ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「真夜中の電話」

2015-04-25 09:14:21 | 
「真夜中の電話」 ロバート・ウェストール 徳間書店 2014.8.31

原田勝 訳

「遠い日の呼び声」とセットの、短編集。
やはり、9編。

恋人とともに突然、凄まじい吹雪に巻き込まれた-- 「吹雪の夜」
信仰に熱心な恋人のことで悩む少年への、父の対応がいい。

「さて、どうしようか」父さんは言った。
いかにも父さんらしい。「どうにかならないのか?」じゃなくて、「さて、どうしようか」だ。
いつもいっしょに考えてくれる。「そこをなんとかすれば、うまくいくんじゃないか……」といった
調子だ。(略)それから父さんは、ただすわったまま。所在なさげにスピットファイアをいじっていた。
出ていってくれ、と言えば、出ていくことはわかっていた。だから、ぼくは言わなかった。父さんが
そばにいてくれると9が休まる。放っておけば、父さんは尻が痛くなるまですわっているだろう。
でも、さぐりを入れたり、あれこれ詮索したりはしない。

 この作品と「女たちの時間」には、
 男が戦場や吹雪の中へ出ていき、また、祝祭より仕事を選ぶのは臆病さの裏返し、器の小ささの表れ
 という、ウェストールの男性観がうかがえる。
 そして、女性というのは打つ手がなくなったときにどっしりとかまえ、また、楽しむときは楽しむ、
 そういう胆力をそなえた性であるという女性観も。

「ビルが「見た」もの」も、よかった。
目の見えない主人公が音を頼りに推理していく描写かスリリング。
プライド・劣等感、不安・安堵など、ビルの心の動きの描写も絶妙。

他の作品も負けず劣らず、素晴らしい。

「かかし」など、かつて読み耽った作品たちを、今一度読み返したくなってきた。
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