かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 187

2022-11-22 10:56:26 | 短歌の鑑賞
 ※新しいパソコンになりました♪
  今回は、前のパソコンから引き継ぎができて、2014年から+1,450回目です♪

  渡辺松男研究2の25(2019年7月実施)
     Ⅲ〈行乞〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P120~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


187 たとえば武甲山の削られつづくるは単純明快にして痛々し

    (レポート)
 武甲山は秩父市の南部にある岩山で、古くから信仰の山とされてきた。北斜面には石灰岩の岩層が露出しており、大正期から石灰岩やセメントの原料として採掘されてきた。そのせいで標高が低くなったほどだ。一方、この北斜面の標高八百メートル付近にはチチブイワザクラ、ミヤマスカシユリなどの貴重な好石灰岩植物も生育する。このような山が削られつづけていることは「単純明快にして痛々し」と端的に詠む。詠い起こしを「たとえば」ともってきたことにより、一首は武甲山に限ったことではなく、もっと広く、人間の商業的な営みが大自然を損ねてゆくことを憂う大きな歌となっている。(真帆)


       (当日意見)
★何度も行ったことのある山ですが、周囲の山からすると確かに違和感があります。
 「つづくる」というのが効いていると思います。下の句が端的でいいです。(岡東)
★痛々しが実感ですね。この歌、ものすごい破調で散文的なんですが、土屋文明的
 ですね。即物的で、こういう歌はガーと押して詠われるんだなあと。対象ごとに
 歌い方を変えられてすごいですね。単純明快なんって四文字熟語ふつうは歌えな
 いけどうまく収まっているし、漢字も多いけど。(A・K)
★光るのこぎり(184番歌 もんもんとあがる煙のうらがわへ さみしいよ 光
 るのこぎりをおく)の続きにこういう歌もあるというのが面白いですね。そして、
 このぶっきらぼうな感じの歌い方でほんとうに痛みを感じているってことが伝わっ
 てきますね。(鹿取)

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