「あきらめません!」 垣谷美雨 講談社 2022.5.23
結婚して三十数年、共働きかつワンオペ育児を卒業し、節約を重ねて住宅ローンも返済完了。
定年退職を迎えた霧島郁子がやっと手に入れたセカンドライフは、夫の田舎へ移住したことをきっかけに音を立てて崩れていく。
閉鎖的な地域社会、染み付いた男尊女卑ーー時代遅れな現実を前にうちのめされる郁子だったが、ある日出会った銀髪の女性議員・市川ミサオの強烈な後押しで、なぜか市議会議員に立候補することに……!?
この土地で生まれ育った落合由香も巻き込み、ミサオ(80代)、郁子(60代)、由香(30代)、は世代をこえて「私たち」を取り巻く問題に立ち向かう。
P56
大学時代の同級生や会社の同僚もみんな燃え尽き症候群になって、そのうち男尊女卑の「ダ」の字もフェミニストの「フェ」の字も口にしなくなった。世の中を変えようなどという高邁な思想を持っている女は、敵を作るだけの愚か者だという結論に達するしかなかったのだ。長い人生の損得勘定を考えれば、男に媚びて「女らしく」生きるか、それとも「名誉男性」となるか道は残されていない。どちらもできない不器用な私や友人たちは出世を諦めて、給料分の仕事を淡々とこなすことで、精神を正常に保って生きることを選んだ。
P57
そもそも日本の議員は報酬が高すぎるのだ。ヨーロッパの多くの国々で、いやアメリカでさえ、市町村に当たる自治体の議員は無報酬に近いから、ボランティア精神がなければとてもやっていけないと聞く(略)
議員職と本来の職や学業を両立できるようにするため、議会などの拘束時間も短いと聞いた。
P131
「男女平等」という言葉に男性の年配国会議たちが大反対したことで、(男女)共同参画という言葉がうまた。
P182
(スイスは)1985年までは既婚女性は夫の許可なしで働いてはいけないという法律があった。
スイスで女性参政権が認められたのは1971年になってから
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そうか、そうなんだ。
映画「スタンドアップ」を思い出した。
あの基になった世界初セクハラ裁判は1988年という。
つまり、その頃のアメリカもまだ、男女平等とは言えなかったということだ。
まあ、今なお、平等とは程遠いと思うが……
こうあってくれれば、と共感するストーリー。