かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の短歌鑑賞 230,231

2022-10-16 11:03:02 | 短歌の鑑賞
   ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                     鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


230 だるければ寝覚めのとこに抜き手など水府流の型のおさらいをする
「かりん」2003年6月作

 六月というと再入院して四月の倍の濃度の抗癌剤点滴治療をしていた頃で、全身がだるかったようだ。そこで目覚めたベッドで手足を動かしてみたのを、このように形容しているのだろう。おさらいは見栄やテレでもあって、実際はベッドの上でもがいている図かもしれない。ちなみに、作者は新宿高校時代水泳部に所属し、教員時代も長く水泳部の顧問を勤めた。もともとは水泳をお父さんに教わったそうで、それが「水府流」だったのかもしれない。長く結核を病んだお父さんが快復した一夏、江ノ島近くに家を借りて一ヶ月家族で滞在し、毎日泳いでいたそうだ。中学時代頃と思われるが、家族のいちばん輝かしい思い出だとよく話していた。
 このような歌の鑑賞を鎌倉なぎさの会で行うというのも、不思議な縁を感じる。


231 抗癌剤の副作用だんだんうすれゆくままにふつふついかり湧き来も
かりん 「かりん」2003年6月作

 抗癌剤の副作用で怒る気力さえなくしていたが、少し頭や身体がしっかりしてきたら、忘れていたいかりが湧きだしてきたというのだ。このいかりは日頃の言動を思うとやはり、社会や政治、世界情勢に関するものだろう。その点、一首独立の観点からは弱い作品ということになろうか。

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