「未来」 湊かなえ 双葉社 2018.5.23
湊かなえさんの作品を久しぶりに読んだ。
というか、パッと浮かぶのは「山女日記」くらいで、
確か「告白」は読んだはずだが、内容の記憶すらない(^^;
10歳のある日、突然一通の手紙が届いた。
送り主は未来の自分だという……。
章子は、出す当てのない返事を書き続ける。
パパが死ぬこと以上に悲しい出来事なんて想像出来ない。
だけど、世の中にはわたしと同じくらいの年で、同じような経験をしている子はたくさんいると思うし、もっと小さいころに親を亡くした子もいるはず。
悲しいのは自分だけじゃない。
これ以上悲しい事は起こらない。
そう自分に言い聞かせて、がんばっていこうと思うが……。
P286
世の中には正論があふれているのに、イジメにしろ、貧困問題にしろ、何十年も前から続く問題が解決されないのは、本音を語らない人が多いからではないか。
問題を解決しようという気はなく、自分の方に流れて来る波を堰止めるために、都合のいい言葉で堤防を作る。
もしくは、その他大勢の方に流れようとする。
金があるかと訊かれれば、生活に困るほどではないのに、貧乏だと答えておく。
幸せかと訊かれれば、さほど大きな悩みを抱えてないのに、不幸だと答えておく。
息苦しい世の中だと嘆いてみせる。
生きづらいと不平をもらす。
そうすることにより、本当に問題を抱えている人たちが埋もれてしまうことなど気付こうともしないで。
歪んだ大人たち……
翻弄され、犠牲になる子どもたち……
決して明るい内容ではない。
だけど、ジトーッとした暗さは殆ど感じないし、諦感もない。
ラストの開き直った感が良い。
他の作品も読んでみようかな。