「大獄 西郷青嵐賦」 葉室麟 文藝春秋 2017.11.15
もしかして、葉室さんの最後の作品か。
維新前夜の若き西郷吉之助(隆盛)が、
実に清々しく潔い人物像として描かれている。
「ひとはこの世に何かをなろうと生まれてくる。どんな小さなことでもおのれがなさねばならんことが必ずしもあるとじゃ。それをなすのは、この世を照らす燈明になることじゃ。
この世の中はほっとけば、どんどん暗くなる。たとえ命を失おうとも時々なる者がおらんといけんのじゃなかろうか」
彼は島津斉彬の命を受け、東奔西走するが、
斉彬は志し半ばで死去し、西郷は生きる望みを失う。
安政の大獄のあおりで奄美大島に流され、
そこで愛加那という女性と結婚して
二児をもうけたと。
斉彬亡き後の薩摩、
進取のやり方がなりを潜める中、
久光に気にいられた大久保一蔵(利通)が
少しずつ頭角を顕してゆく。
西郷が奄美を出るところで、この物語は終わる。
葉室さんが描く、その後の西郷を読みたかった……。
似たような時期、林真理子さんが
今年の大河ドラマの原作「西郷どん」を
書いていたという。
林真理子さん曰く、
葉室さんも同じ資料を用いていたようだとーー。
葉室さんが描く西郷さんのその後を読みたかったと
林さんも仰っていた。
「オランダ宿の娘」 葉室麟 早川書房 2010.3.20
〈長崎屋〉の姉妹、志をもって長崎で学ぶ人々、
異形の武士(間宮林蔵)、シーボルトーー
それぞれが信念を胸に抱きながら、
時代を切り拓いて ゆく。