時に感受されうる。
「心の痛み」を感じているときは、身体的な痛みの経路のうち視床の内側部が活性化し、外側部が活性化していないようだ。
以下、訳者のあとがきより。
それぞれの快感に繋がる〈依存症〉という減少と、それを支える脳内のニューロンレベルの変化から見えてくるのは、悪徳であろうと美徳であろうと、人を反復的行動に駆り立てるのは、神経学的に同じ快感だと言うことである。
もう一つ、依存症とは、人間が持つある能力の裏返しだということ。その能力とは、何でも望みの対象を(生存や繁殖の必要性とは無関係に)快感刺激にしてしまえる柔軟性である。この柔軟な能力も依存症も、共に、脳のニューロンのある種の物理的・構造的変化を基盤にしている。その変化は、学習や長期記憶のメカニズムとも同種のもの。
このような結論から著者は、悪徳と快感に対する社会の見方が見直されることを期待する。
著者は、主観的な快感とともに活性化が観察される脳内の組織を〈快感回路〉pleasure circuit と呼ぶが、この表現はあまり一般的でなく、脳科学の分野ではふつうこの神経回路は〈報酬系〉reward system と呼ばれている。