「死にゆく者の祈り」 中山七里 新潮社 2019.9.20
囚人に仏道を説く教誨師の顕真。
ある日、拘置所で一人の死刑囚が目に留まる。
それは、大学時代に顕真を雪山の遭難事故から救った、無二の親友・関根だった。
人格者として知られていた友は、なぜ見ず知らずのカップルを殺めたのか。
裁判記録に浮かび上がる不可解な証言をもとに、担当刑事と共に遺族に聞き込みをはじめた顕真。
一方、友として、教誨師として、自分にできることは何か。
答えの見出だせぬまま、再び関根と対峙することとなる。
事件の真相はーー。
死刑執行直前、顕真が下した決断はーー。
関根に特別な関心を向け多方面に働きかける顕真に、師の僧侶が言う。
「あなたに心掛けてほしいのは、逃げるのを覚えることです」
「いざとなったら逃げることも選択肢の一つなのだと肝に命じてください」
いつも思うことだが……作家の多方面に渡る知識に、ただただ脱帽。
監獄教誨について。
信教の自由は何人にも保障されているものだが、刑務所や拘置所といった矯正施設は国の施設であるために、憲法上の制約によって披収容者の宗教的要望に応えることができない。そこで民間の宗教家の協力を要請することになる。
その始祖は1872年7月、真宗大谷派の啓潭僧侶。
その後、各教各宗派が教誨師を派遣するようになったが、次第に財政上等の理由で消極的になり、結果として財政基盤が堅固であった本願寺派と大谷派が監獄教誨を独占する様相を呈していく。
この傾向は現在も続き、全国の教誨師1864名のうち、浄土系の総数が664名と三分の一以上を占めている。
とのこと。