かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 47 アフリカ⑤

2023-09-03 11:26:27 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
  【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P168
  参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
           

47 職人のスークに一生きもの縫ふ青年の指の静かな時間

      (レポート)
 スークはご存知のように、イスラム世界独特の職人達の集まりの市場であるが、バザールとは違う。業種ごとにまとまって軒を連ねている。作者はその中できものを縫う青年に足を止められた。青年は一針一針真剣に作品に取り組んでいた。そのきものは地元の民族衣装なのか、輸出用のものなのか分からないが、ミシンを掛けているのではなく、青年は針を持って、真剣にどこかをまつったりしている。作者はその青年の指に目を止められた。ああ、彼はこうして一生針を持って過ごすのかな、と作者は「静かな時間」という言葉の中に、青年の未来とモロッコの国の未来を見つめておられる。一生、静かな時間という言葉に、既に決められた人生を歩む青年の悲しさが表されている。作者の青年に対する愛情、優しさが込められている。(T・H)


        (当日意見)
★人生が決められていてそこから逃げられない悲しさ。愛情をもって見守っている作者
 の気持ち。(崎尾)


      (まとめ)
 ここに詠われた青年はきものを縫って一生を生きるおのれの運命を受け入れているのであろう。懸命にものを縫う青年の指に注目して、静かに時間を流すことで作者はここに生きるほかない人々に思いを寄り添わせている。(鹿取)

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