「出会いなおし」 森絵都 文藝春秋 2017.3.25
出会い、別れ、再会、また別れーー。
人は会うたびに知らない顔を見せ、
立体的になる。
「ママ」よりーー
私の脳裏には数多の謎が渦巻いていたものの、もはやそれをあなたにぶつける気力もなかった。なにやら必死で弁解しているあなたの声が声に聞こえない。あなたがあなたに見えない。こうして人は人を失うものなのか。
「青空」よりーー
朝、目覚めてすぐに思うことは、それほど間違っていない。ふとそう思った。
翻って、夜、眠りにつく直前までうだうだと考えているようなことは、ろくなもんじゃない。
子どもの頃の小さな引っ掛かりがずーっと尾を引くこともある。
自分だけが拘っていると思いつつ、相手も気にしていてくれたと知ったときの安堵感や今更感……。
意思が伴う出会いや再会もあれば、偶然もある。
絵都さんならではの、珠玉の六篇。